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841 全社協会長に村木厚子さん 報酬受け取りを拒否

 社会福祉の総本山とも称される全国社会福祉協議会(全社協)が元厚生労働省事務次官の村木厚子さん(67)を会長に選出した。村木さんは報酬を辞退したという。

 村木さんは2009年の郵便不正事件で大阪地検特捜部に逮捕、起訴されたが、それが検察のでっち上げであったことが判明して、地権の関係幹部が逆に責任を問われることになったことでしられる。その埋め合わせもあったか、事務次官に昇任した。

 2015年に退官後は、津田塾大学客員教授、生活困窮者自立支援全国ネットワークの顧問などを勤めているとのことだ。

 ボクは出身省が違ったこともあり(彼女は旧労働省)、一面識もないのだが、人格的に立派な人であるとの話はよく聞く。その認識を深めたのが、全社協の報酬辞退である。それまでの歴代会長の前歴からして、高額報酬が準備されていたはずだ。それを断ったところに感心したわけだ。現職として地位を得た官僚は事務処理能力が高いはずだ。その経歴を社会のために生かすのは社会としても必要なことだ。だがそれに報酬を払うかは別問題。

 報酬は本来、その地位の責任にリンクしている。そのポストが重要であるならば、現役時並みかそれ以上の報酬額になるだろう。だがそうした人は現役時代に十分な報酬を受けている。しかも職務に熱心であればあるほど、いわゆる遊部に費やす時間はなく、報酬は銀行口座にたまっているものなのだ。したがって生活するうえでの稼ぎはさほど必要ない。

 村木さんも同じだろう。彼女の場合、夫君も同僚の有能な官僚であったから、ダブルでたまっていると考えてよい。為政者の生活レベルが一般庶民とかけ離れているのは、民主主義社会では望ましくない。

 しかしながら能力を貸せと回りが言ってくる。そこで「報酬辞退」ということになったのだろう。全社協会長は旧厚生省のいわゆる天下りポストである。天下りが世間で不人気なのは、当人がまじめに仕事をしないことと、不相応な高級を食むこと。村木さんは報酬を辞退した。仕事とぶりはこれからだが、彼女の性格からして本来の役割を十分に果たすはず。

 高級官僚OBが彼女に倣って、今後は基本的に報酬辞退で天下りポス地に着くようになれば、現役を含む官僚への評価は上がるだろう。

現役官僚の報酬が低いとのマスコミ論評が盛んだが、これはだれと比較するかによる。大マスコミ社員に比べればたしかに低いが、生活する上で苦労するレベルではない。ボクが若かったころは都市銀行が高給で知られていて、同級生だった者とはほぼ倍の差があった。

 それでもうらやましいとは思わなかった。彼らには付き合いや何やらで、他人には言えない支出があったようだし、こちらは土日も家か図書館で仕事に必要な調べ物をしていたから、平日にお昼のランチで贅沢する以外にはカネの使い道がなかったからだ。

 官舎だったから住宅ローンの返済もなかったし、家が狭いから大型の調度品や家電品も入らず買えなかった。駐車場がなければ車を買う気にもならない。合理的な仕組みになっていたのだ。それに退職金がけっこう多かった。これをならして毎月支給したと仮定すれば、公務員給与が改善した今日では、普通の大企業と給与格差はないのではないか。

 元に戻って村木さんの報酬辞退に戻ろう。公務員の処遇を改善せよと人事院は言い続けているが、自分たち自身の給与も低すぎると本気で思っているのだろうか。今の人事院総裁は大学教授らしいが、いかほどの報酬を得ているのだろう。はっきり言って村木さのような人物こそ人事院総裁にふさわしいのではないか。総裁が報酬返上しているのに諸君は何を言っているのかと一喝できる。多くの官僚は思いっきり仕事をしたいのであり、人事院の役割は不当な勤務圧力や不公平な昇進差別をさせないことのはずだ。高い給与が目的という者は公務員試験など受けないのだから。

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