#1 バイオメカニクスを学ぶと何がわかるか

序章としてまず初めにスポーツバイオメカニクスをなぜ学ぶのかについてお伝えします。

結論は「なぜその運動が優れているのか?の理由を考えることができるから」です。

陸上の100mであればより速く走った人が勝ちます。野球でより速く球が投げられることは遅いより有利になります。バレーでより高くジャンプできることは高い打点でスパイクを打てることに繋がります。「脚が速い」「球が速い」「高くジャンプする」などの運動がいかに優れているかは「速さ」や「高さ」などの物理の力学の知識を使って表すことができます。力学の知識を使って運動を表すことができるということは、力学の知識を応用すればその運動がなぜ優れているのかを明らかにすることができます。

優れたスポーツ選手の動きを見るときどのような感想を持つでしょうか?例えば大谷選手が速い球を投げているとき、「腕をムチのように使っている」とか「身体のしなりが凄い」など見た運動の印象からそれぞれ感想を抱くはずです。運動を指導されている方であれば球が速い選手とそうでない選手を比較して球が速い選手は腕の振りが速い、であるならばもっと腕の振りを速くすればもっと速い球が投げられるはず、などの推察からそれぞれの選手にあった指導をされているかと思います。野球の例を取り上げましたが、他の運動も同じことが言えるはずです。

上手い人を見て何が足りないかを考えることは運動が上手くなりたいという選手やコーチであるならば誰しも行うことかと思います。しかし、運動を見るときに「なぜその運動が優れているのか?」の根拠が乏しいことはないでしょうか?ご自身が見て抱いた印象からその運動を考えてしまってはいないでしょうか?もちろん感覚としてその運動をとらえることは重要なことなことです。しかし、客観的にその運動がなぜ優れているのかを理解することができれば、選手の改善すべき点や上手い人がなぜ上手いのかを考えることができます。そこで活きてくるのが「バイオメカニクス」の知識です。バイオメカニクスを学び知識を応用することで運動をより深く理解し、パフォーマンスの向上につなげることができると考えています。

バイオメカニクスを学ぶと優れた運動の根拠を考えることができることをお伝えしました。しかし、バイオメカニクスにも苦手にする運動があります。それはバスケットのシュートやダーツなどの正確性を問うスポーツです。「速い」「高い」などは速度や位置の数値が大きければより優れた運動であるととらえることができます。しかし、正確性を問うスポーツ、例えばバスケットボールのシュートにおいては、より速いボールを投げることがより正確なシュートを打つことには繋がりません。従ってより大きな力学量(より速い、より高いなど)を発揮することが優れた運動にならない動作をとらえることはバイオメカニクスの苦手とするところです(それでもシュートの分析は行われていますしいろいろな知見も出ています。あくまで苦手というだけです)。従ってバイオメカニクスを勉強したからといってなんでもかんでもわかるようになるというわけではないことをご承知おきください。

冒頭で述べたように、バイオメカニクスは力学的な知識を用いて運動を考えることでその運動の合理性を明らかにすることができます。すなわち「なぜその運動が優れているのか?」の一つの答えを導くことができます。

次回からはより簡単な例から力学の知識を応用してスポーツを捉えていく作業をしていきます。


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