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701プーチンがいる限り悲劇は終わらない 読後感想文岡田尊司『パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか』

 生きづらさを強調する声が大きい。その原因として著者は「パーソナリティ障害」を指摘する。現代人全般が抱えている傷つきやすさや空虚さなどはパーソナリティ障害のまん延、浸透に起因するのであり、この障害の特性を理解することで問題の本質が見えてくるとする。
 そういうことだったのかと、膝を打つ記述が続く。一気に読んだ。パーソナリティは個性として尊重されるべしととされる。みんな違ってみんないい。ただしそれには各人のパーソナリティを理解すること、また少々行き過ぎて周囲とうまく折り合っていけない者に“正しく”“行き過ぎない”ように手を差し伸べることが必要だ。そして誤った行動を規制する国家の規範が正常に作動していることが前提である。
 
 このあたりは福祉事業の基本的な部分だから異論はないだろう。
 著者によればパーソナリティ障害には多様な種類がある。耳にしたことがあるものだけでも「境界性パーソナリティ障害」「自己愛性パーソナリティ障害」「演技性パーソナリティ障害」「反社会性パーソナリティ障害」「妄想性パーソナリティ障害」「失調型パーソナリティ障害」「回避性パーソナリティ障害」「依存性パーソナリティ障害」「強迫性パーソナリティ障害」…。
 パーソナリティ障害者に共通するのは「思い通りにならない他者を、別の意思と感情を持った存在として認められない」ことであると著者。
 そうした者をいかに社会の側が受け入れていくか。基本はそういうことなのだが、人類の存続といった大きな視野でとらえた場合にもっとも難儀なのは「妄想性パーソナリティ障害」である。
 
 本から関係個所をピックアップしてみよう。「妄想性パーソナリティ障害の人は、
人を心から信じることができない。このタイプの人は、親密な関係において、常に裏切られるのではないかという思いに駆られる」とあり、特定の政治リーダーの顔を浮かんでこないだろうか。「彼らは人との信頼関係や愛情を信じられないため、人を権力や力で支配しようとする。この(妄想性)パーソナリティ障害に人は、権謀術数を操ることに強い興味を持つ」。具体例として「スターリンやヒトラーが、徹底して自分の過去を改竄(かいざん)したり、封印したことはよく知られているが、それは、妄想性パーソナリティ障害にありがちな特徴でもある」。
 このことから筆者は政治リーダーの資質と妄想性パーソナリティ障害が折り合わないことを強調する。
「民主主義というものが、いろいろ欠点を宿しながらも、非常に優れている一つの点は、権力者の妄想性パーソナリティに対して、チェック機能を果たすということである」
「妄想性パーソナリティ障害は、古代ローマの昔から、独裁者に多い病でもある。絶対権力を手にした万能感と、いつ裏切り者によって権力の座を奪われるかもしれないという不安が、独裁者の心を蝕んでいく。ネロのような古代ローマの帝王から、ロベスピエール、クロムウェルといった恐怖政治家、さらには、最近のスターリンやフセインといった独裁者まで、共通するパーソナリティの構造が認められるのである。秘密警察の暗躍や裏切り者の粛清は、独裁者の死か失脚まで続く」
こうした独裁者の跋扈(ばっこ)を防ぐ手段として「表現の自由、報道の自由は、権力者の妄想性パーソナリティに対して、破壊的な作用を及ぼす。内情や秘密が暴露されることは、情報統制によって神話を生み、求心力を維持することを困難にするのだ」
 
現代の国際社会を不安定にしている者と言えば、プーチン、習近平、金正恩などとなるが、共通するのは強度の「妄想性パーソナリティ障害者」の疑いが濃厚なこと。そして彼らが支配する社会では、民意を踏まえた政権交代ができない。これが世界の平和を脅かしている根本原因。国際社会が共同して対処すべきことが何かは明らかなことである。
プーチンのメンツの尊重とか、ウイグル人ジェノサイドは中国の内政問題であるなどと言っている場合ではない。

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