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湯替え温泉旅館主人を死なせたのはだれか

大丸別荘という老舗温泉旅館が一躍有名になったのは、週に1回のお湯の入れ替えが県条例で義務づけられているのに、それを怠っていたことが判明したこと。そしてレジオネラ菌が基準値の2倍であったことも分かった。
それで連日、ニュースで取り上げられ、ワイドショーではニュースタレントの面々が、「非常識な経営者」「旅館を経営する資格なし」「旅館の倒産は必然」など、極悪人扱いで罵倒していた。どうしてそこまで口汚く非難できるのか、違和感を持つ人が多かったと思う。だが、そういう声をマスコミは報じない。
 あまりに叩かれるのを苦にしたか、警察の捜査(公衆浴場法の虚偽報告容疑)が入ったので前途を悲観したか、3月12日に自死したようだと報じられている。
 どうしてこういうことになるのだろうか。騒動の初期段階、当然、社長が存命中、ネットニュースに書き込むがあふれていた際、ボクは次のように書き込みをした。
「事業者が法令を守るのは当然だが、この旅館が問題提起をしたことを評価してもよいのではないか。基準違反というが、健康被害は報道されていない。行政の基準値は科学的安全性にさらに安全度を加味して必要以上に厳しくなっているのが通例。基準値は絶対のものではなく、実施状況を見て必要あれば見直すべきもの。温泉のお湯替え回数やレジオネラ検出基準に見直す点がないか、行政として再考する必要があるのか否かを考える契機となるべきものだ」
 法治国家であるから「悪法も法なり」で、法の遵守は当然。この旅館が行政法規違反で処分されるのは当然であり、虚偽報告など論外である。こうした悪質性を許してはならない。
 しかし民主主義社会であることを忘れてはならない。法は絶えず、正当性の評価を受けていなければならない。この温泉旅館社長が、公衆浴場法の基準値について意見主張があるのであれば、それを発言する権利も認められなければならない。しかるにマスコミやニュースタレントなどは、問答無用でこの社長を核心的極悪人のように決めつけ、発言を封じて正義感面(つら)をしている。記者会見も糾弾に終始していた。社会がそうした風潮でいいのか。
安全基準はきびしければそれでよいというものではない。国民が廉価に温泉を楽しめることも重要なのだ。その兼ね合いが実際の基準となっている。民主的行政においては、恒久的に変更不可という絶対基準はないのである。

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