大人も本質は赤ちゃんのままなのだ

昔好きだった海外ドラマ「ゴシップガール」をまた見直している。

いわゆるティーン向けごちゃごちゃ恋愛ドラマの一面は確かにあるのだけど、長いシーズンを通したそれぞれの人間的成長という視点で見れば深みのある感慨深いドラマなのである。

超セレブな幼馴染、チャックとブレアは悪巧みの才能がピカイチで、はじめ反発しあうものの2人揃えば最強のコンビだった。

そのうちにお互いの愛情に気付き、いつしか最強のカップルになる。

ところがある事件をきっかけに信頼関係が破綻。変わらない愛と失われた信頼の狭間でくっついたり離れたり不健全な腐れ縁状態を繰り返しているうちにブレアは本物の王子様と出会い婚約する。

チャックは誰の手もつけられないほど荒れに荒れ、ブレアはブレアで心の底ではチャックを求め続けるのだけど、ここぞという瞬間にチャックの方からブレアの手を離す。

自分より王子様を選んだ方がブレアが幸せになれると思ったから。
愛してるからこそ解放した。

それからのチャックは人が変わる。

後にブレアがチャックに「なぜ善人に変わったのか」問うたとき、私はそりゃ愛の力だと思った。

自分の心を守るより、ブレアの幸せを守りたい気持ちが勝った瞬間に全ての想いが昇華した。
本物の愛が心に平穏をもたらしたんじゃないかと。

ところがチャックの返答は少し違って
「もう怖くなくなったから」だった。

「昔はキミを失うことが怖くて荒れていた。
キミを失ったら生きていけないと思っていたから。
だけど生き延びた。
だから前に進まないと。
一緒になれなくてもキミの幸せを願ってる。」

恐怖は人を変える。
大切な人を闇から救いたいなら、
自分は何があっても離れない、自分を失うことはない、と安心させることだ。

誰だっていつも愛されていたくて、
誰だっていつも愛されないことが怖い。

親の気を引きたくて問題行動を起こすこどもの心理というのは人間の本質で、
大人になってもそれは姿形を変えて表れる。

例えば恋人やパートナーへの束縛も。
例えば友人へのマウンティングも。
例えば会社での評価にこだわることも。
例えばSNSでイイネを求めて発信することも。

それらは全部、
ねえねえ、私の話を聞いて、私のことを知って!
ねえねえ、私のことを褒めて、私のことを好きでいて、私のことを必要として!
という心の叫びに他ならないのかもしれなく、
そう思うと人間というのは可愛い。

前に営業成績の良い先輩が、ニーズを聞き出すなんて簡単だよと言っていた。

「人はみんないくつになっても結局赤ちゃんだから。本当は自分のことを話したくて仕方ないんだよ。」

モテるのは面白い話し上手じゃなくて実は穏やかな聞き上手だったりするし、
デキる営業マンは売り込み上手じゃなくて実は引き出し上手だったりする。

「大人も本質は赤ちゃんのままなのだ」
という言葉は未だに忘れられない。

泣き叫ぶことが許されなくなった大人を被った赤ちゃんたちは、あの手この手で人の気を引き愛されようとする。
それが例え逆効果だとしても必死で自分をアピールする私たち人間って、とても愛おしいじゃないか。

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