No.006 クドリャフカの順番 米澤穂信 著

今回はNo.003で取り上げた『愚者のエンドロール』に次ぐ〈古典部〉シリーズ第3弾、『クドリャフカの順番』です。

待望の文化祭が始まった。だが折木奉太郎が所属する古典部で大問題が発生。手違いで文集「氷菓」を作りすぎたのだ。部員が頭を抱えるそのとき、学内では奇妙な連続窃盗事件が起きていた。盗まれたものは碁石、タロットカード、水鉄砲────。この事件を解決して古典部の知名度を上げよう!目指すは文集の完売だ!!盛り上がる仲間たちに後押しされて、奉太郎は事件の謎に挑むはめに……。大人気〈古典部〉シリーズ第3弾!
(出典 角川文庫 あらすじ より)


〇静かに行われるわらしべ長者

『クドリャフカの順番』は上のようなストーリーで展開していきます。
いつもは展開について語ることが多いのですが、今回は私が感動した伏線について書こうと思います。

伏線の始まりは、文化祭前日の夜に、奉太郎の姉が奉太郎に壊れた万年筆を渡したことでした。姉が何を考えているのか分からぬまま奉太郎は渋々それを受け取ります。

個人的にはミステリアスな存在である奉太郎の姉がシリーズ第一作のときから気になっていたので、序盤から「おお!」と思いました。しかも彼女は前巻では海外を旅しており、手紙の送り主としての登場だったので、いつの間にか帰国していて驚きました(笑)

文化祭が始まり、二百部を超える文集を売り切るため、他の部員が部室の外に出ているのに対し、奉太郎は省エネを全うするために部室での店番を引き受けました。すると文集を買うために部室を訪れた生徒が奉太郎の持っていた万年筆が欲しいと言い出したのです。特段思い入れもなにもなかった奉太郎はそれを渡し、相手は代わりにワッペンを置いていきます。

完全にわらしべ長者の展開ですね!ミステリの伏線には鈍感な私でもさすがにこれは絶対何かある、と気付きました。

このあとワッペンはグロック、小麦粉、と姿を変えます。
そしてこの小麦粉、どんな需要があるのかと思っていたら古典部員の三人、千反田える、福部里志、伊原摩耶花が参加していた料理コンテストのようなもので三人は絶体絶命のピンチに陥っていました。このイベントは三人一組で行われ、材料を自力で集めなくてはならないのですが、摩耶花の務める最後の大将戦まで材料を残せなかったのです。ほぼゴミのような材料しかないなかで、部室にいた奉太郎が機転をきかせて小麦粉を届けます。(まあ四階から投げ落としたんですけどね)

ここで役に立つなんて!なるほど!と思いました。
結果、古典部はこのコンテストで優勝を飾ります。
簡単に騙される私はここでわらしべ長者は終わりだと思ったのですが、摩耶花が小麦粉の代わりに身に付けていたハートのブローチを置いていきます。

再開されたわらしべ長者は、スタートだった奉太郎の姉に戻ります。文化祭に来た彼女は奉太郎が席を外している間にブローチの代わりに、「夕べには骸に」という漫画本を残していきました。

実はこの漫画本が学内で起こっていた連続窃盗事件の大事な鍵になるんです!!それに気付く奉太郎もですけど、奉太郎の姉、本当に何者なんでしょうね……。また謎が深まってしまった……。

いつもはオチまで感想を言うのですが、今回はわらしべ長者を模した伏線に注目したので、犯人や動機などは敢えて言いません。多分、読んだ方が楽しいと思うので。

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