褒められることについて思うこと

 幼い頃や生徒、学生の頃、そして働いて間もない頃は、周りの人達よりもよく怒られたり、距離を置かれたりすることが多かったように思う。
 なぜか?
 相手の言おうとすることを読み解く力が劣っていたり、運動音痴であったり、他人との適切な距離がつかめなかったり、子供の時分は大人達の、働いてからは上司や先輩の指示を理解するのに時間がかかったりしていたからだ。
 短所はいくらでも思い浮かぶが、長所を挙げよと言われたら相当時間がかかる。
 ところが、特にここ数年、仕事、勉強、スポーツ、それに外見で、今まで言われなかったことを言われることが多くなった。
 褒められることが多くなったのだ。
 曰く、物事をよく知っている、難題を解く力に長けている、熱い心を持っている、走りが美しい、外国の血が入っているような顔だ、など。
 確かに、褒められることは光栄であり、悪くない。
 でも、褒められることに、戸惑いや恐怖、しんどさを覚えることも事実なのである。
 私も人間の端くれだから、過ちを犯さずには生きていくことはできない。
 だけど、仕事などで少しでも過ちを犯してしまったら・・・
 高く評価してくれている人達は、一転して、私が再起不能になるまで叩きのめしてくるのではないか?
 そもそも、今、褒めてくれている人達は、本心で褒めてくれているのか、それとも、何らかの意図をもって、担ぎ上げようとしているだけなのか?段々分からなくなっている。
 褒められて嬉しく思うだけでは、早晩行き詰る。褒められることは実は怖いことでもあるということを心得て、初めて世の中を渡っていけるのだろうと考える、春の夜である。

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