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SQUA的連載コラム

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沖縄で暮らすひとびとの、日々のものがたりと、思うこと。
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2021年12月の記事一覧

vol.036 記憶

1年ぶりに関東で1人暮らしをする母を訪ねた。 数年前から記憶が薄れていく症状を発症している母は、昨年よりも熱心に、忘れてはいけない情報を卓上のカレンダーと戸棚の内側に貼ってあるカレンダーに書き込んでいた。それでもやっぱり忘れてしまうので、私から伝えられることは、その都度くりかえし伝えた。 使い込んだカメラは塗装が禿げて味がでたり、長年愛用した壊れかけのラジオや扇風機は、トントンっと角を叩くと「よっこらしょ」と動いたりして、その頑張りを褒めたくなるものだが、人も長年生きて

vol.035 人と縁と時間と

ここ1週間ほど、出会いと再会の日々を送っている。 先週は仕事で竹富島から沖縄島へと行っていた。撮影の依頼主とは何と20年ぶりの再会だった。 私をSNSのInstagramから見つけだしてくれての撮影依頼だった。 私には20年前の記憶はあまり残っておらず、撮影を依頼してくれた本人と再会するまでは初対面の気分でいた。再会後にようやく当時のことを少し思い出すことができた。お互いにコツコツと続けてきた自分たちの仕事で繋がれたこと、そして何よりも私のことをずっと記憶していてくれ

vol.011 ただよう気配に言葉をのせて

沖縄本島北部にある本部港からフェリーに乗り、伊江島にやってきた。 農地が延々と広がる穏やかな島を巡ると、自家製の登り窯で唯一無二のやちむん(焼き物)を生み出す陶芸家や、おばあたちが繫いできた文化を途絶えさせまいと「アダン葉帽子」の継承に尽力する編み手たちに出会う事ができた。 そんな素晴らしい手仕事の数々に魅了されっぱなしの旅だったが、今回僕が取材していたのはこの方だ。 セソコマサユキさん。 これを読んで下さっている方の中には、その名をご存知の方も多い事だろう。 当コラ