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515何を言うか、いつ言うか 総理!時機を失しては意味ありません

 1月17日に通常国会開会での岸田総理の施政方針演説。昨年10月8日、12月6日の2度行われた所信表明演説と基本的に同じ。同じ人の演説ですから、ある意味当然ですが、時間の経過があります。
 例えば覇道への道を突き進む中国に対する箇所。
① 10月の演説では「中国とは、安定的な関係を築いていくことが、両国、そして、地域及び国際社会のために重要です。普遍的価値を共有する国々とも連携しながら、中国に対して主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めると同時に、対話を続け、共通の諸課題について協力していきます。」
② 12月の演説では「中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、共通の課題には協力し、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します。」
③ そして今回1月の演説はこうです。「中国には、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めていきます。同時に、諸懸案も含めて、対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力し、本年が日中国交正常化五十周年であることも念頭に、建設的かつ安定的な関係の構築を目指します。」

意地の悪い教師がいて、生徒にこういう試験問題を出したらどうでしょう。
「国際関係は日々変動しており、現時点では世界中が中国の動向に注視している。わが国政府も適切果敢な外交を行っている。上述の①②③は岸田内閣総理大臣の2021年10月、12月そして2022年1月の国民向けの演説中の対中関係に関する部分である。この間の国際的な動向を踏まえ、①から③を古い順に並べよ。」
 正解する生徒は3分の1でしょうね。すべて同じですから、鉛筆を転がして(当てずっぽうで)答えを選ぶに違いないからです。
「中国とは安定的な関係を築きたい。そのためには中国にはっきり明確に主張し、注文することで、国際的普遍の道理に関している諸点について反省してもらい、行動を直してもらう決意である」。ボクを含む標準的国民の語学力からは、こういう解釈になります。
 そうすると「では何を言うのですか」「それはいつのタイミングになりますか」となるはずです。施政方針演説を受けての国会での議論に期待するところです。
「相手があることだし、頭ごなしに説教するのでは相手も不愉快になるかもしれない」。優しい岸田さんは思うのかもしれません。中国は好き勝手に各国批判をしており、その中で日本の内政事項に口出しするのが再三です。それでもわが国は発言を穏やかにしようとするのは、外交戦術の選択ですからお任せしましょう。ですが、これまでの3か月間に何を言ったのかが伝わってこないのはなぜでしょう。今はまだ言うべきことがないということは、よもやないはずです。
 国民の間で意見の集約が完璧にできていない事項については、「時期尚早」ということでしょうか。でも「言う」と国民に約束したのですから、しかるべきタイミングでしかるべきことを言わなければ、国民に対してウソを言ったことになります。日本の総理大臣が日本国民にウソを言うことは許されません。民主主義の否定です。
 すぐにも言ってほしいと考える具体的事例を一つだけ挙げましょう。もうすぐ冬季オリンピックです。雪がないと競技になりません。それで行われているのが人工的降雪。写真のように「スノーガン」と呼ばれる人工降雪機300基ほど使って人工的に雪を作っています。「雪がないのでオリンピックを止める」と今さら言えない事情はあるでしょう。問題は来年以降です。「この施設を使って一大冬季スポーツの拠点として、内外から人を呼び寄せるのだ」となることは、地球環境保全上望ましいことではないでしょう。
 地球の環境は思ったよりもぜい弱だから、気候変動につながることは避けようというのが、国際合意ではないでしょうか。それに近辺での環境悪化は、地球の自転との関係でわが国が大いに影響を蒙ることは、あのPM2.5などで身に染みています。
 前五輪担当大臣であった橋本聖子参議院議員などがオリンピックでわざわざ中国に出かけると報じられています。中国政府の要人との対談をするのでしょうから、人工雪は今回限りにして、自然雪による競技施設としてのみ活用することを主張し、先方に約束させてはいかがでしょうか。
 人工雪に頼ることは「グリーン」な大会を目指すという北京の宣言に反しますから、道理としても「言うべきこと」であると思います。専門家の意見として、「仏ストラスブール大学(University of Strasbourg)のカルメン・デヨング(Carmen de Jong)教授(地理学)は、水が少ない地域で大量の電力と資源を使って雪をつくることは「無責任」だと非難。それなら月や火星でも五輪を開催できると皮肉っている」などと報道されています。橋本議員はコロナ再流行にもかかわらず、駐日中国大使の孔鉉佑氏(こうげんゆう)さんとゴルフで交歓しています。緊密な関係のようですから、北京ではこういう発言をするから、中国もしっかりした返事をちょうだいねとあらかじめ打ち合わせできるはずです。中国外務省の報道官に、いつも青筋立てての外国被違反ではなく、「日本からのオリンピック来訪高官との打ち合わせにおいて人工降雪の環境影響について意見交換があり、今後、世界中において抑制することを確認し合った」とでも笑顔で説明させることになれば、岸田総理の「中国に対して言うべきことを言い、安定した関係を築く一歩にはなる」と考えます。
出典及び写真は下の報道を用いた。
北京五輪、「スノーガン」で大量造雪 環境への懸念も 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

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