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乗降介助の基本

ビジネスプロフィールに載せた記事をまとめます。そのうち加筆します。


はじめに~乗降介助の基本~

介護タクシー川村は開業7年目になりますが、この業界の函館だけの特徴の一つとして「車内までスロープを手押しして乗車介助」する点があると思います。ごく一部の専門職さんから「なかには助走をつけて車内まで手押しする福祉タクシー運転手がいる」などと疑問を呈されたこともあるのですが、たぶんこれは福祉輸送事業制度が始まってから函館管内独自に定着してしまったのでしょう。
 スロープ手前でフックを掛けてウィンチで引っ張り上げる乗車介助が福祉車両メーカーが推奨する基本介助ですが(もちろん荒天時など状況に合わせた介助もあります)、そのメリットを挙げるとしたら、①乗降介助中に起きるリスクの排除、②介助者の負担軽減、③安定した状態キープでの介助、さらにプラスの効果として「介助責任の所在明確化」もあると思います。

スロープ手前でフックを掛ける

①乗降介助中に起きるリスクの排除

たとえ何度も対応している乗客あるいは車いすとはいえ、いつも同じ状態とは限りません。
 1⃣セミオーダーや電動車いすなど車いすごとに規格が異なります。2⃣厚手の車いすクッションや転倒防止キャスターなど付属品が事故につながる場合もあります。3⃣カテーテルや突発的な動きなど何が介助の障害になるか分かりません。

現行エブリイの耐荷重

②介助者の負担軽減

現行エブリイのスロープ部分の耐荷重は200kg、ウィンチの耐荷重は120kgになります。仮にウィンチだけで200kg近い車いす利用者を引っ張るとリレーが働きます。介助者の補助負荷は、ほとんどありません。
 皆さんも日常生活で無意識に、階段よりスロープ、スロープよりエレベーター・エスカレーターを選んでいると思います。スロープ手前でウィンチをかけて介助する方法は、それが楽だけでなく、お互いに安心安全だからです。

DA64Wエブリイの耐荷重

③安定した状態キープでの介助

スロープでの乗降介助で忘れていけないことは、「不安定な状態での介助である」ということです。
 1⃣ウィンチと後方からの補助により車いすが安定します。2⃣傾斜介助は車いすの重心が変わります。3⃣介助者自身の重心も介助しやすい状態を維持できます。

現行エブリイのテールゲート一体型スロープ

④介助責任の明確化

スロープ手前でフックを掛けるのが乗降介助の基本であることを書いてきました。ところでタクシーの乗降介助が「介助料」に含まれないことを皆さんご存じですか?例えば一般タクシーだとみなさんドアまで自分で歩きますよね。UDタクシーは介助料の設定が無いそうですが、あれもスロープ手前まで乗客が来ることが前提になっているからです。
 つまり、乗降口で(スロープ・リフトどちらも)フックを掛けて乗降介助を始めた時点で、それはタクシー運転手の通常業務になります。介護・福祉タクシーの介助とは何か、みなさんも利用した時に考えてみてはいかがでしょうか?

花岡車両ゼロハイトリフト段差解消機

⑤必要な応急器具

どのようなクルマにもスペアタイヤやパンク修理キットが常備されているように、介護タクシー事業者に必要な応急器具があります。
 1⃣車いす固定装置が壊れた時に備えて「ラッシングベルト」を常備します。2⃣スロープが壊れた場合(そもそも車いす自体に問題がある場合が多いですが)、伸縮スロープで代用します。3⃣ハイエースなどのリフトの場合、昔は油圧式だったので緊急時に手動で動かすことが出来ましたが現在は電磁式のため簡単に直せません。その場合「段差解消機」を使うのも方法です。

介護タクシー川村では段差解消機も備えています

おわりに~乗降介助は基本から~

先日、自分より数年後に開業された人から「乗車介助は車内まで手押しした方が早いですよね?」と言われて、このままじゃ函館の業界にとって間違いなくよろしくないと思い、約1週間かけて書き留めました。
 ➊あくまでも福祉車両メーカーの推奨する乗車介助方法が「ナゼ基本なのか?」という説明をしました。❷ふだんから基本の出来ていない人には応用は出来ません。ましてやその人に合った介助など出来るわけがありません。➌わたしたちはプロの介護タクシードライバーです。常に安心安全を自問自答して、介助技術をアップデートし続けないといけません。

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