キャリアは具体と抽象の往復運動でつかめ(『好きなようにしてください』より)

どうも、ナザレです。いつもお読みいただき、ありがとうございます!

今日もキャリアについて書いていこうと思っています。
キャリアについては、以前にもnoteで少し書いてきました。

上の2つの記事を書いていく中で、ある本を並行して読んでいました。

それは、『好きなようにしてください』という本です。

これは、一橋大学の教授、楠木建氏が書いた本です。
以前、『ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件』という本の紹介もさせていただきましたが、この本と同じ著者が書いた本です。

この本は、一般の方の質問に対して、楠木先生が回答するという形式になっています。
ここで、『具体と抽象の往復運動』というキーワードが面白かったので、皆さんにも共有したいと思います。

ある質問者から、こんな質問が寄せられます。内容を抜粋して書きます。
・インドに行ってプログラミングをゼロから学ぼうか、いまの仕事を続けようか悩んでいます。現職に不満はないが、今のままの延長線上では、場所に縛られずにどこでも働ける自由人になりたい、という自分の理想が実現されそうにない。どのように今後を判断していけばいいか。

まず、なんでインドでプログラミング?という突飛な行動になるのか、そこはかなり謎ですね。ま、そこはいいとして。

仕事を選ぶときは、プログラマーになりたい、不動産営業がしたい、金融に行きたい、メーカーがいい等、さまざまな選択肢が浮かびますが、これらは全て具体的な仕事内容です。
もっと細かく、川崎重工業でバイクを作りたい!というケースもあるでしょう。
つまり、かなり具体的なものを思い浮かべて仕事選びをしているという現状があります。

しかし、『仕事の具体的な中身はこちらと相手(会社や顧客や市場)との相互選択で決まるので、当然のことながら、はじめからすべてが自分の思い通りになるわけではありません』と楠木先生は言っています。

そして、先ほど例示したバイクを作りたい人で言えば、キャリアビジョンが明確で一見良さそうに見えますけれど、川崎重工業に採用されなければ、その時点でアウトです。
運よく川崎重工業に採用されたとしても、バイクを作れるかどうかは未知数。結局やりたいことができなかったら、そこでキャリアは終わってしまう可能性はあります。

さらに楠木先生は、「好きなタイプの女の子」の例を出して説明しています。
『「なんでこの人と付き合っているのかというと、長い黒髪の子がタイプなんですよ」という人、これはいかにも脆弱です。その女の子がそのうちロングヘアーに飽きて、髪を切る可能性は割と高い。これがもし、「なんでこの人と付き合っているのかというと、考え方が違う面もあるけど、彼女の物事の考え方、特に人間関係に対する前提が妙に好きなんですよ」という価値観に根ざしたものだとしたら、彼女が髪を切ろうと伸ばそうと染めようと、割と長期的に好きでいられる。』

要するに、仕事というのは実際にやってみなければわからないし、思ってもみなかったことが続出することもあります。
どうせ完全にはわからないわけですから、やたらと具体的にこだわるよりも、『キャリア・コンセプト』をよりどころにする方がいいと思います。

「場所に縛られずどこでも働ける自由人」というのは、キャリア・コンセプトと言えるでしょう。その点で、この質問者の考え方自体は良いと思います。
ただ、コンセプトだけでは現実の仕事にはならないので、具体的なレベルにおろす必要があります。

ここで出てくるのが、『具体と抽象の往復運動』です。
これはどういう意味かというと、
まずは上位に「場所に縛られない自由人」をコンセプトとして置いておく。
その上で、「だとしたら、こういう仕事があるかな」「こういう地域がいいかな」とコンセプトを具体的なレベルへと具象化していくのです。

具体的なことが思い浮かんでも、すぐにどれかを選ぼうとはせずに、それらをじっくり眺めてみるのです。
そうすると、とりあえず上位に置いた「場所に縛られない自由人」が本当のところ何を意味しているのかが、より鮮明にわかると思います。

とはいえ、キャリア・コンセプトが大切といっても、いきなり抽象化できるようなものが浮かび上がってくるわけではありません。
まずは、具体的な好き嫌いの断片を集めていくことから始めてみましょう。

「自由なのが好き」という人は多いですが、いきなり「自由」を持ち出しても何の役にも立ちません。
好き嫌いについてのさまざまな具体的経験を実生活で重ねていく中で、「自分にとって大切な『仕事の自由』というのは、要するにこういうことだな」という抽象化が進み、キャリア・コンセプトが見えてくる。
そうしてつかんだキャリア・コンセプトだからこそ、そこから具体的な選択肢が引き出すことができるのです。

要するに、「具体から引き上げた抽象をその都度直面する具体に下ろしていく」という、具体と抽象の往復運動が大切になってくるのです。

「具体と抽象の往復運動の起点となる具体的断片としては、好きなことよりも嫌いなことのほうが有効だ」というのが楠木先生の見解のようです。

「自分のやりたいことなんて、そうそうわかるはずもない」というのが、フツーの人々にとっての感覚だと思います。
しかし、自分が嫌いなこと、嫌なことについては、割と確信を持って認識できるのではないかと思います。

嫌いなことの裏側に好きなことがあります。
なので、嫌いなことを深いレベルで知ることで、逆に自分の好きなことが明確になっていくと思います。

まとめとして、キャリアを考えるときは、具体的な仕事の職種から入らずに、コンセプトを考えることが先です。

例えば「自由人になる」というのがコンセプトなら、その自由人になるための仕事や職業って何なのかというのを具体的に考えていく。
「自由人」という抽象から、具体に落とし込んでいくわけです。
そして、この作業を繰り返す、つまり『具体と抽象の往復運動』を行うことで、より明確なキャリアが垣間見えるのではないかと思います。


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