夢にナレーターがいる話

私の夢には、よくナレーターが出てくる。というか私がナレーターを兼任していることが多い。

例えば、夢の始まりがいきなり廃墟の中だった時。私は瞬間で「ここは学校の廃墟であり、今私はゾンビに追われているのだ」と理解するしそれをそのまんま口に出す。そういう夢を見る時、私は私の後頭部を斜め上から見下ろしている。その私の後頭部は、私の指示で動いている。

そのナレーターはそこそこ物語を動かす力を持っていて、「その数時間後」と言えば時間が飛んだりする。「その時ゾンビの頭をライフルが正確に撃ち抜いた」と言えば、私の後頭部がライフルを構えてゾンビを撃つ。相手は死ぬ。「夢だ」という自覚があるわけではないから明晰夢とは言わない気がする。夢というよりも、「これはある程度私の言葉で動く世界だ」という自覚の方がなんとなく近い気がした。

ところでこのナレーター制度、思ったより全然上手くいかない時が結構ある。良くあるのが「空を飛ぶ」という動作だ。ナレーターが「ビルからジャンプして空を飛べ!」と言っても、夢の中の私は全然思った通り動かない。手をバタバタさせても浮力は得られず、地面すれすれで浮かんでるんだかなんなんだかよく分からない感じになる。

この時私の脳裏にはナレーターよりも上位の「理性」みたいな存在がいて、「いや、常識的に考えて空は飛べないよね。いくら腕バタバタさせてもさぁ」と呆れた顔で言っている。その理性の方が夢の世界では神としての権威が上位のため、ナレーターは力を失ってしまう。めちゃくちゃメタフィクションの世界観だ。多分そのうち、理性のさらに上位存在も出てくるだろう。

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