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47/n X-cut チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解

ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは全国向けにソーチェーンのオンライン目立てを事業として行っています。宣伝を兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。

ハスクバーナ

 当ブログではオレゴンやスチールに比べて登場頻度が少なく、いろいろな回で散発的にしか出てこない「ハスクバーナのソーチェーン」ですが、ここらで一旦まとめておきたいと思います。ハスクバーナってそもそもどういうブランドやメーカーなの?ということは割愛します。KTMのことではありません。

X-cut シリーズ

 ハスクバーナが自社で設計・製造・流通させていると言われているソーチェーンです。ハスクバーナチェーンにはX-cut発売前から「EMチェーン」もあります。公然の秘密となっているので差し支えないと思いますが、EMチェーンはOEMで、製造元はオレゴンです。EMチェーンにはオレゴンの現行モデルと1世代旧型が入り乱れています。旧型といっても変わるのはオイルデザインです(カッターのテンパーカラーは流通対策です)。EMチェーンもいずれなくなる運命でしょうし、特に具体的に解説することもないでしょう。

特徴

 改めてなんだろうなといろいろと考えましたが、なんだかんだと例外があったり、オレゴンやスチールのように情報の裏を読もうとしても読み切れない部分があり( )、X-cutはこれだと特徴付ける絶対なものは「HusqvarnaがX-cutと呼称しているもの」という1つしかありません。というわけでそろそろ当ブログお得意の「細かい・複雑・いろいろなこと」に話は移っていきます。

サイドプレート(横刃)の形状について

新品のC85

 C85はフルチゼルなので特にそうですが、325以上のものはカッターシェイプ問わず同じ形(=製造工程)になっています(S93Gは深追いしてないので知りません)。「フックだ!」という声が聞こえてきそうですが、トッププレートにヤスリが当たり切っていないフックは別として、フックも全てが全て悪いわけではありません。しかし、丸ヤスリで肉眼ベースで再現しようとすると、丸ヤスリの円によってカッティングポイントやワーキングコーナーの金属量は減るので脆くなりキックバックもしやすくなってしまいます。その点、X-cutの公式で発表されている情報をまとめると、脆さについては「熱処理とメッキ厚の調整で切れ味の持続性を高めた」ようです。続く動画内で具体的な数値は出ていませんが、メッキ厚について軽く説明しています。説明の表現からすると「それって厚くない?」という印象を受けてしまいます。母材の硬さよりはメッキ厚の方が切れ味の持続性という点では影響大です。それに母材の鋼材は硬くなると脆くなります。嘘はご法度ですから、素直に考えれば熱処理か混ぜ物で競合製品より母材をほんの少しだけ硬くして、母材より高い比率で硬くなる効果が出るように、メッキを厚くしたんだろうと推測します。

続・サイドプレート(横刃)の形状について

 それにしてもサイドプレートの形状からするに、ヘキサチェーンと異なってこれを従来の丸ヤスリで研ぐよりは、グーフィーで研ぐ方が「新品の形」にはマッチします。製造時点では多角ディスクか2段研ぎをしてるんだろうなと常々思っていましたが、ブログにするにあたって少し調べたらドンピシャリな動画がありました。

イメージ映像ではホイール1枚で削っている印象ですが…
実際の映像では奥には更に棒状のヤスリが…
カッティングポイント → \ → / → 〇 の線が見えてきました。
新品のC85上刃仕上角とガレットの研磨角度のギャップ

 映像では映されていませんが十中八九です。X-cutではディスクでサイドプレートの途中まで削った後に棒状のヤスリでガレットから上を研いでます。ディスクのエッジの平面部分が当たるので、カッティングポイントのマウントボリュームも確保されています(ヘキサチェーンと原理は一緒)。ちゃぶ台を返しますが、新品の刃の形状を丸ヤスリで再現しようとすると、2段研ぎ無しではどのメーカーのものも不可能です。但し、X-cutではカッティングポイントから伸びる直線の距離が他社製品より長くなるので、新品時から切れ味が落ちて最初の目立てでは、丸ヤスリだと切れ味を戻すのに少し苦労するかもしれません。
なぜX-cutはこの形、製法かというと、フックによる喰い付き向上を狙いながらもガレットは従来の形に近付け、尚且つ生産品質を高めてコストも抑える為だと思われます。製造時のディスク自身も削れていくので、Xcutを狙ってディスク1枚でフィニッシュすると、ホイールのドレッシングとそれに合わせた研磨深度の調整も回数が増えて大変そうです。細かい調整を強行突破してしまうとロットで外観のバラつきが大きくなってしまいます。機械研ぎと丸ヤスリの手研ぎについては2/nをどうぞ。

再掲 左からオレゴン、スチール、ハスクバーナ

続・続・サイドプレート(横刃)の形状について

 先述した研磨工程が全てのX-cutチェーンに適用されているわけではないようです。SP21Gはサイドプレートにはガツンとしたフックも、ガレットを棒状のヤスリで研磨した跡もありません。通常のホイールで研磨したように見えます。

外側からの見た目はカッターのジオメトリーでも変わります。
C85には見えた多段状の線は見えません。普通です。

SP11GやS93Gは実物が無いのでわかりません。あしからず。話は変わって、SP21Gと80TXLはどこが違うんだというのは上&横刃仕上角と外側から見たガレットの深みです。SP21Gは上刃仕上角鋭角、横刃仕上角鈍角、浅いガレットになっています。多軸多段研磨と1軸1回研磨の違いと思って間違いないでしょう。新品を使い捨てにするブルジョワジーな方を別にして、数回研げば消える特徴なので、こんなことは知らなくても全く差支えありません。今回に限らず、X/nシリーズはいずれどこかの誰かの好奇心の為に書き残しています。

トータルデザイン

続・切れ味の持続性について

2/nより

包丁研ぎをする人には当たり前かもしれませんが、刃物は番手を細かくしてフィニッシュした方が切れ味は向上し、切れ味の持続性も向上します(細かい刃が増えることにより、サメの歯のように1つが潰れても次の新しい刃が出てきます)。S35Gしか見ていませんが、X-cut新品時点で競合製品より切れ味や、その持続性の向上を感じる、目立てで新品のようにならないなと感じるモデルには、画像のような番手が採用されていると思われます。

スライディングデプス

X-cutの中で実装されているのをS35Gにのみ確認しています。他品番は実物を手に取って見たことがないので分かりません。あっさり。

チゼルオンチゼル

「チゼルオンチゼル」なんて言葉は実生活で使ってはいけません。認識していない事柄を言葉にすることは人間にはできません。自信満々に「チゼルオンチゼル」なんて言ってもずんどこべろんちょなぐらい、オセアニアじゃあ常識なんだよ!
2023年にC85の実物を触った事がありますが、その時にはRSやEXL程の明確なものを感じませんでした。強弱の程度があるものなので私の感度も大概怪しいのですが… ここもあっさり。

偶然?必然?リベットスピン

 ここからこってりです。知る限り1つの品番を除いて画像のような状態になっています。

左右同じ具合です

左右で異なると締めが弱い方と反対側のタイストラップが割れて破断します。カッターから発生する横向きの力に振られて、クリアランスが無い側が動きに付いていけずに割れるのです。ここで久しぶりにソーチェーンは「フレキシブルな刃物」であることを思い出します。「動く」ということはつまりクリアランスがあるということも思い出します。動く時はソーチェーンの各パーツ同士の摩擦を発生させます。リベットは左右同じ具合です。ソーチェーンには寿命期間中、切削効率のゾーンがあることも思い出します。使い込んだチェーンは摩擦で各パーツが擦れて「よりフレキシブル」に動きやすい状態になります。そんなこともあるかもしれませんねという締めのあっさりで終わりとします。

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