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761年金不払い国会議員がいた

 中条きよしさんという歌手が参院議員になっていました。昨年夏の参院選で日本維新の会公認として立候補したのですって。知りませんでした。歌手が政治家になっていけないことはありません。民主主義の国ですもの。でも国民の代表として選ばれたからには、国民のための政策や立法作業に勤しんでもらわなければ。わが国の国会議員は他の民主主義国よりもはるかに高額の歳費(報酬)が支払われているのですから。
 さて中条議員について判明したことは、国民年金保険料を支払っていなかったこと。週刊文春が記事にしています。その額750万円に上るとのことです。金額にびっくりします。保険料納付義務は20歳からですから、ほぼ全期間滞納を続けたということでしょうか。
 滞納が明るみになった経緯は定かではありませんが、指摘した年金機構の職員に対して「年間70万円ほどの基礎年金など魅力がないから保険料を払うつもりはない」と反論したとのこと。公的年金を損得で判断するとはどういうことなのでしょう。
 社会保険には加入義務があります。保険料納付は国民の義務。国法違反は犯罪です。これを否定する発言ですから、「中条議員はすべての国民に老後の年金を保障する皆年金制度を廃止しようと主張しているのではないか」と期待した人もいるかもしれませんね。わが国では国会が唯一の立法機関。そして中条議員はそのメンバーなのですから。ひょっとして彼に投票した有権者は「国民年金廃止論者」だったのかも。でもそれは方法論的に違っています。廃止論は政策ですから論じるのは自由。ただし廃止になるまでは、有効な法律には従わなければなりません。
 国会議員が国民年金保険料を支払っていなかったのは中条議員が初めてではありません。2004年頃の「だんご兄弟騒動」を覚えているでしょうか。自民党の福田康夫官房長官は保険料未納であると攻撃した民主党の菅直人議員も未納であったというマンガみたいな事件です。未納議員がゾロゾロ判明してウヤムヤになってしまいました。そして先の二人はいずれも後に内閣総理大臣になりました。結果だけ見れば「国民年金保険料不払いつながり」です。政治家として大成するには国法を破り続ける度胸が必要であり、それには罰則が緩い国民年金法が最適と彼らが考えたとすれば知能犯ですね。
 中条議員が真似たのかどうか。
 いずれにしても悪い見本があるのは事実。そしてこうした確信犯的滞納に厳しく対処しなかったことで、当時の社会保険庁は廃止にされてしまいました。悪が勝ち、正論は通らなくなったと言えるでしょう。
 国法が踏み躙られているのに国民世論も動きませんでした。ならば国民年金法を廃止して国民の保険料納付義務を廃止するのかといえば、それも煮え切らない。その結果、普通の国民は保険料を払うが、力がある者は滞納して開き直る。無法が大手を振っています。
 わが国が民主主義、国民主権であるならばどうすべきなのか。違法を許さないこと。遡ってでも正さなければなりません。2004年に暦を戻し、福田康夫、菅直人といった未納が明らかである国会議員には遡ってでも議員資格を剥奪することです。永年議員表彰資格の失格などしか効果は及ばないかもしれませんが、法治国家としての格式維持が必要です。
 その上で今後の対応です。全国民にもれなく義務を課す法律として国民年金法は象徴的でもあります。その義務違反を逃さないためにも罰則は厳しくなければなりません。例えば徴兵逃れ(多くの民主主義国では徴兵制が存在しています)では重罰は必至です。社会連帯破壊につながる国民年金保険料逃れは罪の重さにおいて匹敵します。現行の国民年金法では保険料滞納には延滞加算がありますが、これを罰金に切り替えることが考えられます。例えば滞納者が催促を受けても納付しなかった場合、その後に徴収する保険料額の3倍相当額を罰金として追加して取り立てるのです。
 中条議員の場合、滞納額が750万円とのことですから、これに加えて罰金を2250万円。合計で3000万円です。国民皆年金ですから、これによって中条議員も他の国民と同額の年金受給権を得ます。でもご当人は受給辞退されるでしょうね。「議員に二言はないでしょうから」。権利はあっても受け取るのは義務ではありません。国民年金法にはそのための規定も置かれています。
 言いたいことは、制度は簡潔に。運用は公平に。無法者には応分の処罰を

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