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550東大卒業生は何人必要 入学者が学力基準を満たしているか

わが国の高等教育機関の最高峰は東京大学。その前期日程合格発表があった(3月10日)。気になったのが2点。
一つは入学定員が3千人規模で団塊世代の受験当時と変わっていないこと。同一年代の人数が半減しているにもかかわらず、定員が削減されていない。今も定員いっぱいの人数を合格させている。入学生の地頭は、最高峰の大学にふさわしい高度な授業に対応できるレベルを維持しているのだろうか。
二つはこれと関連するが、合格者の学力水準。昨年との比較を東京大学新聞が行っている。合格最低点は文Ⅰ302.6点(前年より▼32.2点)、文Ⅱ306.1点(▼31.8点)、文Ⅲ305.4点(▼31.2点)、理Ⅰ303.2点(▼30.0点)、理Ⅱ287.4点(▼26.9点)、理Ⅲ347.5点(▼28.2点)。下落率がきわめて大きい。
別の資料にアジア大学ランキングがある。イギリスの高等教育専門誌「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」がまとめている。

https://japanuniversityrankings.jp/topics/00164/

 それによるとアジアでのベスト20位では、わが国は東京大学7位、京都大学12位のみ。1位精華大学、2位北京大学でともに中国。3位シンガポール国立大学の順になる。国別では中国7大学、香港4大学、韓国5大学、シンガポール2大学。
アジアにおいてさえ、日本の大学の評価はここまで低下しており、さらに年々順位を下げているとのことだ。逆に中国は上位に入る大学数が年々増えている。
こうした事実はどの程度、国民に知られているのだろうか。

アジアの大学ランキング2021

ちなみにベスト100位にまで拡大したらどうなっているか。今のところ日本は14大学が入り最多である。しかしながら総じて順位を下げており、やがてインドなどの大学と大幅に入れ替わるものと見られている。
先般政府は留学生の入国を緩和する方針を示した。日本に留学したいアジアの学生への配慮だという。心配なのは、日本の大学に諸国の優秀な学生を引き付ける教育面での魅力がほんとうにあるのか、そして今後も維持できるのかという点だ。
 技能実習生制度がその名目とは違って、外国人低賃金労働力の受け入れ手段となっていて、賃金レベルの引き下げとわが国の若者の働く場を狭めていることは公然の事実である。同じく留学生についてもアルバイト規制が緩く、学びに来ているのか就労賃金目当てに来ているのか、疑問の余地ある者が少なくないとされている。留学生なのか、就労者なのか。
 自校の存在意義はなにかを各大学が真剣に考え直すべきだろう。東京大学の場合、アジアでの最高峰が当然であり、アメリカやヨーロッパを含めてもベストスリーを争うようでなければ恥ずかしいのではないか。

入学定員はあくまでも受入れキャパシティから割り出した上限数。レベル以上の受験生が多ければ競争試験になる。到達者が少なければ定員が余っていても入学させない。そうでなければ初期の教育目的を達成できない。
高校までの授業が充実し、生徒の学力が向上してくれば東京大学の入学定員は多くてよいが、昨今のようにわが国の中等教育の達成度に疑問がつく状態においては入学生のレベルを維持するため、入学定員を減らすべきだ。安易な合格基準引き下げは、長期的に東京大学の価値をさらに下げてしまう。


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