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482 忘れ物廃棄はもったいない精神に反する

今朝の新聞に載っていた小さな記事。
― 東急線の駅や車内などの鉄道施設で拾得された忘れ物を、ブックオフを通じてリユース品として再流通させる取り組みを開始する。東急、東急電鉄、ブックオフグループホールディングス、ブックオフコーポレーションの4社が協力する。 ― 
忘れ物には傘、衣類、服飾雑貨、かばん類など、物品として使用できるものが少なくない。しかし今の時代、忘れ物を受け取りに来る人は多くない。鉄道会社は期限まで保管し、その後、産業廃棄物として手数料を支払って処分する。もったいない。そう考えれば、必要とする人に売ることで、鉄道会社の経費節減につながる。
「もったいない」の実践例だと思う。応用できる範囲は多そうだ。ただし、簡単でかつ経済的にも引き合う方法でなければ長続きしない。「使用済み書類の裏面をメモ帳に再利用しよう」とか、「外食用に箸やストローを持参しよう」などは、面倒くさくて、長続きしない。社会システム化できる方法を考え、後押しするのが、資源小国日本における政治のはずではないのか。
思いつくことを並べてみよう。
まず、食料の使い捨てを最小にする方法。食品、食材廃棄物の分別を推奨し、家庭ごみでは有料化、(飲食店などの)事業系ごみでは重量当たりの料金を環境省が音頭を取って引き上げる。最初はぶつぶつ言うだろうが、食べ残しを出さず、コンポストを備えてたい肥にするなどで費用負担増を避けることは可能だから、そのうちおさまる。なによりも追加の行政経費が不要だから、財政再建と矛盾しない。
次に大口は耐久消費財。電化製品、住設危機などの故障で「部品がないから新製品を買い替えよ」との商法に実質的ペナルティを貸す。価格は安いがすぐに壊れるのでは、長い目で見て「安物買いの銭失い」(たしか昔のカルタの読み札にあったと思う)。国産品で修理対応年数の長い期間を設定し、輸入安物商品との差別化を図る。返す刀で、耐久商品には購入時物品税を設定する。買い替えるたびに税がかかるのだから、修理しながら長持ちさせるインセンティブになるはずだ。冷蔵庫、エアコンなど、消費電力が大幅減になる新製品が開発されることがある。今の政策は、そうした商品購入者に公費でクーポン券を支給する補助が行われ、国や自治体の財政を痛めているが、まったくの無駄。単に新設する耐久商品購入税を税額控除すればよいのだ。対象品を国内工場生産品に限られるから、国内への工場回帰、雇用増にもつながる。

耐久消費財よりももっと大きな商品といえば住宅である。せっかくの建築物を20年や30年で壊すのは、「もったいない精神」に照らせば犯罪である。壊して建て替えるのではなく、リフォームして3世代、4世代と使い続ける。新たに家を必要とする新世帯は、土地ではなく、中古の家を買うように考えを改める。政策としては税の変更で対応できる。一つはローン減税の対象から新築住宅を対象から除外し、逆に築20年以上の住宅購入に限定する。減税でカネが浮くから購入時のリフォームが多くなり、新築住宅には手が出ない中間所得層でもいい家に住むことができる。
さらに固定資産税等における減価償却年数を伸ばす。固定資産税は建物の評価額に連動する。建物が古くなっても実用に見合った評価をして課税することで得られる効果は多い。まず自治体の税収増につながる。逆の視点でみれば、地主が空き家を放置せず、使わない建物を自ら除却するようになる。

「食」「住」に並ぶ「衣服」でも同じことが言える。最近の縫製はしっかりしており、3年やそこらで破れたりしない。「お下がりは恥ずかしくない、むしろ誇っていいのだ」との観念を広げればよいのだ。方法は簡単。新入生が制服を整えるのは当然だが、その際に「わが家はお下がりを調達できたので新品を買わない」と申し出た生徒については、教育委員会が制服代相当額を文具品クーポン券で支給するのだ。制服を買う生徒とお下がりを着る生徒では、プラスマイナスの差が出る。着る制服は同じで、一方はカネを払い、他方は同額クーポンをもらうのだから。クーポン費用に税金を投入する必要もない。教育委員会が制服代金への上乗せを設定して、業者を通して回収するのだ。「新品組9割、お下がり組1割」であれば上乗せは1割になるが、「新品組もお下がり組も5割」になれば制服価格は5割上乗せになる。品質の良いお下がり制服を調達できる者が大いに得をするシステムであるから、親同士、子ども同士、学年を超えた日頃の付き合いが深まることにつながる。
 
 皆で知恵を絞れば、「もったいない」精神を発揮できる分野は広がるだろう。共通するのは、よい物を大事に使うことで、経済ロスをなくし、家計も企業も豊かになろうということだ。

ガレージセールやフリーマーケットなどの運動を広げることも重要だ。これを行政がどのように支援するか。公金で補助するなど、下策の下策である。公共用地や建築物を使用時以外に提供するのが有効な方法。行政が推奨する意思が鮮明になるからだ。例えば東京のど真ん中の広大な空間として、国会議事堂の敷地がある。閉会中や週末で開会していない期間、天気が良い日にフリーマーケット用に提供する。地元に帰る予定がない議員が、ボランティアで会場整理を手伝い、いい服を見つけて購入して身につける。取材のテレビカメラの前で「古着だがセンスはどうだい?」とポーズを取る。政治を生活に近づけることになると思うなあ。

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