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リプリント版の楽譜とEdition ZEZA (Sheet Music X)について

著作権がフリーになっていない作品は、オーケストラのパート譜はレンタルになっていることが多く、その場合は権利を持っている出版社などから公演1回あたりいくら支払うという形でレンタルし許諾を得て演奏するという形式が多いです。値段は曲の長さによって決まることが多いのですが、長い曲の場合は本番1回で20万円を超すこともあり、結構な出費です。

著作権がフリーになると、オリジナルと違う出版社からリプリント版と呼ばれるオリジナルと同じ楽譜が出版され始めることがあります。原出版社の楽譜は著作権が消滅した後も本番1回あたりいくらというレンタル形式のままのことも多いのですが、リプリント版の場合は安く購入することができ、一度購入して所有してしまえば、あとは何度でも自由に演奏できるので、リプリント版の楽譜の購入はオーケストラの財政にとって重要です。代表的なリプリント版の出版社はKALMUS( http://www.efkalmus.com/ )やLuck’s( http://www.lucksmusic.com/ ) があります。(追記:Kalmus社は現在事業を停止していてその作品は他社が引き継ぐ予定です)

ただし著作権の保護期間は各国で違うので、日本では著作権が消滅しても他の国ではまだ消滅していない場合があります。

以前(2014年)、ラヴェルのツィガーヌが演奏予定に入りました。原出版社はDurandで、Durand社のパート譜は本番1回あたり約10万ほど払ってレンタルしなくてはなりません。しかし、日本ではすでにラヴェルの著作権が消滅しているので、それではとリプリント版の楽譜を買おうと思っても、KalmusにもLuck’sにも売っていませんでした。それは、これらの出版社のあるアメリカではツィガーヌの出版年(1924年)の作品は公表後95年間著作権が存続するという規定があるため、まだ著作権が消滅していなかったのです。(追記:2020年現在はlucks社でも販売しており、他にBarenreiter社から新校訂版も出ています https://www.baerenreiter.com/en/shop/product/details/BA8849/

当時この作品はDurand社以外ではカナダのEditionZEZA( http://www.sheetmusicx.com/brands/Edition-Zeza.html )から出版されており、そこから購入することにしました。カナダは日本と同じく著作者の死後50年で著作権が消滅します。

ただEditionZEZAは原出版のままのリプリントではなく、PCで新しく打ち直した楽譜です。楽譜サイズはA4で統一されています。印刷も見やすく、めくりの位置などもちゃんと考えて作っているようなのですが、問題点があります。PCで打ち直しているがために、その際の入力ミスが結構あります。もう一つは、コピー防止用なのか、音符の上に重ねて堂々とロゴが印刷されています。コピーしたら浮かびあがるとかならまだわかるのですが、元からくっきり目立ちすぎてその部分の音符が見づらいのです。このデメリットを考慮のうえでうまく使えば、無駄な出費も抑えられそうです。(EditionZEZAの作品情報の中に「REPRINT SERIES」とあればそれは原出版社のリプリントでPCで打ち直したものではありません)

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