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BTSのUnpluggedは予想通り最高だった

発表されてから2週間、この日が来るのを指折り数えて待っていました。BTS on MTV Unplugged。私は古のロックファンなのでUnpluggedのど真ん中世代。Bon Jovi、エリック・クラプトンにNirvana。後世に語り継がれるステージを生み出す「Unplugged」自体が伝説。”プラグを挿してない”って表現がまた良いんですよね。Unpluggedというワードだけでときめくのに、BTS×Unpluggedて。どの曲やってくれるのかな、どんな音楽聴かせてくれるのかな、とライブ前のようなワクワク感を久しぶりに味わってました。

そしたら。

鳥肌。涙目。鳥肌。そして涙。どうして人は美しいものを目にしたり耳にしたりすると涙が出るのか。ていうかColdplayの『Fix You』て!カバーとかやってくれるの?!聞いてない。聞いてないよ~。

『Fix You』は2005年の大ヒット曲ですが、ヒットの規模より「愛され曲」のイメージが強いです。サム・スミスを始めプロアマ問わずカバーする人は後をたたず。gleeでは当然歌われたし、他にもダンスの振り付けやアイスダンスのシブタニ兄弟の出世作としても有名。

腕利きのラッパー3名を擁するBTSなのでオリジナルのラップアレンジとか入れてくるかもと思ったけど、そんなことはなく。原曲に忠実なアレンジで曲の美しさを届けることに全集中。楽曲とバンド、そしてこの曲を愛するたくさんの人たちへの敬意を感じました。

パフォーマンスは7人の声の良さ、歌のうまさ、ハーモニーの美しさがひたすら素晴らしい。この動画でBTSを初めて見た人は彼らの歌い手としてのスキルの高さを知ってひっくり返ったんじゃないでしょうか。かつての私のように。

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座り方に現れる個性。

トップバッターはやっぱりジョングク。音をめいっぱい使い切る遅どりっぽい歌い方。you don't succeedの「ceeee」のところのトーンがジョングクー!です。ジョングクの声はブルーアイドソウルの声なので、ソウルと根っこでつながってる音楽との相性は抜群ですね。吐息が多めのVの歌からジン&RMを経てジミンへ。パイプオルガンの音だけで歌うジミンの声は聖歌隊のように清らかで、天空からの光にいざなわれて宙に浮いていきそう。そしてジンの歌が。ジンの歌が。とてつもなくよいのです!

以前からジンの声は音数少なめのシンプルな曲や生っぽい音によく合うと思ってたんですが、『Fix You』のはまりっぷり。これジンの歌の最高峰のひとつだと思います。

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いつもの少し鼻にかかった甘い声が際立つ。声の揺れ方の豊かさと閉じ方の美しさ。残響まで美しい。

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When you lose somethingの「lose」の繊細なタッチ。大切に大切に言葉に触れている。

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I will try to fix youのイノセントな響き。泣いてしまいそうだ。

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RM、ジミン、ジンの神々しいハーモニーに心臓が止まりかけたのは私だけではないはず。画面から光があふれる(錯覚)。最高音を司るジンの声はクリスタルな輝き。

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そして最後のTears stream down your face and Iのエッジの立ち方!腹の底から声を出してすこーんと頭に抜けさせられるジンだけの技。スクリームでもシャウトでも何でもできちゃいそう。ピッチ完璧。「ピンクのマイクを持った男(The guy with the pink mic)」がトレンドに上がるのも頷けます。7人全員の声が好きでそれぞれ好きポイントが違うけど、一番「ぐっとくる」のはジンの歌なんですよね。

一方ラッパー3名がどうしてたかというと、ボーカルの1オクターブ下のコーラスを担当。贅沢すぎてバチが当たりそう。ハモり方っていろいろあるけど、オクターブ下のハモりって洗練されててすごくいいですね。ラッパーの声が入ったことで土台にどーんと厚みが増して、優しさと安心感を曲に与えていました。彼らの声を聴いているといろいろ大丈夫な気がしてくる。α波が出ている、きっと。低音て耳じゃなくて胸のあたりに振動がくるのが最高ですね。

ジミン&Vと歌ったJ-HOPEさんの声は完全に暖色でした。質感がすごく温かくてブランケットのような手触りと広がり方。その場を包み込むような優しい佇まいの声。ステージに立つとその人の本質が見えるというけれどホントかもな、と思いました。声の組み合わせだとV&SUGAも好きでしたね。溶け合う感じがよい。

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ここ、J-HOPEがVの目を見てこくっと頷くのがとても好き。信頼関係。

Fix Youって構造がどシンプルなので演者の個性と力量がないと間がもたないタイプの曲ですが、BTSに限っては無用の心配でした。「いかにサビで気持ちよく爆発させるか」が要となる曲で、BTS ver.はコーラスワークで展開させるアレンジがお見事。最初のAメロはソロ中心、2回目からラッパーのコーラスで音を厚くしていって、サビ前の3人のハモリで小爆発。心が完全に高まってからのサビで大放出。歌い手の組み合わせも次々に替わって飽きさせない。7人の強みを存分に生かしてました。

曲のキーワードでもある「light」を効果的に使った演出も素敵でした。曲の盛り上がりと共にライトの数と光量が増していって、最後はスモークがたかれてライブ会場のよう。スタジアムじゃなくて小さめなハコの。ギターのリフに合わせてライトが点滅するのを見てると気持ちが荒ぶりますね。両腕振り上げたくなる。

番組終了後はBlue & GreyとTelepathyの再生回数が一番多くて、Fix Youは百万単位で少ないレベル。いまや数字は逆転して、前2曲の倍ほども再生されてます。これ、このパフォーマンスがBTSファン以外の人たち、ColdplayファンやUnpluggedファン、Fix Youが好きな人たちへどんどん広がっている証拠だと思います。良質のカバーは波及力がすごくて、時空を越えて人と人をつないでいってくれるから好きです。

ビッグアーティスト×大ヒット曲の組み合わせはメディアも取り上げやすい題材。放送後に「BTS covers Coldplay」という切り口の記事が多数みられました。ほどよく意外性があるコラボなので「ちょっと聴いてみようかな」と一見さんも腰を上げやすい。仮に私がBTSを知らなかったとしても「Unplugged」「BTS」「Fix You」の組み合わせに興味を惹かれて、きっと再生ボタンを押していたと思います。

そして「うまく行かないことがあって落ち込むときは、ぼくが支えになりたい(I will try to fix you)」というテーマは時勢にマッチしているだけでなく、BTSが日頃から発信しているメッセージと完全にリンク。ファン以外の方にも聴いてもらえるようにと選んだカバー曲だと思いますが、完璧な選曲だし狙った通りの波及効果でしたね。もちろん、メンバーの神聖なパフォーマンスがあってこその話ですが。

この曲にもぶっ飛びました。

て、て、Telepathy!Telepathyとかやってくれるの?!事前情報で「BEの曲をやる」って言ってたけど、Life Goes OnとDynamiteでBE枠は埋まると思ってた。Telepathyやるって聞いてない。聞いてないよ~。

ずっと音源で聴いていたお気に入りの曲をライブパフォーマンスで聴けるって幸せですね。音源よりだいぶごきげんなムードでした。曲に血が通うライブバージョンてやっぱり最高。まだこなれてないというか、手探りっぽいところもあるけど、それすら愛せそうな勢い。

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SUGAが作った曲で歌うSUGA。大好きな歌い出し!音源のエフェクトかかりまくった声も中毒性があって好きだけど、生っぽい声もライブ感たっぷりで実によいです。ラップと全く違う発声で新鮮ですね。歌うSUGAを見ていたら、「世界よ聞け、この童顔から繰り出される野太い声を。」という謎のドヤ感が自分に芽生えてきました。私はSUGAの童顔にも野太い声にも1ミリも寄与してないんですけど。

メンバー全員とにかく楽しそう。前半は少し固さがあるけど曲の後半にいくにつれてリラックスしてきてドライブがかかっていくところもライブっぽかった。こういうノリの出し方って今までのBTSのステージでは見たことない気がします。新境地ですね。K-POPの範疇におさまらない音楽性を世界に披露できることの意義は大きい

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ここ、J-HOPE先生がロックシンガーっぽいフェイクをしれっと入れてくるので卒倒しそうになりました。にくいことやってくれます。RMの「ベバリヒウズ」の発音も聞けて非常に満足。あとこういう自由なノリを出せる曲だと、Vのグルーヴ力が最強に。音楽がグッチのニット着て歩いてるみたい。

メンバーがDIYで作った秘密基地」みたいなセットも、例によって細部に神が宿っていました。NASAの人形置いてたり、真っ赤なサイドカー(ベスパ?)を登場させたり。いたるところに「BE」と「MTV」って貼ってあるし。雑然としているところがリアル。メンバーが夜な夜な通ってきてはコツコツ仕上げたのかな、なんて妄想が生まれます。


この辺で気づいたんですけど、Unpluggedはどこへ・・・?笑 渡米できず、Unpluggedの青いステージに立てないのは残念だろうなと思ってたけど、転んでも(?)タダでは起きないBTSさんご一行。Unpluggedの枠でやりたい放題。いいぞ。

Blue & Greyは冷たい冬の空気に満ちた曲で、聴いてると体感温度が3度くらい下がるので、寒い日には外で聴くのを避けてました。でもこの映像は春の訪れを想起させる、希望を表現したもの。特に後半の彩度をおさえたブルーのトーンが美しかった。光の差し込み方や色の変化が時の移ろいを表現していて、物語性が強く打ち出されてます。

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あとRMが入ってきたときの心強さったらないですね。Spring Dayもそうだけど、話すようなトーンのときの声に宿る力が半端ないです。声がまぶしい。オバマ元大統領みたいにスピーチ音源出したら売れるんじゃないか。


Telepathyとは逆に、こなれまくりのDynamite。合いの手・コーラス入れまくり、フェイクもアドリブも盛りだくさんで楽しい!Tiny Deskの1.5倍くらい増し増しになっている。練度が格段に上がってますね。曲を完全に自分たちのものにしているので余裕が生まれる。余裕があるから遊びを入れられて表現力がますます豊かになる。正のループが回りまくってます。

今回のDisco overloadのコーラスはVが担当。前はジミンだったけど。全員できるんか。そのジミンさんのgrowlも絶好調。もっともベビーな声の人がもっともgrowlしまくるという振り幅がたまりません。

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ラストのshinin' throught the city~のところを突然裏声で歌うVさんと、それを真顔で見つめるジン。よく見るとSUGAもマイクの下から見てる。ジミンも見たことない顔してる。(これどういう表情?)

衣装はスーツじゃなくて燕尾なんですね。シャツと靴で着崩してておしゃれ。RMとJ-HOPEだけラペルピンついててかわいかったです。王冠とお花かな?

※RM氏のピンは王冠じゃなくて「DIOR」でした。ラッキーチャームついててかわいい。


Unpluggedのために作られたようなLife Goes On。しみじみと良い曲。バンドサウンドいいですね。生ドラムになっただけで雰囲気が全く変わります。アコースティックギターの音が大好き。ピアノのアレンジも美しくて、エレクトリックな音とは違う種類の豪華さ。「今ここにしかない」音楽の貴重な瞬間。

『BE』はジョングクの声の美味しいところを使える曲が少なくて、彼のボーカルを聴くという点ではやや物足りないところも。でもこうやってライブで聴くと、美味しい音域よりちょっと下のレンジでもこんなに豊かに響かせられるんですね。ほんとに管楽器みたい。ずっと自由に音楽と遊んでいて、メインボーカルという以上に音楽の柱になっていました。

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男性がオールバックにした髪型が好きなんですが、RMのカリスマオールバックと双璧でジミンのオールバックもクレバー感が増幅されて好き。今回は私立高校の上等な制服っぽいスーツ(化繊ゼロ)を着ているので、素行が悪くて寄宿学校にぶちこまれた名家の放蕩息子が300年の伝統がある年イチの学内イベントで嫌々歌わされたら周りが腰抜かすくらいうまかった、みたいな図に見えてとても良いです。

BTS on MTV Unplugged、すごく楽しみにしてたけど、すごくすごく素敵なパフォーマンスばかりで期待以上でした。いつも期待以上なような気がしますけど。アーティストとしての地力が試されるビッグステージでBTSは実力を遺憾なく発揮。Unpluggedというフォーマットを通して、その魅力がファンベースの外にいる人たちへもさらに届いたんじゃないかな。しばらくは鬼のようにリピートするつもりです。音源がリリースされますように!Dis-easeもいつか聴けますように!




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