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496 政党代表の演説を聞く 最初感激、そして落胆

臨時国会が閉幕した12月21日の夕刻のことだ。
 新橋駅で地下鉄へ乗り換えしようと改札を出たら、拡声器から大音声がしている。機関車前広場で国民民主党の玉木雄一郎党首が演説していた。劣勢といわれた衆院選で、マスコミ予想を覆して議席数を増やした。政界の悪しき伝統にこだわらないようで、今や時の人。いわゆる文書交通費でも国民目線の発言をしている。
 力強い声に引かれて近づいた。立錐の余地がないとはいわないが、それなりの数の聴衆が耳を傾けている。どんどん前に進むと、最前列近くになった。

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「われわれは古い政治から離れ、国民本位で行動する。さもないと日本は韓国、台湾にも一人当たりGDPで抜かれてしまう。まともに働き、まともに暮らせる社会にしようではないか」。そのくだりで、ボクは自然に拍手していた。そうしたら周りが同調した。玉木さんは笑顔になり、「ありがとう」とこちらに視線を向けた。瞬間、目が合ったように感じた。「頑張れ」、もう一度、拍手したら、その輪がもっと大きく広がった。少しばかり演説が盛り上がったように感じた。
 でもボクの興奮はそこまでだった。玉木演説は次のように進んだからだ、
「今日の国会で補正予算が成立した。政府提案は30兆円。これではだめだ。小さすぎる。自分たちだったら最低50兆円の大型補正予算で経済を立て直す…」
ボクは失望して、ただちに踵を返して駅に向かった。それ以上は聞きたくない。

企業活動が盛り上がり、国民に賃金を払い、国に税金を納めるのがあるべき姿。それならば正しい。だが、そのための手段を間違えている。政府がカネを配ることが、なぜ経済の活性化につながるのか。バラマキに経済波及成長効果がなかったから、韓国にも、台湾にも経済力で抜かれるブザマになっているのだ。国から助成金をもらって企業が儲けて内部留保を積み上げても、国民に残るのは財政借金の山。補助金は呼び水というのは、インチキな一部経済学者の頭の中だけでの真理。現実を踏まえない、経済理論は無意味以下。
花見酒という落語がある。八と熊が借金して酒樽を買い、一獲千金を試みる。皮算用では樽の酒が全部売れると、二人はにわか成金だ。前祝いに景気づけをすることになった。八が一杯飲み、代価を店の箱に入れる。熊はそのカネを借り、一杯飲んだ代金として箱に戻す。八が2杯目を飲み、同じくカネを借りて支払う…。
夕刻になり、客が集まってきた。ただしその時点では、樽は二人で飲み切って空っぽ。客の行列を尻目に、二人は「今日は売り切れだ」と店を閉める。そして売り上げを計算するのだが、代金箱には八が最初に払った銀貨が一枚切り。
 そこに酒屋が樽酒の代金を受け取りに来た。「全部売れたようだな。即刻代金を払ってもらおうか」。
八と熊が何と言ったか。ボクが立ち去った後、玉木さんが50兆円バラマキの論拠をどう説明したかに通じる。

民主主義の灯が摘み取られた香港で議会選挙があった。習近平流の民主主義とかで、立候補できるのは共産党の審査に合格した者のみ。「選択肢がないので意味がない」と香港住民は判断したから、記録的な低投票率になった。
日本の国政選挙はどうか。先般の衆院選でも明らかだったが、どの党もバラマキで共通している。交付金、補助金、支援金何でもよい、とにかくバラマキだ。そうすれば将来はバラ色と約束する。それを信じる国民しかいないのか。赤字財政はよくないと思う者だっているはずだ。バラマキは精神を荒廃させ、長い目で見て愚策と判断する者だっているはずだ。だがそうした主張、公約の候補者や政党は存在しない。選択肢がないことでは日本の国政選挙もほめられたものではない。
せっかく国民の支持を回復した国民民主党。他党と違うことを考え、公約し、実行してほしい。



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