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千歳くんはラムネ瓶のなか 9巻 感想

みなさんこんにちは、初めましての方は初めまして。
SSRと申します。
このようなサイトを使って感想を書いてみるということは今までになかったのですが、今回は書く以外にこの気持ちを発散できそうになかったので、感想執筆にチャレンジしてみようと思います。
まだ千歳くんはラムネ瓶のなか(以下チラムネ)という作品をご存知でない、もしくはお読みになったことがないという方がいらっしゃいましたら、ぜひ以下のリンク先をご覧ください。

前置きが長くなりましたが、そろそろ本題の感想に入っていこうと思います。

【ここから先、チラムネ9巻の重大なネタバレが含まれます。ご注意ください。】



読了直後のツイートにも書いたが、真っ先に浮かんだのは「美しい」の一言だった。
文章、特に比喩が美しい。
構成が美しい。
伏線の貼り方が美しい。
キャラクターの挿絵が美しい。
キャラクターの行動や内面が美しい。
キャラクター同士の、互いを思う気持ちが美しい。

そして、そんな彼らの紡ぐ“青”が美しい。

もちろん今までも美しかった。けれども今回はそれ以上だった気がする。テーマが学祭といういかにも青春といったものだからだろうか。それとも今までの集大成に見えた巻だからだろうか。その理由まで細かく考えきれてはいない。

しかし、そこが魅力だとも思う。
理屈など抜きに、心に語りかけてくる美しさ。
文章とはここまで心に響くものなのか、と感銘を受けた。

そして、この9巻、そして前編にあたる8巻を通して強調されてきた「終わり」「停滞からの脱出」
間違いなくこの藤志高祭はそれらに向けたターニングポイントになっていたと思う。
それゆえに生まれ、変わる、想い・感情・行動。
それら全てが美しかった。
この3日間だからこそ生まれた美しい物語が
その中のさらに短い刹那のような一時ごとに紡がれる美しい物語が
確かにそこにはあった気がした。

校外祭

校外祭はなんといっても優空。
けれども僕はまず夕湖の存在に目を向けたい。
朔を思って泣いてくれた優空。
そのことを気づかせてくれたのは夕湖だった。
思えば、朔に新たなことを気づかせてくれるのはいつも夕湖ではなかったか。高校生活の中で1番長く朔と共に過ごし続けてきた夕湖だからこそできることなのかな。

さて、優空に視点を戻そう。
優空が「あなたのために」という想いを朔にまっすぐ伝えたことと、朔の「心を澄ます」という返事。
ここでもう胸にくるものがあった。優空と朔だからこそ、お互いの心に触れ合ってきたこの2人だからこそなんだろう。この掛け合いは。
その後の優空のモノローグでもう涙腺崩壊。
優空の想いが、文字を通してひしひしと伝わってきた。胸を打った。どれだけ朔を想ってるのかが心に直接飛び込んできた。
そして、優空が音色に乗せて送った心を朔がちゃんと心として受け止められたこともよく伝わってまた涙。あの対話とその直後の挿絵のコンボは泣いてしまうよ。美しすぎる。
そして音色(こころ)と心(ねいろ)。この2つの表現、とても美しいと思った。大好きだ。
 
演奏後の対話も大好き。
ここで最後の一言ずつを言わなかったってことは、お互いの胸の内に留めておきたいのかな。


そして意識される「終わり」
やはりこの巻は「終わり」の物語なのだろう。


今度は「七瀬悠月」としての宣戦布告か、この先が楽しみだ。


二人三脚

陽、わかるよ。
陽はそういう子だ。
どこまでも負けず嫌いで、誰よりも熱くて、諦めずに自分で道を切り開こうとする強さがあって。そして相棒を認めているからこそ、全てが通じないことへの怖さも感じていて。
それでも最終的にはハートに火をつけて全身全霊で動き出せるんだ。
迷いながらも、相棒を信じることができるんだ。

なんて美しいんだろうか、この少女は。


切磋琢磨し、共に月に手を伸ばしている関係。
弱くなってしまったときに支えて、エンジンを再始動させてあげられるような関係。
なんて美しいんだろうか、彼女と相棒たちとの関係は。

そう思った。




パフォーマンス

引き込まれた。
光景がありありと浮かんでくる、躍動感に溢れる文章。
それに美麗すぎる挿絵が加わって、序盤から青組海賊団に魅了されてしまった。

柄にもなく熱くなる和希。
彼の心に秘められた想いを知ってるからこそ、理解できるし切なくも感じた。
その和希の刀を、1番深く彼の気持ちを理解しているであろう朔が受けるというのもまたいい。

そして何よりここは悠月と紅葉の立ち合い。
紅葉の自分たちに対する感情や行動の理由を理解したうえで、あの夜を経てさらに強くなれたであろう「七瀬悠月」としてそれを受け止める。
そして、自分の生き様を貫く。
素直に、やはり七瀬悠月は美しいと思えた。
おそらく紅葉も「七瀬悠月」という生き様を理解したのではないか。
その後の口上と挿絵
相互理解ができたであろう2人とその晴々とした表情は、とても綺麗で美しかった。
そして叶うならば、これからは紅葉も「望紅葉」として生きていって欲しいと思った。

そしてここで、ここで来たか、バンド!
よく考えればヒントはあった。
「宴」パートの時踊りの練習をしていたのは男子だけ、その指導員が健太、事前公開されたバンドのイラストと剣舞の時のイラストの服装が同じ、などなどだ。
しかし気づけなかった、ここに来て初めて点と点とが繋がり、思わず唸った。

そしてバンドシーンの爽快なこと。
それまでに引き続き動きがありありと目に浮かび、とても眩しく感じた。
けれども、その中にもヒロイン1人1人に焦点を当てた繊細で美しい文章がある。
それらの相乗効果のおかげで、「終わり」を華やかに彩ろうとする彼らの青が美しくきらめいていたと感じた。

そして朔と悠月を呼ぶ声に向けた「お前の曲」
まさか、彼だったとは思わなかったよほんとに。

夕湖はやっぱり夕湖なんだよな。
ちゃんと朔を見てくれてる。ほんとに健気でいい女の子だよ。


文化祭

明日姉かわいい。
けどもどうしても1年の差があるという運命の残酷さを感じてしまうんだよな。

デート中の朔と悠月の会話はあの夜を越えて心をすくった関係だからこそ、という感じがした。

そしてステージ企画。
やっぱり紅葉の本番はここだったか。
ここまでやたらステージ企画を見にくるように念押ししたり本番は3日目にまで続くことを強調したりしてたから、もしかしてとは思っていた。
そして僕も悠月と同じく、まさか朔があのようなことを言うとは思ってもいなかった。

でもそこは七瀬悠月、流石だな。
朔と陽、陽と悠月が相棒であるように、やっぱり悠月と朔にも相棒みたいな関係があるんだな。
泣きながら叱咤激励、4巻の足羽山を思い出したよ。
「千歳朔」に心をすくわれ、「千歳朔」に惚れ、「千歳朔」と鏡写しのような「七瀬悠月」だからこそ、ここまで言えるし朔の心にもここまで響くんだろうな。
「千歳朔」に心をすくわれた「七瀬悠月」が、今度は逆に千歳朔の心をすくって「千歳朔」を取り戻す。
最高に美しい展開だし、これぞこの2人という関係じゃないか。とても美しい。

そして取り戻された「千歳朔」
最高にカッコよかったぞ

そして始まる悠月の告白。
ここで四章に突入する。
その量、およそ30ページ。
いや、驚いた。まさかこれほど短いとは。
実のところ、もう少し、少なくとも100ページ近くはこのシーンに使うのではないかと予測していたため、この密度に期待と畏怖を覚えた。

悠月の告白、美しすぎる。
8巻では、朔が「七瀬悠月」で在り続けようとする七瀬悠月に惚れたと言ってくれた。
そのお返しとばかりに、ここで悠月が「千歳朔」で在り続けようとする千歳朔に惚れたと伝え、「七瀬悠月」としての生き様を見せることで「千歳朔」の生き様を肯定すると伝える。
朔が悠月に道しるべを示してこころをすくったように、今度は悠月が朔に道しるべを示して心をすくう。
そして朔はそんな七瀬悠月と向き合い続けたいと求め、七瀬悠月が「七瀬悠月」であろうとしたところに惚れたこと、鏡写しのような存在である「七瀬悠月」の生き様に恥じない生き様でいたいということを改めて告げる。
両巻を通してお互いがお互いの生き様を肯定し、存在価値を示してくれる。
鏡写しのような存在である千歳朔と七瀬悠月だからこそ、互いのしてくれたことの尊さがよくわかる。
鏡写しのような存在である千歳朔と七瀬悠月だからこそ、互いに相手に恥じぬようにいたいと思いあえる。
これを美しいと呼ばずして、なんと呼べば良いだろうか。
クライマックスだけあって、究極の美しさではないか。
このシーンを「美しい」以外で形容できる言葉は、僕の辞書には存在しない。


読み終えて

さて、読み終えた今、改めて言おう。
この物語はとにかく美しい。
特にやはりキャラクター同士の関係性やお互いの想いが最高に美しい。
軸となったのは千歳朔と七瀬悠月だが、この感想の中でも触れた、柊夕湖と千歳朔・内田優空と千歳朔・青海陽と千歳朔・青海陽と七瀬悠月・望紅葉と七瀬悠月、これらの組み合わせをはじめとする、他のキャラクター同士の関係性もとても美しかった。
次巻以降も新たな美しい関係性が生まれると思うと楽しみで仕方がない。

そして、僕はTwitterでの一言感想で「集大成」という言葉も使った。
千歳朔がかりそめとはいえ答えを出し、停滞からの脱却も見えてきた。そのうえ、智也の更生とバンド活動開始、楽曲提供に代表されるように、以前の巻を思い起こさせる又は以前の巻の延長線上にあるような部分も多かった。
これらのようなことが理由である。
集大成であることを節々から感じたゆえに、よりこの物語に「終わり」の美しさを見出せたのかもしれない。


次回の10巻は時期的に修学旅行かウィンターカップがメインとなるのだろうか?
僕はウィンターカップがメインとなり、今回の二人三脚で陽が抱えていたような悠月に対する感情に何かしらの区切りがつく陽回になってほしいと思っているが、果たしてどうだろう。

次回も美しい物語が紡がれるはずなので、今から非常に楽しみで仕方がない。





気づいたら4000文字を超えておりました。
乱文かつ長文でお見苦しい感想でしたが、読んでいただいた方、ありがとうございました。

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