巻きたい色のネクタイを選んだ日の話
「就活」を経験されたことはあるだろうか。
本、映画に明るい人もそうでない人も、全人類が二階堂ふみ見たさで朝井リョウの「何者」を見ているかと思うので、鍵カッコつきの「就活」の説明はいらないだろう。
例に違わず、自分も「就活」を経験した身。小さいころから、兄、親、監督、クラスのハイカーストの目線、空気を見事に察知し求められる姿に擬態できた俺にとって、何度か経験すればそれなりの結果くらいなら容易に出すことが出来た。
"スーツはネイビー。ネクタイは青か赤のレジメンタル。とりあえず前髪は上げて適度にツヤ出しとけば減点にはならない。実績は大したことなくても具体的に。ストーリーと再現性があれば、後は会話の中で説得力を出せるかどうか。”
「自由がない~」的なZ世代論ではなく、最適解だと感じたから。人柄だったり、ポテンシャルを計る試験なんだからバイアスやノイズを排除できるこの形式というか習わしはおれ俺にとって好都合だった、ということ。
ここでのバイアスやノイズ。言わば、任意の人間がよしとしてきたある種の方向や気分。マナー(笑)がなくならないのは往々にして、各人がそこを指標に評価を下してしまうから。だって桜木花道がシュート二万本打つとは思わんやろ。
そこを火種にフェミ論争って湧くんだろうけど、日本的美学と個人の人生で形成された美学とのどちらかしか選べない前提で話が進んでいくのが、今俺のいる会社とか田舎のコミュニティだったわけ。
なんか話が間延びしたけど、要するに、型にはまってると失敗した時の言い訳が簡単なんだよね。「ダンジョンのルート間違えたわ」くらいの感覚。ルートは全部思いついてた、たまたま択を外しただけ。ただただガキみたいにあーだこーだ言えるように細胞膜で核を覆っていく。傍から見たらその輪郭はぼやけて、リアリティがなく、不透明な細胞。
「それでいいや、俺は失敗しないし」ってタカくくってたけど、するもんなんだね。失敗する度えげつい仕打ちされてきたからそんなこと思ってたけど、なんか失敗のハードルって下げていいらしいし、失敗した自分を可愛がっても世界は許してくれるらしい。人殺しても最悪生きてける可能性があるこのバケツ、はしごもついてる。
赤髪は桜木だけじゃなくてシャンクスも深瀬もいる。黒ネクタイ君がかわいそうだよ。
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