これでいいのだ、バカボン

天使と暮らして7

娘は、脳内出血の後遺症で右半身麻痺だが、
健常側の左手足の関節の拘縮がひどい。
左の肘関節は固着して動かない。
肩の可動域は両肩とも90度。
股関節も両側とも可動域が非常に狭い。
健常側の左手が口唇まで達するのに約2年かかった。

娘の日常動作は、自力で可能なものはとても少ない。
トイレ、車椅子への移動、着替え、洗顔、手洗い、
歯磨きのどれも、介助なしではできない。

約1年の入院中、目覚めている時、
テレビを呆然と眺めているだけで、
番組の内容をどの程度理解しているのか不明。

笑顔もなく、言葉は一言も発せず、
無表情な鬱状態が続いた。

このままではいけない。
退院後、自宅に帰ってからは、
娘が本心で、「生きていて良かった」と思えるように、
生活の充実を目標に、親がしてやれることを
試みようと決めた。

その一つが、
一日に何度も、
「よろしいよ」という声掛けだ。

娘が一寸よい動きを見せると、
「よろしいよ」よ
元気づける。

そのうちに、
娘も「よろしいよ」と口にし始めた。
日に何度も自分で言う。

「よろしいよ」の言葉は、
自身を励ますお題目みたいなもの。

「これでいいのだ、バカボン」も
繰り返し口にしていた、魔法の言葉の一つ。

つづく

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