煙草の味についての記憶ストック
よく見る悪夢トップ3の中に、「準備を全くせずに舞台(ライブでギターを弾いていたり、研究のプレゼンをしていたり、何故か笑点に出演していたり)に立たされる夢」がある。準備ができていないことに気づくことから夢が始まり、既に自分は舞台袖におり、そのままなんとか誤魔化そうと舞台上で冷や汗をかきまくるという最悪の夢だ。
そもそもこんな夢を見る理由を、私は「事前準備無しに成功した記憶のストックがないから」だと思っている。夢は記憶の再構築、無いものは生み出せない。夢の中に出てくる人間は知ってる人間の顔かのっぺらぼうだ。そのせいで、知り合いが人一倍少ない私の夢には二次元のキャラが三次元の友人と並列に出てきて次元を狂わせている。
もし私が現実で「準備不足で当日を迎えたけどなんとかなった!」という経験があればこんな夢見ないんだろうなと思う。夢の中の理性だって「まあ、あの時もなんとかなったしいけるでしょ」と改変を許すはずだ。ただ私はギターの練習不足でミスった経験と雑なプレゼンで教授に詰められた経験しかないし笑点にはそもそも出たこともないので、こんな夢を見続けている。
ところでこの原則に従わない夢が1種類だけあって、それは「煙草を吸う」という夢だ。私は生まれてこの方非喫煙者なので、煙草を吸ったことはない。だが夢の中の私は煙草の味を感じている。ただその味は正確な味ではなく、今まで感じた中で言うなら火事ないしはキャンプファイヤーの時の匂いみたいなものが口の中に広がる。
今書いていて思ったが、煙草の匂いだけなら嗅いだことがあるはずなのに、煙草の味としてそれが用いられていないのが少し面白い。私の記憶ストックは、恐らく「あれは受動喫煙だから実際の喫煙とは違う匂いのはずだ」という記憶をストックしているのだろう。
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