藻澄川 5

慶次は、どこに行くという当てもなく
ただ街中をぶらぶら歩き続けた
 

街中ではちょうちんが暗闇の中に怪しく佇み、
その白い羽を通路の隅の方まで広げている
 
羽は何層にも重なり合い、
濃淡の入り混じった光の模様を地面に描き出していた
 
 
ふと遠くの方へと目をやると、
真っ暗な夜空の中で、数えきれないほどの巨大な光の塊が中天に向かって昇っていくところだった
 
光の塊は、それが意思を持つものであるかのように
海の中漂う海月よろしくゆらゆらと揺れていた
 
 
、、、、、灯篭か
 
  
川に流された灯篭の光が、真っ暗な夜空に写されて
人魂のように雲に映えているのであろう
 
天空から地上へと、
束の間の再会を求めて帰ってきた祖先の人たちの魂のように
 
 
 
 
慶次はしばらくその様子を眺めていたが、
やがてその巨大な光の塊の方へと歩いていった
 
 

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