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「一生味わえない経験」—羅針盤#10

内閣府の青年国際交流事業である「東南アジア青年の船」(以下,東ア船)に参加した青年たちの物語を特集する「羅針盤」。今回は第10弾です。

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金子優一(かねこゆういち)。第43回(2016年)「東南アジア青年の船」参加青年。フリーランスフォトグラファー。埼玉県青年国際交流機構(埼玉IYEO)事務局長。2016年に「東南アジア青年の船」に参加する前,日本国内プログラムのローカルユースや実行委員を経験。そのほか国際青年交流会議,日韓青年親善交流の集い,NPOマネジメントフォーラム(いずれも2017年)にボランティアとして参加。以降は毎年「東南アジア青年の船」国内地方プログラムで写真撮影担当のボランティアとして参加。今回は当事業への参加に至った経緯や事業中の経験,その後の活動に迫ります。
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通信制大学での偶然の出会いが呼んだ,「東南アジア青年の船」への参加

———第39回(2012年)の「東南アジア青年の船」(以下,東ア船。)の国内プログラムである「日本・ASEANユースリーダーズサミット」にローカルユースとして参加したということですが,それはどうやって知ったんですか?

通信制大学に通ってた時に,たまたま授業後の飲み会でご一緒した人から紹介してもらったのがきっかけです。その方は長野県の青年国際交流機構(以下,IYEO。)で活動されていた方で,「金子君、こういうの興味ありそうだから行ってみたら?」という感じで、それでローカルユースの募集のお知らせを渡してくれました。

———それで参加しようと思ったんですか?

そうですね,直感的に面白いなと思ったのもそうなんですけど,もっと自分の世界を広げたいなと思ってたんですよ。それまで家とバイト先の往復みたいなすごい狭い世界で生きてきたところで,通信制の大学に行ってみたら、社長さんもいるし、リタイアした後で再び学びに来ている人もいるし,自分の中での世界が広がったんですね。それでもっといろんなところを見てみたいと思っていたところでした。

———もともと国際交流には興味があったんですか?

そうですね。もともと外国語をずっとやりたくて,英語圏に留学したかったんですけどお金が足りなかったんですよ。ちょうどその時大学で中国と台湾の友人がいて,たまたま上野でお茶してる時に,「じゃあ台湾で中国語勉強してみたら?」って言われたんですよ。それでもう1回ネットで調べたら台湾だとすごく安く行けるって知ったんですね。1か月半くらい行けると。そうしたらもっとちゃんと勉強できるなと思って,2010年に語学留学しました。そこで発音を毎日徹底的に勉強して,帰国後もコツコツ勉強して、中国語がかなりものになりました。その段階で,国際交流に身を投じる良い土台ができたのかなと思ってます。

———初めて東ア船にローカルユースとして参加したのが2012年で,実際に参加青年として参加したのは2016年ですよね。この4年間は何か意味があったんですか?

ローカルユースとして参加した後は会社員として働いてたし,あんまり実際に事業に参加するっていうイメージはなかったんです。基本はボランティアの裏方で手伝うという感覚でやってましたね。

———なんか変わったきっかけとかあったんですか?

年齢ですね。改めてふと募集要項を見たら今年最後じゃん!って。受かるとか思ってなかったんですけど,ローカルユースとしてこれだけ東ア船に関わったんだから,受からずに31歳迎えるよりも,応募だけはしたほうがいいなと思って。でも実は,東ア船に参加する前の2015年に「世界青年の船」(以下,世界船。)の2次募集に応募してたんですけど,結局面接に行かずに終わったんですね。それで次の年の東ア船を受験し直したんですよ。

———なんでこの時は世界船に応募してたんですか?

東ア船と世界船,両方に参加するということは無理なので,実はめちゃくちゃ迷ってました。2015年はたまたま世界船は2次募集があって,東ア船はなかったんですよ。だから世界船に応募したんですけど,東南アジアが好きだしローカルユースもやってたので,乗るなら東ア船が良いなと思ってました。特に,海外青年の割合が世界船と比べて多いというのが一番大きかったですね。日本人40人弱に対して東南アジアの青年が300人近くいるわけですから。これは,すごい贅沢だし、ものすごい魅力だなと思ってます。

「一生味わえない」経験

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———実際に東ア船に参加して,一番インパクトがあった出来事は何ですか?

ホームステイですかね。とある管理部員の方が「東ア船は世界最大のホームステイプログラムだ」って言ってたんですけど,ほんとにその通りだなと思いました。日本を含めて5か国の新しい家族ができたっていうのは,乗る前には予想してなかったですね。

———その中で特に印象に残ってるエピソードありますか?

特に初めての寄港地だったホーチミンでのホームステイが強烈でしたね。初日に港から市内までバスで行く時に市街地全ての交通規制とかかけてくれて,国賓級の待遇だと感じました。ホームステイの時には,テレビ局が来てインタビューされたりして,とにかく熱量がすごかったです。家族もすごい熱心に案内してくれて,夜中までバイクでひたすら市内を連れまわしてくれました。操作ミスでクレジットカードがATMから戻ってこなかった時も,家族が頑張って銀行の支店長までつないでくれて,なんとか船の出発までにカードを回収するのを間に合わせてくれたりしました。

こういう経験って,これから先、一生味わえないもので,日本に帰ったら一般の日本人なわけじゃないですか。日本代表でいられるのはその東ア船の期間だけで,なんか不思議ですよね。それでもそういうことを経験できるというだけでも、ものすごい価値のあるものだったと思っています。

———逆に,参加しているときに何か挫折とかはありましたか?

ディスカッションはかなりきつかったですね。英語力が高くなかったので,ものすごくしんどかったです。周りのみんなは英語力が高く積極的で,全然ついていけなかったです。参加したディスカッショントピックと事前に希望してたトピックが違くて,事前学習が全く役に立たなかったということもありました。課題の内容を間違えて、資料を作り直すこともありました。

カメラマンとしての自信と確信を得た

———東ア船に参加してよかったなと思った瞬間はありましたか?

事業が終わった後も関わりが長く続いていくことですかね。自分は東ア船はあくまできっかけだと思ってるんです。そもそも自分は2012年から何らかの形で事業に関わっていて,人によっては「事業が終わったらサヨウナラ」となる場合もあるんですけど,それはすごくもったいない。事業への参加を起点にして、いろんな関係が細く長く続いていけばいいなと思ってます。

———今の自分から見て,参加してよかったと思うことはありましたか?

踏ん切りがつきましたね。事業中はITエンジニアをやってたんですけど,事業が終わって3か月後に退職してフリーカメラマンになりました。結果的に今は写真を撮って仕事をしているわけですけど,事業中はずっと毎日写真を撮っていたんですね。それでプレス委員会のメンバーと毎日ミーティングをしたり,全ての国のナショナル・プレゼンテーション(以下,NP。)も一人で写真・動画両方を撮ったんですよ。その後も,ビジュアルにこだわりの強いベトナムやシンガポールのチームから、チームの集合写真を撮ってくれと頼まれて,それはすごい名誉なことでした。あとはカメラが壊れた時にちょっと見て欲しいと聞かれたり,すごい頼られてることが分かって,自分の中で大きな自信になりましたね。事業で撮った写真は本当に色々な人に喜んでもらえるし、場合によってはSNSのプロフィール画像にもに使ってもらえたりして。それで写真を仕事にできたら良いなと思うようになりました。

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金子さんが撮影した、ベトナム代表の集合写真。

———これからの展望は何かありますか?

東ア船からいろんなきっかけをもらったので,今後も何かしらの形で関わり続けたいと思ってます。第46回(2019年)の時には,日本代表チームの写真を事前準備の時に撮りに行きました。撮った写真は本当に色んな場面で使ってくれて,嬉しかったですね。あとは東南アジアの寄港地に行って、向こうの受け入れ実行委員会に入って写真を撮ったりもしています。

———写真家としての展望はありますか?

有名になって作品が売れて,という目標はありますけど,同時に毎年確実に実施される東ア船には写真を撮りに行くことを継続していきたいですね。東ア船の写真展もまだやってないので,近いうちにやりたいです。いろいろ写真展をやっていて,きれいな写真も良いけど語れる写真,想いをシェアできる写真が最近は面白いかなと思っています。そんなきっかけをくれた東ア船や国際交流を今後も続けながら,活動していきたいと思っています。

———それでは最後に,これから東ア船に応募しようと思ってる人,まだ迷ってる人にメッセージをお願いします。

やらない後悔よりやる後悔ですかね。30歳までなら日本国籍を持っていれば誰でも応募できるので,とりあえず受けてみることをお勧めします。お金とか仕事とかは受かってから考えればいいと思ってます。昔から「やってみたい」と思ってたことを先延ばしにしてきたことがあって,ずっとチャンスを逃してたんですね。けど,自分が下した決断は絶対後悔しないしやり切れると思うので,面白そう,参加したいと思ったら迷わずにぜひチャレンジしてほしいです。

※現在、第47回(2020年度)「東南アジア青年の船」の参加青年を募集中です!詳細は内閣府のウェブサイトをチェック!
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※本note,及び「羅針盤」ウェブサイトに掲載されている内容の一切は,「東南アジア青年の船」事業主催である内閣府の公式見解ではありません.