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702妄想性障害者をはびこらせない 読後感想文岡田尊司『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』

 妄想性のパーソナリティ障害がいかに社会の害悪であるか。この障害の特徴は「人を心から信じることができない」ことにあり、とにかく厄介なのだ。
 著書から抜き出してみよう。「痴情がもつれて、殺人事件に至るような場合、このタイプの人物が関与していることが多い。境界性(パーソナリティ障害)や自己愛性(パーソナリティ障害)以上に、執拗なストーカーになる場合がある。」
 ということで一国の人々の運命、さらには国際平和を左右する政治リーダーの地位につけてはならないだけでなく、市民社会においても放任できない危険人物である。そして人口中の0.5%から2%の比率で発現するという。
 会社などで勤務していても大迷惑なことになる。引用を続ける。
妄想性パーソナリティ障害者が「部下を見るのは、部下の仕事ぶりではなく、どれだけ忠義に励んでいるかという点になる。部下が建設的な意見を述べようが、その採否は、意見の中身ではなく、自分の意向を汲んでいるかどうかで決まる。そうなると、やる気のある人材は去り、無能で、おべっか使いのイエスマンだけが残る。」
ところがこの種の妄想性パーソナリティ障害者が往々にして硬直した組織では出世していく。
妄想性のパーソナリティ障害者を「上司に持つと、部下は最悪である。生産的な改革や向上をではなく、欠点やアラ探しにばかりなってしまうのだ。部下も守りを固め、新しい試みに憶病になってしまう。人望がないにもかかわらず、減点法で採点すると、こういう人物は、ボロを出さないので、しぶとく出世したりする。」
そして「政治や経営の世界だけでなく、チェック機能を欠くあらゆる集団には、その危険がつきまとう。新興宗教やカルトも、教祖が妄想性パーソナリティ障害を有している場合が少なくない。教祖の妄想信念に引きずられ、集団自殺に至ったり、オウム真理教の事件のように、反社会的な暴挙に走ることもある。」
「心の中を打ち明けるような関係になったら最後、こじれたときに怖いのが、この妄想性パーソナリティ障害である。…そうした状況に立ち至ったら、下手に言い訳したり、彼と議論して説得しようなどとは思わない方がい。ましてや、戦おうなどとは思わないことだ。彼と互角の戦いができるのは、国家権力だけだ。
 プーチン、習近平、金正恩のように、国家権力を行使する立場に就かせてしまうと抑える力がないのだからどうしようもない。これが701回での結論だった。民主主義で報道の自由があれば国民の声で引きずりおろすことができるが、専制独裁の政治体制では、クーデターや暗殺しか悲劇を防止策はない。あるいは…
 スターリンや毛沢東は革命家だったわけだが、「妄想性パーソナリティの人は、反権力的な傾向を示すこともあるが、同時に、非常に権力志向的な一面を持っている。正反対に見える二つの傾向は、本来は同じ傾向の違った表現なのである。「革命」称するものが権力を手にすると、前権力移譲に、権力的になるのは、このためである。
 ということで「妄想性パーソナリティ障害の根本には、父親を求める気持ちがある。父親は強く、びくともしない存在でなければならない。当人の揺さぶりに対して、慌てることはもっともいけないことだ。毅然とした態度で、威厳を失わない接し方が大切である。謝罪するときも、弱さを見せる態度ではなく、堂々とした態度で誠実に謝ることだろう。逃げ腰になって背中を見せることは、危険である。当人を失望させるような振舞いは、逆に当人を逆上させる。
 
妄想性パーソナリティ障害者にどう立ち向かうべきか。
各方面で迷惑を撒き散らしているこの種の人物に対して、社会としての立ち向かい方を明らかにするべきだろう。心理学的分析が進んでるのだから、その知見を踏まえての国家としての対応策が必要だ。
また国際社会においてはそれ以上に毅然とした態度を貫くことだ。ウクライナのゼレンスキー大統領を世界の一般市民が広く支持するのは、彼がプーチンの妄想性パーソナリティ障害を正しく見抜き、正しい対応を貫いているからにほかならない。

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