【感想】紫式部ひとり語り

著 山本淳子


源氏物語は高校生のころ、あさきゆめみしを、
英語の先生に借りて通して読んだ程度。

この方の他の著作がおもしろくて、こちらも買ってしまった。

とてもよかった。
一人称視点で語られるからか、
彼女がすごく身近に感じられて、
遠い昔の偉大な物語を紡いだ大先輩だけど、
考えていることは今も昔も変わらないんだなとか。

この方の、源氏物語の時代を少し前に読んでいたこともあり、
話の内容に、ああこれはあの時の、とか
ぼんやりとだけど、知っていることがあって、
読んでいてうれしくなった。
知ってるって面白い。
紫式部の目線で、知っている出来事が描かれるので、
点や平面だったものに、奥行きが生まれるような感覚があって、
楽しかった。

特に印象的だったのは、
弟や帝の最期のあたりの話。

帝の辞世の句が、源氏物語に出てきたものを使ってるのでは…!?
と、そんなまさかと思いつつも、
めちゃくちゃ喜んでる先輩の姿が感じられてよかった。
それに、シチュエーションも込みで
事実は小説よりも奇なりというか、
現実が小説に寄っていったような、
作者でなくても不謹慎にも興奮してしまうのだから、
作者であれば、その時代に生きた人なら
その感動はどれほどだろう。

弟さんが、中有に歌の種があるのかと尋ねるくだりあたりから、
なぜかこみ上げるものがあった。
ここの章すごく好き。
辞世の句を書くところ、
電車で読んでいて、まさか泣くとは思ってなかった。
現代語訳の、「~だから、今回はやっぱり生きて帰りたい。~」
ここで涙腺は崩壊しました。
自分でもよくわからないのだけど。
行くと生く!!しんどい掛詞だ…。
これをもしも、弟さんが、紫式部の源氏物語の最初の歌を
覚えていて歌ったのだとしたら、
語彙がなくて申し訳ないけど、えもい。
そうなんだよな、辛いのに、
どうしてだか、生きていたいと願ってしまうし、
生きていてほしい。
ほんとどうしてなんだろう。
死にたいと思ったことは何度もあるけど、
それでも死ねなかったし、
どこかで行きたいと願う自分がいたのだろうなあ。

あと、形見の話もよかった。
覚えている人さえなくなったときに、
その人は本当に死ぬのだと。
FF9の誰だったかな、そんなセリフがあったような。
自分の死期を悟った彼女が、
自分自身や、彼女の大切な人たちが
生きていた証を残そうと家集を作ろうと思い至ったあたり、
ページをめくる手がとまらなかった。
ちゃんと、今に、1000年の時を超えて伝わって残っているんだよなあ、
そう思うと、胸がぎゅってしめつけられる。

日記と家集、何なら源氏物語もちゃんと読みたいなあと思いました。
日記の方なら、著者の方が本だしてくれている(しかもビギナーズ)ので、
これは読むしかないね!!


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