なぜnoteをやるの?

 とは聞かれていないけど、書いておきます。

 きっかけは外科医仲間に紹介されたことです。
 私自身は物ぐさで社会性や情報に疎いので、自分ではこれらに参入することはなかなかなかったでしょう。

 外科医、特にバリエーションの多い形成、再建外科医が手術手技を勉強する方法は主に、①上司や仲間など身近な人から直接学ぶ、②教科書やネット、③他の施設に行くか、他の施設の先生にきてもらう、の3つがあります。①だけだと、その上司や仲間がいる限り同じ施設で自分の仕事を続ける意味がなくなってしまうので、必ず早期に限界が来ます。③はとてもよい方法で、私もよく行っていますが、時間とお金がかかります。で、②ですが、教科書は高いわりに欲しい情報がほんの一部しか掲載されていなかったり、ネットでは情報の密度や信頼性が低くかったりすることがほとんどです。医学論文も職場で簡単に入手できますが、統計など医学的な内容が主で、職人的な手術手技を書いてあるものはあまりありません。

 で、ドラえもんの道具的な教科書を書きましょうよ、その知人が言っていたのがきっかけになりました。「あしたの○○先生の手術、今まで見たこともないや!勉強しておかなきゃ。」という時に、ほしい情報だけを拾える教科書。なるほど。自分も若い時に何度もそう思ったけど、ネットが今ほど発達していなかった時代で、最初はどうやって勉強してよいのかさえ分からなかったなぁ。

 noteのよいところは、課金できることです。情報をコントロールすることができます。手術手技や医療用素材画などの医学的な内容は入手目的がビジネスですし、クリエーターもビジネスで得た知識や経験を披露しているので、無制限に放出するわけにはいきません。先日、尊敬する外科医の手術を見に北海道まで行きましたが、その往復に比べると、時間もお金もかからなさすぎです。もちろん密度は大きく異なりますが。お金儲けが目的ではないですが、その情報がほしければ渾身のイラスト1枚につき水1本分くらいは出してもらおうかなと思います。ちなみに、僕の手術を見学に来た人は、この10年で2人くらいです。みなさんなかなか忙しいですし、病院の周りには案内できる場所もなければ、私自身がまだまだ発展途上ですが。

 私のメンターがnoteを評してこう言いました。「奥に座っている店主を覗ける、間口の小さい近所の個人商店みたい」。なるほど。初めは、若かりし自分を思い返して駆け出しの再建外科医のための原稿を書こうと思っていましたが、そういった必要なものは自分でどうにかしましょう。間口の狭い個人商店だったら、好きなものだけをそっと置いておいてもいいじゃないか。ずっと売れ残っていても、店主自身が売るのを渋るような愛着をもったものを並べておこう。

 そう思うと、きっと今後も依頼されないような、自分だけのこだわりの内容を書くのが楽しくなってきました。
 という訳で、noteをやります。


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