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成田市長選挙を考える①成田市の今!のランキングを詳しく調べたら、そこには全く違った景色が見えた話。

はじめに

12/25の成田市長選挙をにらみ、立候補を表明している小泉一成現市長と雨宮しんご元市議会議長の政治活動が活発化しています。
両陣営ともチラシ等で制作や実績を訴えるなか、小泉陣営側のチラシに、成田市の状況についてのデータが掲出されていました。気になってちょっと調べたら興味深い事実が浮かび上がってきたので、今回はそれについて書きたいと思います。

小泉陣営のチラシにあった成田市のランキング

小泉陣営が配布している「小泉市長に聞いてみた!」と冠したチラシに、以下のようなデータが掲出されていました。

・財政力 県内2位/北総地区1位
・住みよさランキング 県内2位
・愛着度満足度指数 北総地区1位
・住環境満足度 県内1位
・医療充実度 北総地区1位
・企業注目度・医療人材の育成度 北総地区1位
・就業しやすさ・就職 県内2位/北総地区1位

ちばぎん総研が実施した特別調査「数値でみる千葉県市町村の地方創生」からの抜粋したランクとのことでした。
これらを以て、健全な市政運営の成果をアピールする小泉氏ですが、この結果に若干の違和感を私は感じました。

というのも、大東建託賃貸未来研究所が発表した「街の住みここち&住みたい街ランキング2022」の結果から受けた印象と、ずいぶん乖離があったからです。

大東建託の調査では、成田市のランクは県内において、街の住みここちランキング9位、住みたい街ランキング13位、住み続けたい街ランキング14位、街の幸福度ランキング23位でした。
(ちなみに、お隣の印西市はそれぞれ2位、ランク外、1位、1位)

街の住みここち&住みたい街ランキング2022
https://www.eheya.net/sumicoco/

もちろん、調査対象も方法も違うため、単純に比較しても意味がありませんが、ちばぎん総研の調査内容に興味がわき、詳しく調べてみることにしました。

ちばぎん総研 特別調査「数値でみる千葉県市町村の地方創生」
https://www.crinet.co.jp/WordPress/wp-content/uploads/2022/09/20220902.pdf

ちばぎん総研の調査レポートを読み解く

ちばぎん総研のレポートによると、調査は、「県内市町村の特性を定性面(住民アンケート)と定量面(就業率や出生率など統計データ)の両面から数値化・偏差値化(みえる化)」して順位づけしたものです。
分析は、①子育て②教育③医療④福祉⑤都市基盤⑥住環境⑦就業⑧観光⑨安全安心⑩環境・文化の10分野において、定性・定量両方で行われました。
県内の順位を見てみると、以下の通りになります。

【全体】総合2位(定性2位/定量7位)
①子育て 総合7位(定性9位/定量10位)
②教育 総合10位(定性5位/定量23位)
③医療 総合4位(定性3位/定量14位)
④福祉 総合3位(定性7位/定量1位)
⑤都市基盤 総合17位(定性6位/定量23位)
⑥住環境 総合12位(定性10位/定量21位)
⑦就業 総合2位(定性2位/定量4位)
⑧観光 総合2位(定性3位/定量3位)
⑨安全安心 総合22位(定性7位/定量50位)
⑩環境文化 総合4位(定性1位/定量28位)

全体的に定量よりも定性のほうが高くなっていることから、市民が実際の統計データよりも良いイメージを持っていることがわかります

ちばぎん総研は実際にレポート内で、データ分析のポイントとして「『環境文化』など多くの分野で両者の差は大きく、市民は市に実態より良いイメージを持っているといえる」と指摘し、「成田空港と成田山新勝寺という産業面と観光面、両方の核となる地域資源を有する自治体であるが、定量調査では県内 7 位で、実態は「突出して高い水準にある」とまではいえない状況にある。」と考察しています。(太字は筆者)

また、「更なる市の発展を目指して、国家戦略特区の指定に伴う学術・医療集積拠点の形成や成田公設地方卸売市場の移転・輸出拠点化等を推進。こうした市の主体的・積極的な取組みが、教育、医療、都市基盤等の分野での定量を大きく上回る高い定性評価につながり、総合評価が 2 位となった。」とあり、市民のイメージや期待値が、実態を大きく上回って評価を底上げしていることが読み取れます。

成田市民はこのレポート結果をどう捉えるべきか

このレポートを読んでいくと、成田市民は地元に愛着を感じ、それなりに満足している様子が伝わります。地元に愛着を感じ愛するところは、成田のいいところだと思っています。
市民の満足度を上げてきた実績は、小泉市政がこの16年間築き上げてきたものと評価されるべきことでしょう。

ただ一方、市民が愛着を持ち、新成田市場の輸出拠点化などの大型事業に期待している裏で、実態はその期待(幻想と言ってもいいと思う)に追いついていない事実が浮かび上がってきます。

①子育て②教育⑥住環境⑨安全安心といった項目で順位が高くないのも、子育て世代流出増加を裏付ける結果となっているように見えます。少なくとも、チラシ表で「子育てしにくい街になってしまったの?」の質問に「とんでもありません!」と答えられる状況にあるとは言い難い結果ではないかと、個人的には感じます。

チラシで示したランキングは、一見成田が素晴らしい街だということを表しているように見えますが、偏差値や順位が低い、子育てや都市基盤に関する項目はあげられておりません。

ランキングは、物事の事象を直感的に分かりやすく表してくれる便利な手法です。ただ、分かりやすく直感的に伝わるときほど「何を伝えようとしているのか」ではなく「何を言っていないか」という視点で見ると、また違った風景がそこに表れると思います。

ぱっと見の数字を見て安堵し、都合の悪い数字から目を逸らすのではなく、事実と向き合い、手を打っていくことが、次の市長には求められるのではないかと思った次第です。

P.S.
最後の最後まで、「住環境満足度県内1位」が見当たらなかったのですが、誰か教えてください。。。(⑥住環境の定量21位で、県内1位にはほど遠いと思うのは、僕だけ・・・?)

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