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497 皇統を絶やさないための方策は難しくない

― 安定的な皇位継承について議論する、政府の有識者会議は、皇族の数を確保するため、女性皇族が結婚後も皇室に残る案などを盛り込んだ、最終報告書を岸田総理大臣に提出しました。―
 というニュースが数日前に流れたが、これで皇室の将来を安泰と感じた国民は一人もいないだろう。皇室は連綿と男系の世襲でつながっている。これからも日本国民統合の象徴として輝き続けなければならない。存続すべきは皇位だが、生身の人間には寿命があるから、代替わりが円滑に行われ続けなければならない。皇室典範2条1項は継承順を「皇長子」から「皇伯叔父及びその子孫」まで全7号を列記する。だが子ども二人の標準では機能しなくなる恐れが高い。皇位の危機は少子化にあるのだ。
 各世代が男子、女子一人ずつを産めば、計算上は連綿と縦に継承が続く。しかしそれはタヌキの皮算用。代々一男一女で続いてきたが、ある代の天皇陛下の子が娘二人だった場合、陛下にはおばさんはいあるが伯父さんはいないので「皇伯叔父及びその子孫」もいないことになるのだ。現在の令和天皇では、皇兄弟である秋篠宮(あきしののみや)とその男子である悠(ひさ)仁(ひと)親王(6号)のほかに、皇叔父(平成天皇の弟)である常陸宮(ひたちのみや)(7号)がいらっしゃるが、常陸宮はご高齢で男子がいない。
皇室典範の同条2項には「前項各号の皇族がいないときは,皇位は、それ以上で、最近親の系統の皇族に、これを伝える」とある。しかしこれに該当する皇族はいない。戦後すぐの1947年に、賀陽宮(かやのみや)、閑院宮(かんいんのみや)、久邇宮(くにのみや)、山(やま)階宮(しなのみや)、竹(たけ)田宮(だのみや)、朝香宮(あさかのみや)、東久邇宮(ひがしくにのみや)、東伏見宮(ひがしふしのみみや)、伏見宮(ふしみのみや)、北白川宮(きたしらかわのみや)、梨(なし)本宮(もとのみや)の各皇族を廃止してしまったからだ。そこでこれら皇族の復活が求められるわけだが、少子化でうち半数ほどは現在までに男系が絶えているとされる。しかも血縁関係は代を経てそうとうに隔たっている。
 先に挙げた例で分かるように、標準的に4人の子(男子二人女子二人)生まれなければ、皇室典範2条1項の継承は続かないのだ。1947年時点でも「皇族が少なくなることで皇位継承に支障が生じるのではないか」との心配があったが、片山哲皇室会議議長は、秩父宮(ちちぶのみや)、高松宮(たかまつのみや)、三笠宮(みかさのみや)(昭和天皇の兄弟。いずれもその後男系が絶えている)や常陸宮(前術)がいることから、「男子皇族の数から皇位継承の点で不安が存しないと信ずる次第であります」と述べているが、この当時はベビーブームの最盛期だった。
 以上を踏まえると、皇統が近い皇族を増やすことが必要だと分かる。そしてそれらの皇族が多産であることが求められる。では多産であるための必要条件はなにか。子どもがたくさんいた方が楽しくてよいという当人たちの意識が前提であることは当然だが、同じく、あるいはそれ以上に経済的な余裕が重要だ。皇族の場合、どんな商売をしてもいいわけにはいかない。あくせくしない生活基盤があることが重要なのだ。ではそのための方法は? それが国民とその代理人である為政者が考えるべきと。
 由緒ある資産家がそれを継承する方法として、娘に血統正しい血筋の若者を迎え入れる方法は昔から知られている。実態は婿養子だが、形式は娘が嫁入りしたことにする。そうすれば若者は自身の身分を失わず、資産、経済力を得ることができるのだ。家計に不安がなければ、子どもを4人ほどは持とうかと考えるであろうし、それが国民の出産動向に反映されるかもしれないという明るい展望を期待できよう。
国民の気がかりは外戚(妻の父親など)による介入弊害への懸念であろう。そこで婚姻によりかなりの資産増があった皇族は、2代ほどは皇位継承権がないものとし、代替わりによって外戚との親族関係が希薄になるのを待つ仕組みを同時に導入する。天皇家と親戚になることを悪用する意図を隠し持つ者を排除するためだ。そのためにも皇族家族数は10以上必要だろう。
 以上を正式に認めれば、娘のためにもそれがいいと考える資産家が多数現れると思われる。皇位継承適格を持つ男系皇族を絶やさない方法は、案ずるより産むが易し。皇族を増やすのに国費などは不要。認識と覚悟一つで解決するのではないかと思える。
 2条1項以外の親族範囲の皇族に継承させる(2条2項)や皇族を断絶させないための養子禁止(9条)の解除などはあくまでも非常手段。そうしたことにならないような提案をするのでなければ、本質的対応策としてはほとんど意味がない。

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