縄文の日

加曽利貝塚へ行ってきた。 うちの実家から歩いていける、世界最大級の貝塚。
今日は、土器作り同好会やワークショップ参加者のつくった作品を、実際にここで野焼きをするというイベントが行われているという。これは見に行かねばなるまい。


野焼き中。 

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まずは遠火で、底の方からしっかり乾燥

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だんだんと中心に寄せていく

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櫓を組んで本焼き。本焼きの間にまた次の土器たちを遠火で乾燥させ、近づけて、の繰り返し。

これだけのサイズの土器を割らないように野焼きで焼成するのは、相当の技術がいりそう。あー、やってみたいー(火だいすき)
傍らでは、縄文土器でつくられた縄文スープのふるまいも。美味し♪


「その眼鏡プラスチック? 溶けるよ」
えっ……や、ほんとだ!熱い!
写真を撮るのに夢中で、言われるまで全然気がつかなかったけど、触ってみると眼鏡のフチがすごく熱くなってる。
野焼きの火、かなりの熱さ。通常の焚き火の比じゃない。


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焼き上がった縄文土器たち

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焼き上がった土偶、土笛、小物たち

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焼き上がった仮面型香炉。この迫力。これって、こういう出土品が実際にちゃんと存在していて、それをモデルに作られているのだそう。こういう土を使って、こういうやり方で作って、このようにして焼いて、こうやって使う、というところまで実際にやってみて、仮説に穴がないかどうか確認する。実験考古学的手法。
さてその使い道だが、「香炉」と便宜上呼ばれてはいるものの、実際本当にそうだったかどうかは定かではなく、要するになんだかわからない、使い途があるとすれば香炉、でなければ飾りか呪具祭器の類いだろうと、どうやらそういうことらしい。何にしても、非常に惹きつけられてやまない造形だ。


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仮面型香炉本焼きの様子。遠火でじっくり焼いたら、いよいよ本焼成開始。香炉のまわりに薪で櫓を組んで…

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炎に包まれること約10分

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劫火のさなかからのぞく虚無の瞳。こうして土くれのかたまりに命が吹き込まれていくのだ。


見学の後は火起こし体験をさせてもらう。錐を回して火種をつくる。道具(弓)を使えば簡単。素手で火を起こすのはなかなか重労働。

その後、加曽利貝塚を後に、今度は船橋へ移動し、飛ノ台史跡公園博物館へ。今日は縄文尽くしの一日。お目当ては『縄文世界のアールヌーヴォー』という、かなり力の入った展示だ。火焔、水煙、勝坂、焼町の逸品が勢揃い。いや、見応えあったあった。凄いわ。来てよかった。……がしかし。何か釈然としないものが。ああ、そうか、わかった。ここには縄目がないのだ(勝坂式にはあるけれど)。

僕にとって縄文土器のスタンダードとは、子供の頃から馴染んだ加曽利E式のスタイルなのだ。あの洗練された優美なシルエット。端正な縄目模様。これこそがザ・縄文土器と言えよう。そういえば以前、新潟生まれの人と縄文土器談義をしていた時に、お互いイメージするものが大きく食い違っていてびっくりしたことがあったけど、そうか、彼女にとっての縄文土器はこれだったのかと今回火焔土器を見て納得した。いやでも待ってくれ。たしかに火焔土器はかっこいいし、素晴らしい。これが縄文時代を代表する最高水準の文化遺産であることに異存はない。けれど、でも縄目がないものに「縄文土器」を代表させてしまうのはどうだろう。縄文あっての縄文土器ではないのか。


ところで、加曽利貝塚博物館の入館料、昔僕がよく遊びに行ってた頃はたしか30円だったんだけど、やはり時代の波には逆らえず、さすがに値上がりしていた。なんと60円。て、いつの時代の話なんだ(笑)
(注:2005年当時の話。2020現在は博物館も野外史跡もすべて観覧無料となってます。)

加曽利貝塚博物館
https://www.city.chiba.jp/kasori/index.html


(2005.11.27 2020.8.13加筆訂正)

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