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432米中サイバー戦争

中国は国家ぐるみでハッキングを仕掛けている。その結果、何が起きるだろうか。前回(431回)に続き、ピーター・ナヴァロ教授の出題である。『米中もし戦わば』(赤根洋子訳、文芸春秋、2016年)の第17章にある。
①民間企業から知的財産を盗んで自国の経済と軍事力を強化し、競合国の経済と軍事力を弱体化させる
②航空管制ネットワーク、配電網、銀行・金融システム、地下鉄といった敵国の重要なインフラを破壊、あるいは使用不能にする
③競合国と同等の軍備を保つため、平時に防衛機密を盗み出す
④戦時に、敵国の航空機、ミサイル、船舶、戦車を破壊したり、使用不能にしたり、行先を勝手に変えたりする
⑤目くらましと誤誘導によって、洗浄において戦略的・戦術的に優位に立つ。
⑥軍事通信を傍受または妨害する
⑦1から6のすべて

ナヴァロ教授によると、正解は⑦。つまり①から⑥のすべてが起きうるし、すでに進行している。
そもそも中国ではハッキングは違法ではなく、国家によって組織的に行われており、「ハッキングは、愛国教育とインターネットで育った若い世代にとって非常に魅力的な出世コースになっている」。
米国の最重要防衛機密がシステマチックに抜き去られていることが、米国の軍事技術優位を脅かしており、米国民のイライラは沸騰点に近づいている。
「クリントン政権下の1990年代、中国はアメリカのミサイルに関する膨大な量のデータを盗んだ。気がつくと突然、中国は事実上アメリカまで到達可能な大陸間弾道ミサイルを保有していた。ブッシュ政権時代、中国はF‐35などの情報を盗んだ。オバマ政権時代には、ドローンの情報を盗んだ」とのマイケル・オースリン(エンタープライズ研究所)の記述を引用した上で、ナヴァロ教授は次にように指摘する。
「中国政府は、いかなる種類の組織的サイバー攻撃にも関わってないと強硬に主張している。だが、かつて鄧小平が掲げたスローガン「実事求是」に倣(なら)い、事実に即して真相を探求すれば、事実はその正反対であることが明らかになる。これはもう、従来とはまったく違う種類の新しい戦争が米中間ですでに始まっているのだと言えよう」。

中国は空母、原子力潜水艦、ステルス戦闘機、核ミサイル、生物兵器、化学兵器など、戦争体制強化に余念がない。そうした正面での征服用の軍事力強化だけに注目していたのでは、差し迫っている重大な危機を見落とすことになる。

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