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797出生数80万人割れ 社会保障の観点で見れば

出生数80万人割れ。ベビーブーム時期に比べれば3分の1以下。たしかにたいへんだ。騒ぐのは分かる。
では子どもが減るとなにが困るのか。その本質がどこかに行っていないか。
 
社会として困るのは何か。それを分析しないで、カネのバラマキを倍増せよとは。利権屋を太らせるだけの便乗商法そのものではないか。
オリンピックに群がった悪徳電通OBなどが起訴されているが、それとどこが違うのか。これでわが国では二度とオリンピックは招致できない事態になっている。
 
少子化がいいことだと言うつもりはない。子どもが多いのはいいに決まっている。
ただし政策を論じるならば、特に公費を投ずるならば、効果を含めて分析的に論じる必要があると言いたいのだ。
 
例えば労働力が足りなくなるという問題について。人口知能やロボットに置き換えれられる分野がけっこうあるのではないか。経済誌では「AIに負けて30年後になくなる職業」などという特集が定期的に組まれている。中国や韓国をはじめ多くの国では、今でも大学出ても就職できないと騒いでいる。ほんとうに日本の将来は労働力不足になるのか。逆の可能性はないのか。
 
そうした中、社会保障の財源不足と少子化を絡(から)める声がある。これもどの程度まじめな議論なのか。
まず医療保険では人口増減は関係ない。生きている限り医療を受けるが、保険料も生きている限り負担する。老人医療の効率化などの問題はあるが、給付事項の調整にすぎない。
 
大きな問題は「世代間扶養」になっている年金制度。現役が保険料を負担し、引退世代が受け取る。世代間の人口比率が根幹問題。
少子化で現役比率が減らないように引退時期を遅らせればいいが、それにも限界がある。ボクなど基礎年金は75歳から支給でいいと思うが、短命家系の人は大反対だろう。よってここでは支給開始年齢は触(さわ)らない前提で考える。
支給年齢を遅らせる以外にも少子化に対応する方法はある。例えば生活保護。受給者の半分以上が高齢者。つまり十分な年金を受け取れず、まあ現役時代に資産形成に失敗した人だ。
少子化はこうした人を減らすチャンスでもある。職業余剰社会になるはずだから、能力と意志さえあれば稼ぐ機会があるということだ。
そこで学業機会、能力向上機会をふんだんに用意する。それによってよほど運がよくなかった人を除けば、老後に生活保護を受けることがないように持って行くのだ。
 
簡単な計算をしてみよう。将来の生活保護支給総額を半減すれば年間2兆円の財源が浮く。国民年金の年間保険料を20万円として割り算すると1000万人分。年金保険料の納付期間40年で割ると25万人。つまり25万人分の出生数に相当する。
もちろんこれはラフな計算である。基礎年金には国庫負担があるという点を考慮すれば、少子化緩和効果は半分の12.5万人になる。
 
少子化対策に限らず、国家の政策は国民の幸福を増やすためにある。その場合の国民には当然、将来の国民も含まれる。少子化(=増子化)対策の目的は何か。そのことすら明確にしないことをもって岸田総理は“異次元”と言っているのだろかと思ってしまう。


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