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ただの音楽好きをひと月で3回驚かせたBTSの”本質”とは

BTSには本当に驚かされた。驚きすぎて、毎日彼らの動画を見ている。何度も見ている。お気に入りの振付のパートを繰り返し見ている。動画がひとつ終われば次から次へとレコメンドされて「あれも見たい」「これも見てみるか」のループが永遠に終わらない。気づいたらあっという間に1時間溶けてしまう。メンバーの名前は分からないけど、動きの癖で何となく個人が特定できるようになってしまいました。

洋楽が好きで、メタルやロック、R&Bもヒップホップも何でも聴くんですが、K-POPやアイドルにあまり関心がなく、私にとってBTSは「関係のない人たち」。BTSがアメリカで売れていると聞いてはいたけど、彼らの音楽をプレイリストに入れる動機をひとつも持っていませんでした。

そんな私がなぜ毎日BTSの動画を見るようになったのか。それは、BTSがたったひと月の間に3回も私をびっくりさせ、彼らへの認識を根底から変えてしまったからです。

1つめの驚き:これ誰の曲?「BTSです」

フォローしている音楽ライターさんが言及していたので、BTSの新曲が全米チャートでヒットしていることはなんとなく知ってはいました。ライターさんが貼っていたリンクをたどって「Dynamite」のMVを見に行ったけど、ちらっと見て離脱。

カラフルなMVは細部まで作りこまれていて超ハイクオリティ。「へえ~、確かに凝ってる」と感心したものの、K-POPらしいビジュアルイメージを見て「あ、自分には関係のないヤツかな」として仕分けしてしまったんだと思います。たぶん。

そのままBTSのことは忘れ、仕事をしながらSpotifyの「Today's Top Hits」を流していたある日のこと。

「あ、この曲好き。誰の曲?」

Spotifyの画面に目をやると「Dynamite・BTS」の文字が。「なんだBTSか」(失礼)まぁいいやと、お気に入り登録することもなくそのまま仕事に戻りました。

別の日。同じくSpotifyの「Today's Top Hits」を聴きながら。

「あ、この曲すごく好き。誰の曲?」

(スマホを確認)「なんだ、またBTSか」(失礼)そういえばこないだもチェックしたよなあと思いつつ、深堀りする動機が生まれずにやっぱり仕事に戻りました。

さらに別の日。いつものようにSpotifyの「Today's Top Hits」。

「あ、この曲すごく好き。誰の曲?」

Dynamite・BTS)「・・・」

ここで白旗上げました。好きです、すごく。Dynamiteという曲が。大好きです。キャッチーなコーラスのイントロ。R&Bムード満点のリードボーカルにハートをつかまれる。思わず口ずさみたくなるサビ。サビに続く美メロの鮮やかさ。全編に散りばめられたマジックワード。「rock'n'roll」「like a rolling stone」「disco」「funk and soul」とか、古の音楽好きにはたまりません。バックのファンキーなギター最高。首の後ろがうずうずしてくる。Bee Geesを彷彿とさせるフレーズも楽しくて「フフッ」となりました。

サウンドは例えるならマイケル・ジャクソン meets ブルーノ・マーズ。70-80年代リスペクトな、とびきり楽しくて可愛らしい曲ですよね。大切なおもちゃ箱をひっくり返してパカッと開けたみたい。

自分とは無縁の存在だったアイドルグループが、大好きな音楽の要素がつまった「スキの濃縮還元」みたいな曲をリリースしている。その曲は全米トップヒットのチャンネルでプレイされても全く違和感のないサウンドとクオリティ。先入観なしに耳にして、楽曲の良さだけで3度も仕事の手が止まったことに驚きました。

2つめの驚き:なんかダンスすごくない?

あらためてDynamiteのMVを見てみたんですが、K-POPアイドルの圧が強い。(スミマセン)みんなセンター分けなのどうして。髪色のバラエティ。ほんのりメイクしてるし肌がキレイすぎる。メイク映え。バーン!て撃ってくる人いるけど、どうしたらいいの。キラキラな世界に不慣れすぎてリアクションの正解が分からない。

キラキラに包まれた4分のMVを最後まで見てみると、サウンドだけでなく振付も全編マイケル・ジャクソンのオマージュなんですね。時にはジョン・トラボルタ。古の音楽好き・映画好きにはたまりません。”あの頃”の衣装を身にまとい、配色までこだわりぬかれたセットの中で、遊び心満載の振付を見せる。あれも好き、ここも好き、と宝探ししている間に曲が終わってしまう感じ。こだわり=愛。音楽への愛がぎっしり詰め込まれていて、モニターのこっち側まで幸せな気持ちになります。

ジャケットをピシッと直す仕草のダンディズム。髪をなでつける粋な振付にはバーン!と心を撃ち抜かれました。胸ポケットから取り出したコームが見える。私には見える。バイバーイ、とステップ踏んで下がっていくシーンでは思わず手を振りそうになりました。

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ここらへんの衣装もクラシカルだったりウエストサイドストーリーを彷彿とさせる雰囲気もあったりで素敵です。特にグリーンのベストの彼は往年のハリウッドスター感あってゴージャス。イケメン界には「スーツ顔」「ボーダー顔」「白T顔」など様々なカテゴリがありますが、私の中に「ベスト顔」という新たな領域が爆誕しました。

このMVはすでに4億回以上再生されていますが、うち30回は私が回しました。(少ない?)何度もMVを見ているうちに「Dynamite' Dance Practice」という動画を発見。Dynamiteのレッスン風景を撮影した動画らしいのですが、

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いきなり、ここ。なんかダンスうまくない?いや、うまいのはMV見て知ってたけど、一段上のレベルのうまさ。なんというか、本当に踊っている人のダンス。背中の使い方、音の取り方が違う。音と音の間も踊っている。MVではまばゆい映像(とご本人たち)に視界を奪われ見逃していたけど、ダンススキルの高さがすごい。練習着になった彼らのダンスを見て、初めて真の姿に気づきました。

みんな上手だけどリードボーカルの全身グレーの人と赤い帽子の人が抜きんでている。赤い帽子の人は、ザ・ヒップホップダンサー。髪の先から爪の先まで神経通したような完璧なボディコントロールがかっこいい。「体の一箇所たりとも投げ出さないぞ!」という信念を感じます。何となくな瞬間がゼロ。全部の音とリズムが見えるみたいな動きですね。ジャンプしたときの滞空時間さえ操っていそう。あんな風に自分の体を動かせたら気持ちいいだろうな。

BTSのダンス練習動画はたくさんアップされているみたいで、Youtubeにすすめられるがままにレッスン動画を見ていきました。そしたら他にもすごい人がいて、

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この人すごくない?

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ダンスめっちゃすごくない?

スピード、キレ、可動域の大きさ、体幹の強さ。ターンが早すぎて風を切る音が聞こえそう。華奢な体形に似合わぬハードヒッター。そして超絶エモーショナル。悲しげな曲ではこの世の業を一身に背負ったかのような悲壮感にあふれている。表情が見えないのに、ここまで情感が伝わるのすごくないですか。一挙手一投足にドラマが見える。

コンテンポラリーダンサーのような風情ですね。身のこなしにとんでもなく華があって視線を持っていかれる。美麗なライン。こだわりぬかれた顔の角度と目線の投げ方にハッとさせられます。それと首とか顔が音に連動するダンサーって好きなんですよね。すごいパフォーマーだなって思いました。

色んな曲を見ましたが、どの曲にもここぞ!という象徴的な振りだったり個性的なムーブメントがあったりして飽きない。楽しい。手数多め、運動量多め、スピード速めのスキルてんこもり二郎系スタイル。ダンスのスタイルを「BTSっぽいダンス」って言葉で表現できるのがすごい

ここぞ!のときには特に上手な3人を前に集めて破壊力を最大にしてくるフォーメーションもうまいと思いました。「あそこのダンスかっこよかった」と、どうやっても記憶に残る。「アイドルグループのダンス」のイメージを軽く越えてくるパフォーマンスが二度目の驚きです。

3つめの驚き:なんか歌うまくない?

頭から終わりまでダンスが見れる練習動画ばかり追っていたのですが、数日前に配信された「Tiny Desk (Home) Concert」という動画をなんとなく見てみたところ、

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'Cause, I'm in the stars tonight~とDynamiteの歌い出し。音源を流してるのかなと思ったら、

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めっちゃ歌ってた。

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めっちゃ歌ってた。

え、歌うまくない?しかも全員。全員ちゃんと歌ってる。ザ・ヒップホップダンサーの彼の声、良くない?ロックの声ですよ。ダンスで魅せるアイドルグループかと思ってたけど、みんなこんなに歌えるの?想像もしていなかった歌のレベルの高さにめちゃくちゃ驚きました。

アイドルって声が細いイメージがあったので、皆さんの骨太な声に良い意味で予想を裏切られました。良い声だらけ。要所要所でしれっと入れてくるハモりもばっちり。古の音楽ファンなのでコーラスとかハモりにめっぽう弱いんです。先日放送されたMusic Dayのパフォーマンスも見たはずなのに、歌の上手さに気づいてなかった。キラキラの功罪…。

ベスト顔の彼の声のトーンが個性的で良いです。ベールをかけたような、内側に二重三重に響くような独特な質感が後を引く。右端のエモーショナルくんの声も、一度聴いたら忘れられない唯一無二の個性。ベビーフェイスならぬベビーボイス。成人男性でこういう声に出会ったのはgleeのカート以来かな。左から2番目の方は、ダンス動画では今ひとつ個性をつかみきれなかったんですが、第一声を聴いた瞬間にどんな人なのか分かりました。「この人のステキなところはココなんだな」って素性が分かる瞬間は本当に楽しい

歌にフォーカスしている動画をいくつか見ましたが、このTiny Deskのパフォーマンスが一番好きですね。たぶんライブ好きになじみのあるフォーマットだからかなと。壁際にLPをびっしり並べて、古いアルバムと埃の匂いがしそうな中古レコード屋のようなセット。楽器隊が後ろに控えて臨場感たっぷりのライブパフォーマンス。インハウスライブみたい。ここでも音楽ラブ感があふれている。

ライブってその場でしか生まれないコミュニケーションとか化学反応なので、自然発生する合いの手とか、ダンスのかけあいとか、ライブならではのグルーブ感がすごく楽しい。めっちゃ好きなやつ。ジャムセッションそのものです。ミュージシャンは楽器でやるけど、彼らは声とダンスでセッションしている。あと座ってられなくて次々に立ち上がって踊っちゃってるところがかわいい。音楽ってそういうものですよね。

完璧に演出されたステージで魅せる一分のスキもないダンスパフォーマンスも素晴らしいですが、こっちのフォーマットになって初めて歌の地力に気づきました。

彼らの”本質”があらゆるボーダーを越えてくる

私を襲った”3つの驚き”は元々彼らが持っていたもの。それがたまたま自分に刺さりやすいポイントで切り取られ、とっつきやすい方法でデリバリーされたことでここまで届いた。より多くの人に音楽を届けるためには、相手に合わせたコミュニケーションが肝心要なのだと改めて感じました。届けたい相手は誰なのか。その人に何を見せるのか。どうやって伝えるのか。

自分の場合は、キラキラしたMVを通してではなく楽曲そのものを聴いたから。K-POPアイドルらしいビジュアルを介さずにダンスそのものを見たから。ダンスのないパフォーマンスで歌だけを聴く機会があったから。そうやってBTSと自分との接点が初めて生まれました。「あ、好きなやつだった」と。どこにどんな接点を設けるのかはマネジメントの力量だけど、多くの接点を持てるだけの実力と魅力が彼らに備わっているのが強みですね。

過去の作品と比べて超ポップなDynamite。歌詞は英語。コアなファン層の外にいる「たくさんの人たち」にリーチするために、かなり戦略的にリリースされたんじゃないでしょうか。世代は高め、音楽好き、古き良きアメリカにノスタルジーを抱く人たち。そんなところがターゲットですかね。

門外漢である自分に刺さったのは彼らの持つ普遍的な魅力。音楽がよい。ダンスがかっこいい。声が魅力的。いつの時代もジャンルの枠を飛び越えてマスに届く力を持つのは、誰しもに伝わる普遍的な魅力に他ならないんだろうなと思います。良いものは良い、かっこいいものはかっこいい。シンプルですよね。

それにしても、今この瞬間に世界で売れてるアーティストの活動量ってすごいんですね。ちょっと検索しただけで毎日新しい情報がどんどんアップされていて、供給量の多さにもびっくり。普段追っているのがインディーズシーンのバンドだったりするので、スケールの違いをひしひしと感じました。

そうやってるうちに、Dynamiteの新しいバージョンが公開されてました。嬉しいコレオVer.。私の生活に「スキ」を増やして毎日を楽しくしてくれて感謝。ありがとうDynamite。


※記事にたくさん「スキ」をくださってありがとうございます。メンバーの名前もやっと覚えて、最近はMikrockosmos芸人になっています。


※オンラインライブも見てしまいました。


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