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「娘ができたら、つけたい名前があったんだよ」 実父とサシで会うのは、いつでもこのダイナーだった。 ひと月後にこの店は潰れ、洒落たサラダの専門店ができるらしい。カロリーかアルコールを客の口に押し込むしか芸のない、この店のことがそれなりに好きだったのに。まあ、チェーン店だからどこにでもあるんだけど。 「参考までに聞いといてやろうか」 アホみたいにホイップクリームとストリベリーソースが乗った、肌荒れ製造に特化したパイを崩しながら言う。店のBGMは、相も変わらずビートルズとか
一発屋量産機。 業界での俺の渾名だ。 まったくそのとおりなので、名刺に刷って配りたい。誰もかれもが俺の引導による瞬間的爆発力を求めて手を伸べる。引っ掴んで華やかな舞台に押し上げる、ああ綺麗だなと思う、その時には俺の仕事はもう終わっている。 継続して面倒を見てやる脳はない。信じられない理由かもしれないが、弊社ではまかり通るのではっきり言わせてもらう。 だって飽きちゃうんだよ。俺は良いプロデューサーでも良いマネージャーでもない。 人々の欲望を、羨望を、渇望をこれで