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663コロナの自己判定

 体調がおかしい。起きたら熱っぽいし、体が重い。
「コロナではないの?」。家人は冗談っぽく言ったが、喉もいがらっぽい。かといって医院に行くほどの症状ではない。
 さてどうしよう。街のあちこちに無料PCR検査センターがあるのは知っている。陰性証明が欲しい人はどうぞというわけだが、そうした証明が必要な事情にはない。
 アメリカ帰りの娘が置いて行ったPCR検査キットを思い出した。国内でも売っている。アマゾンでは2千円ほどの表示があった。このキット、かの国では公的施設などに山積み(?)されていて、いくらでも持ち帰っていいらしい。「一つあげるわ」と土産の代替にくれたものだ。
 説明書には図解もあるから大丈夫。指示通りに同封の綿棒で左右の鼻の孔をグリグリグリと3回こすり、試薬にギュッと絞り出す。その液を検体皿に3滴垂らして15分待つ。二本の線が引かれており、左だけ色づきになれば「陰性」。右も色づけば「陽性」。やってみれば雑作もない。問題は結果。
 左はくっきりと色がついているが、右の線は見えない。つまり「陰性」。よかった。とたんに熱っぽさも、喉のイガイガ感も消え去った。
「私たちは感染しないわよ。これまでインフルエンザにも罹ったことがないのだから」と家人。根拠レスだが、そう言われると安心する。暗示効果はテキメンだ。
 ところでこの結果、どう使えばいいのだろう。保健所は陽性報告であれば聞くだろうが、陰性報告など忙しいのに業務妨害だと怒り出すだろう。
 では検査キットで自己判定して「陽性」だった人は自発的に保健所に報告するだろうか。高熱等の症状があれば医院に行き、そこから報告がなされよう。だが、無症状や軽症で「外出しなければ社会に迷惑をかけないだろう」と自主隔離を選択した人は、わざわざ保健所に電話報告などしないだろう。検査キット購入時の氏名登録もないようだし。
 
 1年前、娘家族が一時帰国でアメリカを往復したときは民間の検査機関で「陰性証明」を求めたが、一人1回分が4万円近かった。そこでの検査キットはアマゾンや薬局で売られている自己判定用のものとは違う特殊なものだったのだろうか。
 都などが設置している無料PCR検査センターでの使用キットも市販のとは違う高度なもので被験者自身では操作できないものなのだろうか。
 精度や方法に大きな違いがないのであれば、PCR検査キットを無料配布することにして引き換えに指名登録を義務づける。そして結果を期日内に保健所に報告させる。そうすれば無料検査センターは要らなくなって公費は節約され、荒利を稼ぐよからぬ民間検査センターは淘汰されよう。

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