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771ユーラシアを民主主義敵対者である中国共産党に併呑させるな

ロシアとウクライナの戦争ではどちらが勝つのか。そんなバカな設問する人がいまだにいる。世界平和の観点、世界の正義の観点、どこから見てもロシアに勝たせてはいけない。そういうことではないのか。となるとウクライナの勝利、ロシアの敗北しかないではないか。
そうならなかったら世界は暗黒になる。世界の普通の人は直感的にそう感じたからウクライナ支持の輪が広がった。そして民主主義国政府はその声に応えて支援を強化している。これは昨年2月末のロシアの攻勢に対して、ウクライナのゼレンスキー大統領が国民を鼓舞して首都を守り切った時点で確定されたことだ。
 
では戦後のロシアをどうする? これに関してアメリカの外交問題評議会CFR)が発行する権威ある雑誌『フォーリン・アフェアーズ』(Foreign Affairs)に著名ロシア人の論文が掲載された。ボクの考えと同じなので嬉しくなった。論文名は「Don’t Fear Putin’s Demise Victory for Ukraine, Democracy for Russia」で、著者はチェスの元世界チャンピオンであるガルリ・カスパロフ氏と政治犯罪者として英国に亡命中の大富豪ミハイル・ホドコルスキー氏。
 
その要点は以下のとおり。
戦争はロシアの敗北に終わり、プーチンは失脚してロシアは議会制の連邦共和国に移行する。ウクライナに1991当時の領土をすべて返還し、プーチンの侵略による損害を賠償し、ロシアの戦争犯罪者を裁く。
ここで重要なのがロシアという国家の維持。もしロシアが国家分裂するようなことがあれば、力の空白地帯になり、シベリアなどは中国のなすがままになってしまう。そこで広大なロシアの領土一体性を国際社会が保証するが、内政面では地方の分権性が強い連邦国家とする。これにより諸民族のロシアからの離反を防ぎ、中国の領土的な野望をくじくのだ。

中国がウラジオストクを含む沿海州の日本海沿いを領有するようなことをさせれば、東アジアの安定は一挙に崩れる。ロシアという国の保全はそのための安全弁なのだ。

ロシアの民主主義失敗には既視感がある。1991年のソ連崩壊時に民主主義化したはずだったが、いつのまにかプーチンという悪魔を復活させてしまった。その原因を二人は、その時点での西側諸国の介入不足であるとする。
第二次大戦後のドイツ、日本ではアメリカの介入で、徹底的に民主主義国家への体質改造が行われた。これと同じことを今回ロシアで行うべきであるとする。ボクの考えでは、改革が十分になるまで石油、天然ガスなどを国際社会が差し押さえる荒療治も必要だろう。ウクライナへの賠償資金を生み出すためにも必要なのだから。

ロシアが民主主義化されれば好戦性はなくなり、逆にNATO加盟も考えられ、その場合にNATOの仮想敵国は、世界に唯一残る侵略性の専制大国の中国になる。日本やオーストラリアもNATOに参加し、民主主義国を守る軍事同盟になるわけだ。
世界から専制と隷従を追放すると憲法に明記している日本にとっても仮想敵国は中国ということになるから、中国包囲の大同盟が結成される。新生ロシアも中央アジア諸国も参加する。文字どおりの民主主義国家群と圧制専制国との対決だ。これは領土争奪ではなく、価値観の闘いである。まさに日本国憲法が前文で描く国際社会像である。
 
この構想が成立せず、ロシアが分解して民族ごとの弱小国の乱立になれば、中国の望むところで、順に一つずつ併呑してしまうであろう。チベット、モンゴル、満洲、ウイグルでやったように。
 
二人の著者は問題の本質を正しく理解し、国としての一体性を堅持して民主化を図ろうとしていることだけは明らかだ。要するに、このロシア人は自分たちが正しく行動しなければ、中国がユーラシアで勢力を伸ばす可能性があることを明確に意識しているのだ。
勿論ロシアの将来、特に民主化の可能性について、楽観視は禁物だ。プーチン政権の専制が20年も続いた。この国の専制の歴史は長い。ロシアの民主化は簡単ではない。

何よりも国の地理的な図体が大きく、民族や文化も多様だ。統治するにも余程しっかりした価値体系と指導力が無ければ上手く行かないだろう。新たな連邦国家の懈怠のモデルになる。EUの方向性にとっても参考になるかもしれない。

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