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582電力消費量は減っている 今がエネルギー戦略上のチャンス

今年の冬は電力供給が綱渡りで、大型停電(ブラックアウト)になるかもしれないと戦々恐々だった。この冬のわが町内では、ちょっとした地震で停電になった。原因はどうであれ、電気なしの暮らしは耐えられない。遊びに来ていた孫は懐中電灯と蠟燭(ろうそく)で興奮していたが、短時間であればこそ。冷蔵庫内の食品が傷む長時間になると、さすがに冷静沈着な国民も騒ぎ出すだろう。
 また喉元過ぎれば忘れてしまう国民性。次の冬への対策はできているのだろうか。これまでに比べ、ロシアへの経済制裁に伴う、石油、天然ガスの逼迫(ひっぱく)、価格高騰が加わる。1年も準備期間があるのだから、無策のままでブラックアウトになったら政治責任である。
 
 娘の家に行ったときのこと。転がしてあった孫の学習本をパラパラ見ていて“発見”をした。ボクはそれまで気づいていなかったが、近年、電力消費量は減っているのだ。2010年には1兆kwhを超えていたが、その後減少に向かい、2021年は8000憶kwh台になっていた。電力消費量は右肩上がりに増えると思っていたボクは驚いた。注釈で「節電、省エネ化が進んだため」とあった。クイズ番組で出題したら間違う人続出だろう。テレビ局に教えてあげたい。
 家に帰ってネットで検索したが、電力消費統計は2019年分までしか見つからなかった。グラフで見るように、一貫して伸びていたのが、たしかに2010年を境に減り始めている。2020年以後はもっと減っているということだろう。
電力を使う機器は増えるが、省エネ技術で単位消費量が減っている。身近でもLED電球などで技術革新のありがたさを感じることができる。

発電量と内訳の推移

電力源に関してわが国は至って脆弱(ぜいじゃく)。現在の技術では、電力は大量貯留できない。発電量が足りなくなれば他地域から緊急送電してもらうことになるが、島国であるため融通は国内でしかできない。大量の高圧電力を海中ケーブルで送電することはできないのだ。
 発電タービンを回す動力源の内訳は化石燃料系が最大で、LNG(天然ガス)37.1%、石炭31.8%、石油6.8%になっており、そのほぼ全量が輸入である。プーチンの戦争でこの確保に黄色信号に出ている。量の確保以上に重大なのが、これらの価格高騰。民主主義国が経済制裁でロシア産から他国に輸入先を変えても、中国やインドが買えば制裁は尻抜けで効果なし。特にインドはロシアからの輸入量を何倍にも増やしている。ロシアが降参した後は、インドが制裁対象になるだろうと警告する必要があろう。
 
 ところで電力必要量が増えないのだとしたら、極度に悲観することはない。民主主義国側は数値目標を掲げて、ロシア産の電力源を干し上げる。日本の場合は簡単だ。原子発電所の休止を解除する。それだけで化石燃料輸入量を3分の1ほど減らせる。地球温暖化防止の観点からも原子力発電は有効とされているのだから、休止解除に加えて、新規原発も急ぐべきだ。
先行きの廃炉費用まで含めれば、原子力発電は結果的に割高の要素があるのだが、民主主義の大義を守るコストと割り切ることだと思う。今はロシアへの制裁とブラックアウト防止を両立することだ。総理が本気で論戦を要求すれば、野党党首も説得ある反論はできないだろう。
 
 返す刀で温暖化防止に例外を作らない。中国やインドなどに認めてきた低レベル石炭の使用特例を無効にすることだ。侵略、殺戮をしているロシアを非難しない国に、それに加えて、地球環境悪化の面でも協調の例外を認めるわけにはいかない。
●平和人権に敵対しているのはロシア。それへの制裁に加わらないことは大問題。
●地球環境の面で悪いのは低質石炭を使用すること。その使用抑制をしないのは大問題。
 各国の事情で例外措置を認めることはあっても、多くてどちらか一つ。二つとも例外にしてくれというのは通りません。わが国は先頭に立って国連総会でそういう主張をしてみてはどうか。インドや中国などの国連大使の演説が見ものだと思うが。

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