見出し画像

成田の街中で現職市長と市議の二連ポスターを目にした時、僕たちは何を思うべきか

はじめに

最近、成田市内のあちらこちらで、現職の小泉一成成田市長と、同じく現職の成田市議会議員が並んだ、緑色の看板を見かける。目にした方も多いのではないだろうか。

看板について周囲の人に訊ねてみると「確かに最近よく見るようになったけど、なんだろう?」「何かのキャンペーン?」「仲が良さそうで何より」「けしからん」などと、様々な声を聞く。

政治家の二連ポスター自体はさして珍しくないものの、一緒に写っているのが市議会議員だという点、そして何より、協力している市議の数に、筆者はある種の違和感を覚えた。確認できただけで、成田市議29名中、実に11名※もの議員が小泉市長と顔を連ねているのだ。
(※小高夕佳議員、藤崎勇一議員、伊達孝紀議員、鳥海直樹議員、星野慎太郎議員、鬼澤雅弘議員、神崎勝議員、海保茂喜議員、伊藤竹夫議員、神崎利一議員、石渡孝春議員)

一体、何が成田で起こっているのだろうか。

今日はこの看板が立てられた背景やその問題点について指摘しながら、成田の未来について考えてみたいと思う。

なぜ最近よく目にするようになったのか

緑の看板が立ち並ぶ背景には、12月25日におこなわれる成田市長選挙、さらに来春に控える統一地方選挙(成田市議会議員選挙)がある。

二連ポスター/上り旗を掲げて街角に立てば、市長にとっても市議にとっても、いち早く市民に顔を露出することができる、またとない機会だ。

16年ぶりに行われる市長選

現職の小泉市長は2007年(平成19年)に初当選、現在4期目だが、2期目(2010年)の選挙以降は対抗馬が出ず、無投票当選で市長の座についている。

今回も目立った対抗馬はおらず、順当に行けばこのまま無投票で小泉市長の5期目がスタートするはずが、現職成田市議である雨宮真吾氏が8月8日に出馬表明したことで状況が一変。12年ぶりに成田市長選挙が行われることになったのだ。

雨宮市議は現在44歳、2007年に当選後、4期連続トップ当選をはたし、出馬を表明するまで議長もつとめていた若手実力派。政策立案力と実行力、そして情報発信力に定評がある強敵だ。

雨宮氏の出馬表明会見以降、小泉陣営は慌ただしく動き始める。WEBサイトをリニューアルし、市議や県議との二連ポスターや立て看板、上り旗を作成し、YouTubeチャンネルや各種SNSにアカウントを開設。駅頭あいさつするなど、選挙をにらんだ活動を開始した。

二連ポスターの何が問題なのか

話を戻そう。市長と市議の二連ポスターについては、問題があるとの声も聞かれる。このポスターの何が問題なのだろうか。

それは一言で言えば、『二元代表制における、市長と議員の距離感』だ。

二元代表制とは

そもそも二元代表制とは何か。

首長と議会議員の両方を、有権者が直接選挙で選ぶ仕組み。どちらも民意の代表だが、互いに対立することがある。日本では都道府県・市区町村とも、地方自治はこの仕組みで運営されている。
デジタル大辞泉より

市長と市議は、成田市をよりよい街にしていくために話し合い、協力する関係だが、同時に、市議(会)は、市の仕事が市民のために正しく行われているか、計画どおり進んでいるか、お金が正しく使われているか等を監視・チェックする役割も担っている。

成田市ホームページ( https://www.city.narita.chiba.jp/gikai/page0164_00024.html )より

市の仕事を監視する役目を持つ市議と、市の仕事を計画して進める責任者である市長の距離が近づきすぎると、何が起こるか。

距離が近づき馴れ合いになれば、監視する目が緩くなり、結果的に市の仕事や予算は杜撰になる。考えたくはないが、結託して私利私欲を許す温床にもなり得る。

こうした事態を招かないためにも、また誤解を生まないためにも、市議と市長は適切な距離感を保つ必要があるのだ。

現職市長に多くの市議が肩入れする異様さ

こうした関係性を保つ必要性があるにもかかわらず、市民の目を憚らず市長と多くの市議の二連ポスターが市内のあちこちに掲出され、朝の成田駅に足を運べば、市議が入れ替わり立ち替わり、ポスターと同デザインの上り旗を掲げて小泉市長と共に通勤中の成田市民へ挨拶をしている。前述の市長のYouTubeを再生すれば、女性市議が司会を務める。こうした光景は、(少なくとも筆者には)どう考えても異様に映り、地方自治の二元代表制を軽視した行動に感じてしまう。

もちろん、違法性があるとは言えないし、個人としてどちらを応援するかは自由だ。応援する理由も、各々あるのだろう。
とはいえ、多くの市議がこぞってお揃いの二連ポスター/上り旗を作り、懸命に応援する姿をみると、「小泉市長であってほしい理由」または「雨宮市議に市長になってほしくない理由」があるのかと、勘繰らざるをえない。考えたくはないが、何らかの便宜があると疑われても仕方ないのではないか。

とある市議のブログにあった現職を応援する理由

小泉市長を応援する市議の一人、星野市議は、ブログで、プレーパーク常設化の約束をとりつけたことと、4年後の現千葉県議の小池まさあき氏へのバトンタッチを、その理由に挙げている。

プレーパーク常設化はともかく(ちなみに、雨宮氏も子育て世代への政策には力を入れており、プレーパーク常設に対しても前向きな姿勢を示している)、2つ目の理由は、政策ではなく完全に政局の話で、市民目線からは逸脱していると感じるのは、筆者だけではないはずだ。もし小池県議が4年後に立候補するのであれば、その時はがっぷり四つでその時の市長と正々堂々争えばよいと、個人的には思う。(さらに余談だが、もし仮に今回小池県議が出馬していたとしたら、おそらく筆者は小池県議に一票を投じていたと思う)

まとめ。看板を通して透けて見える、市長と市議の距離感。そして成田の未来。

ここまでつらつらとまとまりなく書き連ねてきたが、ここまで読んだ後、看板を見たあなたは、どう感じるだろうか。

私はこの看板を通して、市長と市議との間に、必要以上の馴れ合いの空気を感じた。変化を恐れ、現状にしがみつく空気を感じた。そして、その空気は巡り巡って、成田の未来を澱ませるのではないか、と案じている。

全体を通じて、小泉陣営を批判するような文章になってしまったように見えるが、小泉市長自体というより、私は、市長と市議の距離の近さに疑問を呈したつもりだ。

雨宮氏の出馬を機に、小泉市長は駅頭に立ち、SNSアカウントを開設し、YouTubeで配信を始めた。タウンミーティングを積極的に開き、市民との対話の場を増やした。理由はどうあれ、これは成田の未来にとっては、とても良いことだと思う。(選挙が終わっても続けてくれることを切に願う)

どちらが勝つかは、正直よくわからない。圧倒的に有利と言われる現職で、多くの市議を味方につけた小泉市長が当選しそうな気もするし、圧倒的な投票数で当選してきた実力と抜群の政策立案力・情報発信力で雨宮氏が当選しそうな気もする。どちらが市長になるにせよ、無投票で決まるより選挙のほうが絶対に良い方向になるし、これをきっかけに市政に対する市民の関心が高くなってほしいと思う。そして、欲を言えば、この記事も、考えるきっかけになれば嬉しいな、と思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?