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715社会保障は平和あってこそ お花畑感覚では困る

 ロシアのプーチンが始めたウクライナへの征服戦争でにわかに高まったのが、世界の平和体制が崖っぷちにあること。
 遅ればせながら民主主義陣営の国々と協調路線で、国防体制の抜本強化と現実即応を目指すことになりました。
「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の3文書が改定され、これらに基づいて現実即応の体制を緊急展開すると岸田総理は言っています。にこやかな顔の裏には、わが国の存立と国民の生命を守る並々ならぬ決意があるものと思います。健康に留意して決意が揺らがないよう頑張ってください。
 ところが、こうしたことが決定された12月16日に、もう一つ国民生活に重大な影響を及ぼす報告書が岸田総理に提出されました。政府の全世代型社会保障構築会議(座長:清家篤氏)がまとめた報告書です。
 少子高齢化によって制度が崩壊しないよう、「少子化対策の充実を強調し、経済的支援など子育て世代を全面的に支える姿勢」を打ち出しています。出産時に支給される「出産育児一時金」を50万円に引き上げ、児童手当を拡充し、妊娠時から切れ目なく支援するとのことです。
 報告書は「少子化・人口減少の進行は、経済社会を「縮小スパイラル」に突入させる。国の存続にかかわる問題」としています。まったくそのとおりです。ですが「よくできた報告書である」と評価する国民がいったい何人いるでしょうか。
 第一は時期です。少子高齢化のインパクトが指摘され始めてから何十年も経ちます。そんなことはみんな分かっている。重要なのは何をするのか。これまで小出しの政策の繰り返しであり、財政投入しても低出生率は回復していません。なぜこれまで効果がなかったのか、その分析をしないで、今回さらにバラマキを繰り返そうというのは最悪。国民経済弱体化と国家財政の破綻という最悪のシナリオを国民は肌で感じています。
 以上が第一ですが、第二はもっと深刻な問題点です。この「全世代型社会保障像」を描いた人たちは戦争の事態をまったく想定していない。外国からの戦略を受けるはずがないと信じているのです。ですからそうした緊急事態になったときに医療をどうする、年金をどうするといったことっが一文字も書かれていない。
 戦争に巻き込まれることはないから社会保障制度はこれまでどおり平時思考でいいのだというのであれば、一つの見識です。その場合。なぜ戦争に巻き込まれることがないのかの根拠を示すべきです。国防文書では国防体制を急速かつ抜本的に拡充しなければ、プーチン、習近平、金正恩の侵略企図を砕けない。しかし国防財源の目途さえ立っていないと言っています。
 国が破れれば社会保障など吹っ飛んでしまう。であれば社会保障施策の面でどうするのか。それが現実です。不都合、望ましくない事態は起きないという無責任は困ります。
 会議メンバーの返答はきっとこうでしょう。「自分たちは社会保障の話をしたのであって、平和の問題は専門外」。違うでしょう。戦争は困る。これが国民の声です。それを避けるためにどうするか。国防力か外交力かという議論がかつてはありました。今回。国防力重視に国策がはっきり切り替わりました。そうした状況変化を踏まえない空虚な報告書は国民に誤った認識をもたらし、有害です。
「情勢変化を踏まえて書き直せ」。岸田総理の叱責の言葉を国民は待っています。

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