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512公党の魂が根付かない 財政規律を唱える政治家は“絶密危惧種”と野田佳彦元総理

昨年の総選挙での立憲民主党敗北の原因は「国家の基本政策である外交・安全保障・税財政の議論で責任ある態度」を示せなかったから。民主党政権最後の内閣総理大臣であった野田佳彦さんの説明だ(読売新聞2022.1.16)。
 野田さんの業績として語られるのが「社会保障と税の一体改革」。「消費税率を10%に引き上げ、社会保障と政府財政の健全化を両立させる改革」であったと自賛する。総選挙で(野田さんが所属する)立憲民主党は「税率5%への時限的な消費減税』を公約としたが、「社会保障と税の一体改革」に政治生命をかけた立場から、それには内心反対であり、自身の選挙公約や演説では触れなかったという。
「政府の財政規律は緩んでいます。いまや政界で財政規律を語る人が絶滅危惧種になりつつありますが、政治家は、財政健全化への中長期の視点をもつべきです。大半の国民は財源を無視した政策論議をおかしいと思っていいます」と語っている。
 そのうえで憲政の神様と呼ばれた尾崎行雄の「本当の政党を作るためにずいぶん骨を折ってきたが、公党の魂を入れることがどうしてもできない」という述懐を引用している。
 さてここで「公党の魂」とは何か。尾行雄記念財団事局長が紹介しているのを引き写す。「立憲政治は政党がなければ、やっていけない政治である。私はほとんど過去半世紀以上にわたり、あらゆる非立憲的勢力をはねのけて、名実兼ね備える政党政治を実現することに尽力してきた。そしてこの目的を達成するためには、何としても本当の政党をつくらなければだめだと思って、ずいぶん骨を折ってみたが、どうしてもだめであった。政党の形だけはすぐできるが、それに公党の魂を入れることがどうしてもできない。日本人の思想・感情がまだ封建時代をさまよっているために、利害や感情によって結ばれる親分子分の関係と同型の私党はできても、主義・政策によって結ばれ、国家本意に行動する公党の精神は、どうしても理解できないのであろう。力をめぐって離合する感情はあっても、道理をめぐって集散する理性がないからであろう。」
公党の精神(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長) - INPS International Press Syndicate - JAPAN (international-press-syndicate-japan.net)
 平民宰相として当時人気絶大であった原敬総理(暗殺)についても、「金が欲しい議員には金をやって、ポストが欲しい議員にはポストをまわして、それで子分を増やしたのだ」と批判していた。金銭には清廉潔白、利権政治とも関わらなかった。それでいて選挙にはめっぽう強く、明治23年(1890年)の第1回衆議院議員総選挙で三重県選挙区より出馬して以来、連続25回当選。63年間衆議院議員を務め、引退したのは戦後の昭和28年で94歳だった。その間、閣僚や東京市長(指名制)も務めている。

 野田さんは「将来の子や孫の世代を見据えた骨太の理念と政策」を持つ本物の野党第一党が必要と主張するが、彼自身が嘆くように、財政規律を語る政治家は絶滅危惧種である。では外交や安全保障はどうかとなるが、こちらはもっと深刻だ。語るどころか、考えること、意識すること自体を拒絶している者ばかりである。国家、国民を外敵から守るつもりがない政治を支持することなどできない。これが低投票率の真因。

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