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犬猫にもわかる年金制度を考える

「年金の話は難しい」。厚労大臣に委嘱されている年金委員の会合で言い交わされるほど、年金の仕組みは複雑だ。そうなったのには歴史的経緯があるのだろうが、いつまでも引きづっていても仕方がないと思う。超簡単な年金制度を考えてみよう。
 年金はおカネの再分配だから、財源の確保がすべての前提。そしてそれは現役世代の者が払い込む保険料である。ここで出る疑問がある。保険料を払うのは①現役世代全員か、②稼得収入がある者だけか。
次に(老齢)年金を受け取るのはだれか。①長生きし過ぎた超高齢者か、②稼得活動による収入を失った引退者か。
これらが整理されていないことが、年金制度複雑化の原因のおおもとなのだ。大胆に制度を再編するにはどう概念整理すべきか。答えは既に出ている。
上記の①同士を組み合わせてできるのが基礎年金。②同士の組み合わせが厚生年金と整理すればよいのだ。
これに沿って制度化すればこうなる。まず基礎年金について。現役年齢層の全国民が、職業や収入の大小にかかわらず基礎年金(国民年金)に一律定額の保険料を払い込む。そして90歳まで生き延びている者に十分生活できる定額の年金を支給する。ここで出てくる懸念は、主婦や失業者など保険料負担する余力がない者(時期)にどう対処すべきかであるが、家族(配偶者)が立て替え納付するか、当人が実質無利子の保険料貸付けを受けることができる仕組みを用意することで解決できる。保険料を払えば生計が成り立たないのは一時的なものであることを理解すれば、簡単な応用問題である。
次に厚生年金について。引退によって現役時代の収入を失う代替としての給付であるから、非正規労働者も自営業者も当然保険料納付の対象になる。歳入庁を創設し、所得税や住民税なども併せて(もちろん国民年金保険料も対象)徴収することで滞納をなくす。厚生年金保険料率は現在の18.3%より低い15%程度にとどめる。保険料徴収は現行制度でも70歳までになっているから、保険料納付年数が40年の者であれば、保険料率が15%であるから、平均年金受給期間20年として厚生年金の代替率は30%になる。受給期間を10年に集約すれば倍の代替率60%可能になる。
ここで先ほどの基礎年金との関係が重要になる。90歳以上者は基礎年金で十分生活できるとなれば、厚生年金は90歳で支給止めにできる。さらに支給開始年齢を当人が選択できることにしておけば、80歳から代替率60%の年金を受け取ることも可能になる。ではそうした選択をするためには80歳までをどのように生活して行くか。
これについては、自営業開始、継続雇用、再就職などで引退時期を遅らせるのが選択肢の一つ。企業年金を含む私的年金とアルバイト的収入で対処するのが選択肢の二つ。預貯金を取崩しつつボランティア活動など悠々自適を楽しむのが選択肢の三つ。いずれにせよ予想外に長生きしても暮らし向きが破綻する心配がなければ、老後を思って現役時代からキリキリ胃が痛む思いをすることはない。
ではこの制度で損をする人はだれか。短命に終わる者である。80歳(日本人の平均寿命=男)以前に死んでしまえば年金保険料はすべて掛け捨てになる。80歳までは生存しても厚生年金を受け始めても、90歳(日本人の平均寿命=女)以前に死亡すれば基礎年金は1銭も受け取れない。
さてこれは不公正な制度だろうか。国民の大半がそう思うのであれば、公的年金制度はそもそも成り立たない。
ボクは国民の大多数が、「死んでしまえばカネは要らないのだから、長生き者優遇制度に賛成」すると思う。公的年金の基本法である国民年金法の1条にも「老齢・・・によって国民生活の安定がそこなわれることを国民の共同連帯によって防止」と書いてある。

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