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Vol.012 まずは手前からズバッと!〜光の向きの話 順光編〜

まずは「向き」から理解しましょう


今回から、光の向きと高さについてお話したいと思います。
光の向きというのはつまり
「どちらから光が当たっているのか?向きが違うと、見え方はどう違うのか?」
ということです。写真は光がなければ写りません。
でも、ただ単に「明るいだけ」ではなんともつまらない写真になってしまいます。
どんな写真が撮りたいか?そのときには、光はどちらから来るのがいいのか?
これを考えて、効果的に取り入れることができれば、写真の奥行きがぐっと深まります。

「向き」は小さな頃から刷りこまれていたりします

思い出してください。あなたは今、学校の教室の席に黒板を向いて座っています。さて、窓はどちらについていましたか?

おそらくほぼすべての教室(窓があればですが)の窓は、向かって「左」
についていたはずですそして、その窓は南に向いていたと思います。
これには理由があります。
昔のまだ電気事情が良くなかった明治の学校では、光をたくさん取り入れるために、学校の窓は南向きに作られていました。どうして左から光が入ってくるのか?それは、日本人は右利きがほとんどだからです。右から光が入ると、手本が影になってしまうからなのです。左から光が入れば、手元は影にならずにすみます。
想像するに。窓際の席と廊下側の席では明るさは随分と違ってたはずです。それでは不公平だということで、時が経つと天井に蛍光灯などの照明がついて教室のどこにいても同じ明るさになりました。ただ、左から日光が差し込むという名残は、今でも続いています。
この話はじつは、今でも広告写真のライティング(光の当て方)では重要な意味を持っています。メインライト(その写真の中で一番重要なライト)は、左から当てることが多いのです。それは、日本人の頭の中で

「左から光が来ることへの安心感」

があるからなのですね。一度いろんな写真を意識して見てください。
左が明るいというシーンが多いと思いますよ!

海外の教室はどうなんだろう?知っている人は教えて下さい!

「向き」はざっくりいうと4つ

撮りたいものに、光がどこから当たるか?ですが、ざっくりいうと

  1. 前(順光)

  2. 横(サイド光  斜光)

  3. 後ろ(逆光)

  4. 上(トップ光)

の4つに別れます。これは当然ながらはっきり分かれるのではなくその中間もありますが、ざっくりとした括りで覚えていきましょう。

この図に加えてトップから光が当たる、4つの向きが重要です。 引用元はこちら

今回は、一番ベーシックなライトである順光をお話します!

順光→前から当たる光


順光とは、「被写体に向かって正面から光がさしている状態」のことです。
前から光が当たるということなので、光はたくさん当たります。
色ははっきりと写りますし、明るさも十分確保できるので何が写っているかがわかりやすいです。また、影は被写体の後ろにでる(影が出にくい)ので
影が邪魔なシチュエーションの撮影のときは、手前から光が来るようにしましょう。
商品撮影、その中でも製品の切り抜き撮影などでは
色や明るさ、その形の全体がはっきりと表現できていなくてはいけません。
なので、切り抜き撮影のメインライトは必然的に「順光」になります。
また証明写真は、その人が一体どういう人物なのか?が一番重要なポイントとなります。なので、証明写真のライティングも正面から、陰影があまり出ないようにして撮影します。

「それが何であるかがはっきり写っていなくてはいけない」

そんなときは、迷わず光は前から当てましょう。

手前から光が当たることは、「それが何であるか?」が一番はっきりします


製品写真は色やシルエットなどがはっきり写っているのが第一歩。その上で、質感や立体感を損なわないように。まずは、光が順光で当たる位置を探りましょう。


快晴の空はとても青い印象ですよね。新緑の緑も目に映えるグリーンです。それを目で見たまま表現したければ、光(太陽)は順光の位置、つまり前から光が当たる位置を選びましょう。建築の撮影のときも、外観のメインカットは太陽は順光の位置になる時間を選んで撮影をします。

空の青さも建物の色もはっきりと出るのが順光です

順光にも欠点はあるの?

欠点をあげるなら、影が出来にくいので見た目にフラットな印象になりやすいことです。カメラにくっついているストロボを使ったことありますか?
あれを使うと、明るくはなるけどなんとなく陰影のない印象になってしまいがちですよね?
もちろん、これも光の当て方などを工夫すると、順光でも立体感のある表現は可能です。 ですがなんとなくの理解として
順光→色は鮮やか、形はしっかり。 立体感は少し損なわれる
と覚えておきましょう。

欠点と言いつつも実はそれを逆手にとって、ストリート感を出す撮り方もあります。
「ELLE」や「VOGUE」で一時期大流行となった撮影方法です。
(今でも、この手法はよくあります。)
カメラ内臓のストロボや、クリップオンストロボを人物に直接真ん前から当てて撮る手法です。
昔から、この手法は キャンディッドフォト(candid photo)と呼ばれて
ストリートスナップの現場ではよく用いられていました。

ウィージー(weegee)
ナン・ゴールディン(Nan Goldin)
ラリー・クラーク(Larry Clark)

なんかが有名ですね。
スキャンダラスなんだけどPOPな表現が可能です。
あと、思い出すのは「HIROMIX」です。
僕にとって、学生時代にHIROMIXが出てきたときの衝撃はすごかったです。周りの女子はみんな真似してました。

ビューティーの世界では当たり前な順光

手前から当てるとのっぺりしがちと言いましたが、ファッション写真の世界では、手前から光をてるライティングは割とスタンダードです。
それは、もちろん商品の色形を伝えるという意味もあるのですが
西洋人は、目鼻立ちははっきりとしていて彫りも深いので
手前から光を当てても、立体感はでちゃうという事情があるからです。笑
特に、化粧品のモデル撮影ではメイクの色や肌の発色がきれいに表現されていないとNGです。なので、光はモデルさんの顔に手前からズバッと、しかも立体感のあるように当てることになります。

beauty lighting
hollywood lighting(ハリウッドの女優さんを綺麗に写すためのライティング)

など、順光で美しく撮る事ができることが商業カメラマンの必須スキルだと思います。

クラシカルだけど今でもこのライティングはよく使われます    引用元はこちら

まとめ


なんとなく、光は後ろからのほうがいいんじゃないか!
と、思いがちです。
実際、そのほうがドラマチックな絵になりやすいという事実はあります。
ですが、まずは手前からバチッと光を当ててみる。もしくは、太陽が手前から当たるように向きや時間帯を調整する。
このことを意識することが、「光を読む・光を捉える」ことの第一歩かなと
思います。

次回は、横からの光(サイド光・斜光)についてお話します。




















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