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754聴く力は日本人向き この特技を活かした岸田外交を

 ベストセラー本になった『人は話し方が9割』の著者である永松茂久さんが一昨年末(2021年12月)に出版したのが『人は聞き方が9割』。
「目の前に人がいると『なにか話さないと』とつい焦ってしまう、、、」
「自分ばかりが話しすぎてしまって、いつも後悔してしまう、、、」
「結局、今日も言いたいことがうまく伝えられなかった、、、」
 こんなふうに悩む人への伝導書。「話す」 ことへの努力にこだわることをやめ、相手に上手に話させる聞き方の真髄を会得しましょう。人は「本来話したい生き物」なのだから、相手に寄り添い、気持ちを理解してどんどん話させる。そうすると相手はあなたを信用してさ、好きになる。そうなった相手は料理しやすい。
 話し手がピッチャーならば、聞き手はキャッチャー。どこに投げさせ、どこにボールを回すかはキャッチャーの役割。野球ゲームを仕切っているのはピッチャーではなくてキャッチャーであるとの主張です。
 なるほどと納得してしまいました。ボクたち未熟者はついつい論理を並べて相手の非を追求しますが、相手も感情ある人間。言葉で追い詰められると引きこもるか、反撃するか。平和的な解決にはなりません。太平洋戦争の開戦経緯によく出ています。ディベートでは荒唐無稽な論理でも押し込めた方が勝ち。無理が通れば道理が引っ込みます。これが西洋式であり、ロシア式であり、中国式であり…。要するに日本以外でのメインの交渉術。
 日本人は生得的に「話す」ことでは主導権を取れません。言語体系の構造、方便の嘘をつけない文化、、。ならば苦手な分野で対等になろうとせず、得意分野で相手を出玉に取ってはどうか。相手の押してくる力を利用して体を入れ替える。柔道、合気道などそうでしょうというわけです。
「日本人の会話道は聞き方から始まる」と著者は言います。著者が説く聞き方のポイントは、①笑顔とうなずきで話を聞く、②「いいね」からすべてを始める、③訂正や難しい顔は禁止。相手はあなたの反応に気を良くしてどんどん話します。
 あなたは感嘆し、反復し、共感し、賞賛します。そして最後に満を持して「質問」するのです。案件によってはここで大どんでん返し。著者は「北風と太陽」の寓話を引いています。強烈な風でも旅人のマントを剥ぎ取れませんでした。太陽はニコニコ微笑むことで旅人に自らマントを脱がせました。北風も太陽も目的は同じ。旅人を無防備にさせることでしたから、太陽が成功しました。
 岸田総理は「自分は聴く力がある」と主張して総理大臣の座を得ました。日本人の特質を生かして政治を進めるということでしょう。国内でうまく行っているのか議論が分かれるところです。
 国際的にはどうでしょう。ロシア封じ込め、中国共産党の暴発抑止。ソフトなようで後退しない。愛想笑いをしているだけのように見えて、実は相手の傍若部人を許さない。政治は結果責任。日本の国益を最大にするのが外交です。そしてその評価は将来の国民がしてくれます。
 そうした意味で、日本人の中で聴く力という国民的長所にもっとも欠けているのが国会議員とマスコミ人人です。政策議論の場であるにもかかわらず、耳が汚れるような悪口雑言を行政府の面々に浴びせて恥じることがありません。そしてそれを賞賛するかのようなマスコミ報道。そうした人たちにこの本を読ませて感想文を書かせたいものだと思いました。

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