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613新たな観光需要策 税務署に任せよう

国土交通省が全国を対象とした「新たな観光需要喚起策」を正式発表しました。この7月から8月いっぱい実施され、旅行者にはその費用の40%、日額1万千円まで補助するといいます。
「政府がおカネをくれるなら旅行しようか」。その場合、だれもが考えるのは「お盆の墓参りと親戚との再会」でしょう。さっそく航空機や親権戦のチケットの手配をしなければ。地下鉄でJTBにでかけて(高齢者はネットでの手配はできません)、がっくりすることになります。
「夏の2か月間が対象ですが、お盆の時期は外されています」と宣告されるからです。
 それでこの政府の政策目的がはっきりします。コロナで観光旅行者がガタ減り。関連企業が国土交通省に泣きついた。国民に観光旅行に行くように政府から号令を出してくれ。でも不要不急に県境を越える旅行をするなと求めたのは政府です。旅行自粛要請は間違いであったとは言いにくい。方針を変更したと宣言するのも、合理的説明に足りる科学的根拠がなく、舌を噛みそうだ。
 そこで理由を追及されない方法を考えた。「カネを配れば文句を言う者はいないだろう」。安易というか、日本的政治決着というか…。イヤハヤと出てくるのはため息です。

 お盆の帰省は自然の需要。これに補助金を出せば庶民は喜びます。しかし今回の政策目的はそれではありません。あくまでも国土交通省所管の業種への経営援助。だから放っておいても客が多いお盆時期は対象外なのです。
 ならば正直に政策目的を言うべきでしょう。「国民向けの施策ではない。あくまでも観光業者への支援である。この恩恵にあずかりたい国民は、帰省旅行の時期を変えるか、あるいは計画になかった不要不急の旅行をするべきである」と。
 不要不急の観光旅行など考えることもない一般国民には、しょせん縁がない政策です。そして①カネがあって、②暇があり、③旅行が嫌いではない者がおこぼれにあずかる。
 ボクたち年金生活者、②は該当ですが、肝腎の①と③を満たしません。補助金もらっても残り60%は自己負担。わざわざ老骨に鞭打ってまで観光旅行に行くでしょうか。
 
 観光業者に利益を確保させたい。業種所管大臣や官僚がそう考えるのは役目上、ダメとは言えません。でも方法が悪すぎます。というのは補助金を配るには、そのための仕組みが必要です。コロナ関連の補助金、交付金では、配分のための新たな機構が組織され、その運営費に巨額の資金が流されます。そして不正を目論む有象無象が跋扈するのです。経済産業省の事業でも、厚生労働省の事業でも、コロナ関連のバラマキでどのようなことが起きているか。その結果、10兆円規模で借金して財源を用意しても、目的とした受け手に正しく渡るのはその何割にとどまっているか。政策結果については会計検査院などが調査するのでしょうが、その結果が出るのは何年も先です。待っていられますか。それ以前に国の財政が破綻してムダ追及がうやむやになりそうです。

では、どうすればいいのか。ボクは事業そのものに反対ですが、そこを曲げてどうしても実施するとした場合の方法です。ヒントはあります。
同じ国土交通省所管に住宅業界があります。家やマンションが一定数建てられるには、新たに家を買う需要を維持する必要があります。そのための需要喚起策が講じられていますが、補助金支給ではありません。住宅購入者のほとんどは銀行でローンを借ります。その利息の一部を需要者の所得税から控除(差し引く)仕組みが採用されています。これだと補助金を配るための天下り団体などは不要です。なぜって審査するのは税務署ですから新たな団体設立やいかがわしい業者への事業委託はありません。資料は銀行から提供されますから、税務署職員が残業することもないはずです。
医療費でも同様です。健康保険を使えない医療分野があります。売薬で治すとか、人間ドックで健康チェックするとか、保険対象外のカイロプラスティックで腰痛治療するとか…。この場合も所得税の計算において控除を受けられます。所得税の申告時に領収証を添付すればよいのですから、年金生活者でも各自で対応できます。
 
税の控除システムの活用が簡便。そう思いませんか。お金を配る新組織も不要です。この案に対しては「低所得の非課税世帯では税の控除方式では恩恵がない」と高説を述べる人がいそうです。でも生活にさほど余裕がない人に対して「不要不急の観光旅行に行け」の政策の方が、よほど歪(ゆが)んでいませんか。

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