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557ウクライナ戦争の本質 スティーブン・コトキンの教え

目が覚める思いをするとともに、ボクの認識が間違っていなかったことを確認できた。多くの日本人が同じ感想だと思う。歴史家スティーブン・コトキン教授の所説を読んでの感想だ。読売新聞(2022.3.20)に鶴原徹也編集員の解説で掲載されているもので、「ウクライナ戦争は第二次大戦後の東西冷戦の発火であり、ソ連崩壊時に国際社会が共産党独裁支配体制の息の根を止めなかった報いを受けている」。
東西冷戦を生み出したのはルーズベルト大統領。ヒトラーを倒すために、スターリンと組んでしまった。民主主義にとってはヒトラーもスターリンも破壊者であり、共存できない。しかるにルーズベルトはスターリンを容認し、戦勝者として遇する致命的な過ちをした。
「西側は地理的概念ではない。法治・人権尊重・抑制と均衡・私有財産制・開かれた市場など自由民主主義の価値感と諸制度を備えた陣営」(コトキン教授)のことである。東側とは、これらの反対の価値観と諸制度を備えた陣営で、国民の審判を受けない共産党の一党永久支配が原則だ。
共産主義社会の理念と、共産党独裁とは全く別物だ。共産党独裁は、専制、圧制、ジェノサイド、デマゴーグ何でもあり。国家を乗っ取り、国民を隷属させ、党の中枢部に権力と富が集中する体制を維持強化する手段として、共産党による指導統制を正当化する。それだけならば共産党支配下の国家国民の悲劇だけで終わるが、共産党支配がロシアで始まったのが厄介だ。ロシアは16世紀のイワン大帝以来、地続きの領域を地の果てまでも領土に組み込まなければ収まらない性癖になっている。日本海を挟んで新潟の向かいに位置するウラジオストクは「当方を占領せよ」の意味である。市の名称を変えず、東方侵略を続ける意思を持ち続けている。
これが東方とすれば、西方はヨーロッパ。1991年のソ連崩壊でポーランド、チェコ等の東ヨーロッパが自主性を回復、またバルト三国、ウクライナなどが独立を回復した。このとき世界は東側陣営が消滅に向かうと誤判断をした。共産党一党支配の中国に経済援助し、世界貿易機関(WTO)にも迎え入れ、中国を民主主義化させてロシアに対抗させようとしたが、起きたことはこれとは真逆。優遇を利用して経済成長を果たし、返す刀で軍事力を強化した。それが南シナ海、東シナ海での唯我独尊的横暴や台湾侵攻の準備、国内でのウイグル、チベット、モンゴル族などへの民族浄化になって世界平和への脅威として跳ね返ってきている。そして重要なのは、ロシアと同様に、中国もまた歴史的に領土獲得に貪欲なことである。
ソ連崩壊以前の専制体制はソ連が主導し、現在は中国が主導している。この両国ともが国内での圧制にとどまらず、周囲への膨張、さらには世界すべてを支配下にしたい強固な意思を持っていることだ。コトキン教授は、ロシアだけの力ではウクライナ再征服が成功する公算はゼロであるとする。それが分かったときにプーチンが、「自分のものにならないのなら、誰のものにもさせない」と、ウクライナを破壊しつくし、無差別殺りくに出る事態が怖いとコトキン教授。戦況を見るとまさにそうなりつつある。ここでプーチンに妥協してはならない。西側は、東西冷戦を真に永久に終結させるためにウクライナへの「支援を強化し、対露制裁を貫くべきです」とコトキン教授。
そして教授の視線は、東西対立の主因になっている中国の習近平に向かう。「中国の権力中枢はウクライナ戦争を注視しています。大方はプーチン氏が勝ち、西側の覚悟が雲散霧消することを期待しています」ので、「西側は張り子の虎ではないことを証明する必要がある。台湾有事に備え、中国の権力中枢の極秘情報を入手できるのか、ロシアに科した制裁をロシアを凌駕する国力の中国にも科すことができるのか、中国の中央銀行を政策の対象にできるのか、民間企業は中国とのビジネスを放棄できるのか、検討すべきです。中国は今、西側の実力を見極めようとしています。ウクライナ戦争は西側にとっても死活的に重大な機会なのです」。
日本の論壇に必要なのは、こうした本質的な議論であろう。状況説明だけでは評論にも値しない。

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今日3月23日の夕刻、ウクライナのゼレンスキー大統領が日本の国会で演説する。専制主義者の侵略に立ち向かっている民主主義国リーダーの話を、同じ民主主義国日本の国会議員たちがどう受け止めてくれるだろうか。

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