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698防衛力強化5年以内 始期なのか終期なのか

政府の「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」が11月22日に報告書を公表した。岸田総理にも提出した。総理と会議の佐々江賢一郎座長が笑顔で並んだ写真が新聞トップページに掲載されていた。
世界がきな臭くなる中、わが国ひとりお花畑で夢想する少女でいられるわけがない。自身の防衛力確保は独立国として生きていくうえでの必須事項。
 
ボクは専門家ではないから詳しいことは分からない。だが国家の俊秀を集めての報告書だから、内容は正しいのだと信じる。そのうえで国民として「分からない」では済まないことを確認しようと思う。
物事を進めるにはその内容と、その進捗とがある。内容的には報告書を信じるとして、進捗についてだ。新聞見出しでは「防衛強化5年以内に」となっている。
 
ボクの疑問は簡単だ。これまでのわが国は防衛努力をして来なかった。つまり白紙状態から国家的危機、たとえば中国による台湾有事を念頭に置いた防衛力整備を完成させることになる。ギアをニュートラルから一気にトップに切り替えるわけだ。
その進捗には大変なエネルギーが伴う。そこで友好国との同盟関係を含めて①「5年後には事態をコントロールできる体制を完成させるのか」、②それとも「国内世論を喚起して5年後において体制整備に本格着手するのか」。つまり5年後に完成速度に達しているのか、それとも5年間は準備期間中なのか。この違いは致命的に大きいはず。
もし②であればこの報告書は泡が抜けたサイダーのようなもので、タダの紙切れ。中国は「日本は防衛力整備を先送りして、言葉だけで茶を濁すことにした」と受け取り、野心をさらに膨らませるだろう。①であればどうか。「台湾侵攻をするなら5年以内が勝負」と考えて侵攻を早める準備をするだろうが、その間に条件が整わなければ侵攻を思いとどまる公算が高くなる。
 
さて報告書は①と②のどちらなのだろう。報告書で「5年」と明記している箇所を読んでみた。
 
「5年後や10年後における戦い方を見据えて、他国による侵攻の抑止や阻止、排除を行い得る防衛力を構築するという戦略性が求められる。」
「今後5年後を念頭にできる限り早期に十分な数のミサイルを装備すべきである。」
「5年以内に抜本的に強化するに際しては、同時に10年後といった長期間での強化策の内容や規模を「見える化」することも国民の理解を得る上で重要である。」
読むほどに①なのか、②なのか、それともそれ以外の進捗を考えているのか。切迫感がない玉虫色のお役人文章というのは酷評にすぎるだろうか。

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