流通と物流

 モノの物理的な移動を、物流と言い、モノの権利の移動を流通と言う。物流はトラックがあれば成り立つ。流通は電話があれば成り立つ。この意味がわかるだろうか?
 人間社会には二つの空間がある。1つは私達が今目にしている空間。3次元の物質の空間。もう一つは私達が頭の中で捉えている仮想空間。目で見ることも手で触れることもできないが、確かに存在しているものの世界。
 もっとわかりやすく説明しよう。机の上にペンが置いてある。向かい合った席に、友達が座っている。ペンはあなたの座る席と友人の座る席とのちょうど中間にある。つまりペンとの距離はあなたも友人も全く同じ。友人が言う。
「このペンは僕のものだ。」
でもなぜ彼はそのように言うことができるのだろう?続けて言う
「このペンをきみにあげよう。今からこのペンは君のものだ。」
ペンの位置は変わっていない。机の真ん中から1mmも動いていない。でもあなたのものになった。これが流通。この移動は、頭の中にしか存在しない。あるようでバーチャルなのが流通。
 あなたはお礼を言ってペンを手に取った。そして持っていたカバンの中にそれをしまった。ペンは空間的に移動した。これが物流。目に見えるし、手で触れることもできる。確かにあるものが物流。
 別にあなたがペンをカバンにしまわなくても流通は存在しているし、友人に気づかれないようにこっそりとカバンにペンをしまっていても物流は存在できる。この二つは必ずしも相互不可分なものではない。
 確かにある空間と、あるようでバーチャルな空間。わたしたちはなんとなく生きているから意識していないが、あるようでバーチャルなものに目を向けると、世界は一気に広がる。店でものを買う時に、流通と物流の違いに是非注目してみよう。

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