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Vol.015 上からの光は自然の恵み〜光の向きの話 トップ光編〜

光の向きの話も、今回でラストです。
今回の光は「トップ光」、つまり上から下に降り注ぐ光です。
個人的には、このトップ光こそ、ライティングの土台となる光だと思います。

トップ光は一番自然なライト


トップ光と難しそうに書いていますが、実は私たちの日常ではごく普通に接する光です。
例えば、日中昼間の外。太陽は頭上の高い位置にあり光は上から満遍なく降り注ぎます。
もしくは、職場や学校の教室など室内の天井に設置されている蛍光灯やLEDライト。
これらも、部屋の端から端まで均一な光が上から下に降りてきます。

昼間の外は広大なトップ光です。太陽の位置が少し下になってくると、プラスして順光や逆光などの性質もプラスされます。
教室などは、どこに座るかで明るさの不公平があってはいけません。トップからの光が重要なシチュエーションです。
  • 均一で全体を明るく照らす。

  • 影の出方は少なく目立たない。

これがトップ光の性質であり、役割です。

天窓とスラントライティング

戸建住宅や店舗建築などで天窓を生かした採光方式のものがありますよね。上からの光を取り入れることで、部屋の中をより明るくすることが可能です。トップ光を効率よく生かすやり方ですね。
写真の世界でも、昔は天窓を生かした写真館がよくありました。昔は人工灯はとても高価でたくさん使用できませんでした。なので、北向きの天井に天窓をつけて、日中に均一に降り注ぐトップ光を補助光として利用していました。(北向きなので、直射日光にはならず、均一で安定した明るさが採光できるのです。)
これを「スラントライティング」といいます。
明治村に、このスラントライティングを取り入れた写真館が現存しています。実際見てみると面白いですよ。

https://www.meijimura.com/sight/%E9%AB%98%E7%94%B0%E5%B0%8F%E7%86%8A%E5%86%99%E7%9C%9F%E9%A4%A8/

スタジオライティングでは常用されるトップ光

スタジオでも、このトップ光は頻繁に用いられます。
今回も羊さんに登場してもらいましょう。
やり方はいろいろありますが、一般的には上からストロボの光を照らし、被写体との間に拡散用のディフューザーを設置して柔らかくします。

こんな感じです。これはかなり手抜きのセッティングですけどね(笑)
上から見るとこんな感じ。蛍光灯などと同じような雰囲気ですね。

このライティングで実際に撮影して見ましょう。

トップ光のみのライティング

上から下に均一な光が当たっていますね。影の出方も被写体の真下に出ます。ハイライトは上に出ます。そして、羊さんの正面側は光が当たっていないので、少し暗くなります。
(このスタジオは、床が白いので反射して正面の暗さは軽減されています。)

スタジオライティングでは、この正面の暗さを手前から、ライトを入れたり
レフ板などで反射させるなどの工夫をして、明るくします。

手前から補助光として当てたカット。こんな感じで組み合わせてライティングしていきます。

モデル撮影では髪の毛の艶を出す

人物撮影の時にも、トップ光はよく使用します。その一つの効果として
髪の毛のツヤ感を出すことができます。
東洋人は髪の毛が黒いので、上からの光がないと髪の毛が少し暗く沈んで島しがちです。上からの光を入れてあげることで、頭上にツヤっとした光が入るので、綺麗な雰囲気になります。
ですが、頭の薄い人には注意が必要です。その時には逆にトップ光を使わないテクニックを使ったりします。

こうやって少しツヤっとした方が自然で綺麗ですよね。

トップ光はベースとなる光だと思う

スタジオで撮影をするとき、カメラマンの個性により、いろいろなやり方のライティングがあります。どれが正解かはその撮影意図などによって変わります。いいものが撮れるなら、それが正解です。
しかしながら、このトップからの光は、僕の考えでは全てのライティングの土台となる光だと思います。
上からの光は一番自然な光です。その光をベースに、色々と味付けをしていくというのが、僕の中のライティングセオリーとなっています。

トップからの光といっても、真上から、やや前から、やや後ろからとバリエーションがあり、少し動かすだけで見え方がだいぶ違ってきます。
トップ光の弱点として、メリハリが出しにくい。奥行き感が出しにくい。
などと書かれていたりもしますが、特段そうは思いません。トップ光だけでも十分その表現は可能だと思います。

ちょっと後ろ目から。逆光のような雰囲気になりました。
やや手前から。ずいぶん印象が変わります。トップ+順光の役割を果たしています。

必殺!天井バウンス

トップ光の派生系として「天井バウンス」というテクニックがあります。
これは、天井に光を当ててその跳ね返った光を用いる方法です。
これは、ダイレクトに当てたり、ディフューザーを入れて拡散させるよりも、さらに柔らかな表現が可能です。

1Fスタジオの天井に向けて光らせます。天井の跳ね返りが拡散されて降り注ぐので、とても柔らかい表現が可能です。

LENSのスタジオの天井は高く、色もグレーなので天井バウンスにはあまり適していないのですが、できないというわけではありません。
もう少し低くて、天井の色が白いところだとかなり効果的になります。

クリップオンで天井バウンス

この天井バウンスですが、実はクリップオンストロボ(カメラのホットシューにつけて使用する小型ストロボ)と相性がいいです。
室内で撮影の時、「手前が暗いな〜」とか 「もうちょっと全体に明るくしたいなー」という時、絞りやISOなどで調節するやり方もありますが、例えばクリップオンストロボで天井バウンスをして撮影してみると、カメラ側の設定を変えることなく、光が補えるのでとても便利です。やり方は簡単。上に向けて使用するだけです。


こうやって前に向けて使うのが普通ですが・・・
上に向けて天井バウンスさせて、トップ光を作ってあげることで自然で明るい光が手に入ります。

被写体にダイレクトで当てると、どうしても「光を当てたのがバレバレな写真」になりがちです。それは意図的ならいいのですが、やはりさりげなく当てる方が美しいです。その場合に、天井バウンスは簡単で自然な光を作ることができます。

天井バウンスで注意するポイント


ただし、天井がとてつもなく高いと跳ね返ってくる光も少なくなりますので、効果は弱くなります。また、天井の色が無彩色でない場合は、その色の光のまま跳ね返ってきますので、当然写すものもその色に転んでしまいます。(赤い天井に天井バウンスしたら、赤い光が降り注ぎます!)

こんな部屋で撮るときはご注意を!天井バウンスすると、写すものも真っピンクになります!

まとめ

上からの光のみだけで表現する美しさも当然あります。
有名なのはクイーンのアルバムジャケット。なんとも言えない美しさです。

光の向きは、それぞれの持つ個性を生かしながら様々な組み合わせが可能です。その中でも、トップ光はそれを土台にして別の方向の光と組み合わせることが非常にしやすいのです。
光の向きを捉えることを学ぶ時には、このトップ光をまず学んでみるとその他の光のことがよりわかると思います。
僕はよく、ロケなどでは蛍光灯を切ることがあります。
それは、トップの光が嫌いだからでななく、実際はトップ光の割合を減らしたいから切って調節しています。
(もしくは、手前だけ消して奥をつけたりとか。そうすることで奥行き感を強調させることができます)

そういった調整だけで、ずいぶんと雰囲気が変わります。
実に奥が深いのがトップ光なのです。この光を制することが、ライティング上達の近道だと思います。


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