K-1新体制についての考察

1月19日と2月2日の記者会見で2024年のK-1最初の興業についていくつか発表されています。

大きくは以下3点です。
1.MAXの復活と-70キロのトーナメント
2.RISEとの対抗戦
3.石井館長のアドバイザー就任

この3点と遡って昨年7月の新体制発表について考えたことをまとめようと思います。

まず、カルロスP体制になり、K-1は原点回帰を目指す方向性になりました。
70キロを境目とし、70キロ以下をWORLDMAX、70キロより上の階級をWORLDGPと変更しました。
これはかつてのK-1でヘビー級をGP、ミドル級(当時)をMAXとしていた体制に合わせています。
また、旧K-1を語る上では欠かせない石井館長もまさかの現場復帰となります。
アドバイザーということで会場でリングに上がり挨拶するようなことは基本的には無いと思いますが、間違いなく影響力を発揮するでしょう。
先日のONE165に出場していたマラット・グレゴリアンを「華がない」とバッサリ切り捨てていましたが、グレゴリアンに対し、石井館長の反対を押し切ってまでオファーするようなことは少なくともないと思います。

私はこの新体制について賛成か反対かで言えば反対です。
元々、2014年に発足した新生K-1は旧K-1の匂いをできるだけ消して名前だけ「K-1」を名乗っているという風に私は見ていました。
「これはK-1じゃなくてKrushだろ」、「世界トーナメントの半分が日本人でK-1の王者を名乗るのか」とよくAbemaのコメント欄に乗るようなことを考えていました。
ただ、そんな中で武尊を中心に新しい価値観、世界観を醸成し、新生K-1は旧K-1とは異なる形、ファンを獲得したと思っています。

私自身も旧K-1とは違うけど、だからダメというよりは面白い試合が多いキックボクシングの一つの団体として見ていました。

昨年7月の発表以降K-1はかつての旧K-1への回帰を進めています。
簡単に言えば、世界中から強豪を集めて最強を決めるというものです。
そしてその先には世界中で映像などコンテンツを売って儲けようというものでしょう。
その証拠にK-1の煽りVは日本国内で開催された日本人同士の試合であるにもかかわらず、英語のナレーションでした。

K-1の歴史は現在3つの分けられると考えており、以下となります。
①旧K-1
②新生K-1
③現K-1
このうち③に関しては今のところは現K-1となっていますが、おそらくシン・旧K-1となっていくと思います。

ここは結構な分かれ道だと考えており、シン・新生K-1となる道もあったはずです。
少なくともTHE MATCH後の中村P時代までのK-1はK-1 nextをテーマにシン・新生K-1を目指そうとしていました。
ただ、映像で見る限り観客動員も苦戦したこともあって方向転換したのかもしれません。

これはあくまで私の予想ですが、外国人を集めたK-1ではあまりチケットが売れるとは思わず、昨年のヘビー級トーナメントもそうでしたが、本当の世界の強豪は参戦しないため他国で放映料もさほど稼げずに中途半端なイベントになってしまうのではないかと思います。
その一方、宮田Pが復帰したKrushはもう一度人気が増し、逆転現象が起きるのではないかと思っています。

旧K-1は2010年に終わっているのでそこから13,4年も経過した今、あの続きと言われても誰も残っていない現状なのでストーリーになっていません。
そのため個人的には新生K-1の続きがどうなるかの方が良いと思うのですが、そうはいかなかったようです。

新生K-1の旗揚げから黎明期の興行は会場で見ましたが、興行のたびにだんだんリング内のスポンサーが増えていくのは見ていてとても面白いものでしたし、運営側もSNSで投稿を呼び掛けたりとにかくコツコツ積み上げていた印象があります。
その点が私としては評価できると思っていたのですが、今回の体制変更でその積み上げもすべて0になってしまう恐れがあります。

今思えば、シン・新生K-1があまりうまく行かなったのはK-1nextではあったもののK-1nextというよりは武尊nextになってしまったのが良くなかったのかなと思います。

アイドルグループのメンバーが卒業と加入を繰り返すうちに人気が低迷するのはよくある現象だと思いますが、それと似ています。
新生K-1はこういうもので王者はこうでなくてはいけないという武尊が作った価値観で固まってしまい、選手のキャラが見えづらくなっていたのは事実です。
そこに加え、2019年ころからK-1の会見では乱闘が禁止となりました。
そのため、試合以外で表現の場がなく、とはいってもK-1はそのルールの影響で同じような試合になりがちです。

本来は残された選手のキャラをもっと発揮させるべきだったのではないかと思います。
何せ新生K-1ではカリスマと呼ばれ、魔裟斗の後継者のような存在となっていた武尊のデビュー当時のキャラはどう見ても魔裟斗とは違うものだし、どちらかと言えば魔裟斗の敵役のようなキャラと言っても良かったかもしれません。
それが試合を重ねていくうちに、いろんなものを背負ううちにキャラが今のように変わっていったのです。
ただ、武尊と魔裟斗の立ち位置や責任は同じようなものであるかもしれないけど同じキャラではなく、武尊に限らず最初から魔裟斗と同じキャラを誰かに求めていたら新生K-1はここまでこれなかったと思います。

とにかく、新しいK-1の体制はシン・旧K-1の方向に進むと発表されているので我々外野の人間はそれをただ眺めるしかできませんが、また10年前のような冬の時代が来ないことを祈るばかりです。


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